子育てをする中で、自分の想像を超える感情の発露や行動の飛び跳ね方をする子供に直面して、戸惑ったり、激したり、怒ってみたり、時には泣いたり、落ち込んだりしました。うまく対処できたことはあまりなく、専門書を読んだり、教育関係のスペシャリストに会ったり、先生と言われる人と対話を積み重ね、ヒントをもらったりもしました。
そこで得た子供との接し方や声掛けはたしかに参考になったのですが、本当にどうしようもない状況に陥ったときに頭によく浮かんだのはマイク・ミルズ監督が自身の家族にアイディアを得て作った映画でした。『サム・サッカー』を筆頭に、家族なんてうまくいかなくて、すれ違って当然だよ、とポンと肩を軽く叩かれるような作品なのです。
最新作の『カモン カモン』もまた、順調とは言えないある家族を優しい眼差しで見つめた作品でした。主人公はホアキン・フェニックス演じるラジオジャーナリスト、ジョニー。NYを拠点に、彼はアメリカ中の9歳から14歳までの子供たちを取材で訪ね歩き、そのビビッドな声を届ける番組を制作しています。
ある日、亡き母の終末期のケアをきっかけに疎遠となっていた妹からSOSの電話があり、彼女の9歳の息子、ジェシーの面倒を依頼されます。仕事柄、子供と接することに慣れているジョニーですが、繊細で、こだわりも強いジェシーの対応には苦労の連続。愛情を試すかのようなジェシーの挑発的な行為に振り回され、いつしか大人の仮面をはぎ取り、ジェシーと真剣に感情をぶつけ合うことに。
と同時に、ストレートに懐へと入り込んで、日々の事柄から哲学的なことまで様々な問いかけをしてくるジェシーとの対話を通し、子育ての深淵に触れていきます。
この厄介で、面倒くさくて、でも最高に愛らしいジェシーを演じたのがイギリス人のウディ・ノーマン君。今作での溌溂とした演技で第75回英国アカデミー賞の助演男優賞候補となり、翌々日に授賞式を控えている中で、このリモートインタビューが実現しました。頭の回転の速さは最初の質問への返答で実感したのですが、見た目の子供らしさとギャップのあるクレバーの受け答え、どうぞ、楽しんでください。