広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を巡る新しい被爆者認定制度の開始から、この4月で1年が過ぎた。従来の援護対象区域の外側で雨を浴びた人たちを「被爆者」として認めた「『黒い雨』訴訟」の広島高裁判決を受けて、国が新たに策定したものだ。制度の開始以降、広島県内では3000人以上が被爆者に認められた。被害を訴え続けてきた「黒い雨被爆者」たちは終戦から75年以上を経て、ようやく救済されたのだった。
しかし、闘いに終止符は打たれなかった。新しい制度の下でも、切り捨てられた人がいた。そして、この4月末には「第二次『黒い雨』訴訟」が広島地裁に提起された。
筆者は、2022年7月に刊行した『「黒い雨」訴訟』(集英社新書)で、「黒い雨被爆者にとっての戦後は、『分断』との闘いだった」と書いた。そして、新制度も「新たな分断を生みかねない」と批判していた。
今、「新たな分断」が現実のものとなっている。 「『黒い雨』訴訟」は、被ばくを強いられた原爆被害者を本当に救ったのか。広島・長崎の現場を報告する。