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鳥谷敬が「金本知憲さんを彷彿させる」と語った阪神・佐藤輝明の”打球角度20度ライナー弾”

集英社オンライン / 2023年5月23日 11時1分

プロ野球歴代2位となる1939試合連続出場。最激務と言われる遊撃手として驚異的な数字を残した鳥谷敬。プロ2年目の2005年にはレギュラーに定着し、岡田彰布監督のもとリーグ優勝に貢献した。あれから18年間、優勝のないタイガースだが、その重い扉を開こうとする後輩たちの姿に何を思うのか。連載第3回は、3~4月は不振にあえいだものの、5月に入り調子を上げてきた佐藤輝明選手について。

鉄人・金本知憲を彷彿とさせるホームラン

野球選手として、ボールを遠くへ飛ばす能力は、非常に価値あるものです。
プロ1年目に24本塁打、プロ2年目に20本塁打を放った佐藤輝明選手に、プロ3年目の今シーズンも大きな期待がかけられるのは、ある意味必然と言えるでしょう。



3月・4月の成績を見ると、96打席に立ち、打率が.215 、3本塁打、8打点でした。なかなか調子が上がってこないというような報道も多く見られましたし、自分も心配しながら見ていた時期がありましたが、シーズンを通して約600の打席数があると考えると、まだまだ序盤です。

たまたま最初の100打席で結果が出なかっただけだと捉えるべきだと感じていたところ、5月に入ってからは、ホームラン、打点が増え、間違いなく状態がよくなってきました(5月の月間成績は打率.295、5本塁打、打点16/22日現在)これは、急激に何かが変わったわけではなく、これまで試行錯誤してきたことが組み合わさった結果、この時期にようやく形ができ上がってきたのだと思います。

5月14日の横浜DeNAベイスターズ戦では、今永投手が投げた見送ればボール球を通常では考えられないような低い弾道(打球角度20度)で、それも右手1本で阪神甲子園球場のバックスクリーンに飛び込むライナー性のホームランも放ちました。

佐藤の衝撃“打球角度20度弾”に岡田監督は「見送ったらボール球。そんなに力いっぱい振らなくても芯に当たったら飛んでいく」とコメント

阪神タイガースが本拠地とする甲子園球場は、いわゆる「浜風」が、ライト方向からレフト方向に向かって吹いているため、左打者にとってはアゲインストの風となり、ホームランを打つには不利な状況であることが多いのですが、ライナー性の打球は、あまり風の影響を受けません。それでも、あの打球角度でスタンドに放り込むのは並大抵のことではありません。

タイプは違いますが、2005年に40本塁打を放った金本知憲さんが、ライナー性の打球を右中間スタンドやバックスリーンに放り込んでいたことを思い出します。

きれいな放物線を描くホームランだけでなく、ライナー性の当たりでもホームランにできるということは、金本さんのようにシーズン40本塁打といった可能性さえも感じさせてくれます。

チーム強化のため、岡田流“メッセージの伝え方”

岡田彰布監督も、佐藤輝明選手に対しては、様々なアプローチの仕方で覚醒を促しているように感じます。

ホームランを打った後の打席で、ボール球に手を出して三振した際、「おかしくなる可能性があるよ」と苦言を呈することもあれば、「ホームランを打った打席よりも凡退したファーストゴロの打席が一番よかった」というコメントを残したこともあります。

これは、凡退した結果だけを見るのではなくて、打撃の形や、打つポイントがどうなっているかという目線で見ているからこそ言えるのだと思います。

打者は、自分が打てるポイントを複数持っているものなのですが、相手バッテリーは、打者のポイントをずらして、どんどん調子を悪くさせようとしてくるので、知らず知らずのうちにポイントが狂ってしまうのです。

そこで「打つポイントが大切だ」と本人に直接言わず、メディアを通じてメッセージを伝える“うまさ”は、今季の岡田監督らしいのではないでしょうか。

鳥谷敬氏

その一方で、打順と守備位置は固定して使うとシーズン前から明言していたにもかかわらず、4月半ばの結果が出ない時期には「調子が悪かったら外す」といった発言もあり、実際に、佐藤輝明選手が先発メンバーから外れた試合もありました。

ただ、これに関しては佐藤輝明選手に危機感を持たせるだけではなく、ベンチで控えている選手のモチベーションを保つという意味合いもあったのではないかと推察します。

1年間メンバーを固定できればいいとは思いますが、本当に固定できる強いチームと、まだまだ流動的でこれから強くなっていくチームは違います。今シーズンの阪神タイガースは後者でしょう。

実際、佐藤輝明選手が先発メンバーから外れた2試合は、北海道日本ハムファイターズから移籍してきた渡邉諒選手が三塁を守りましたが、渡邉選手の責任感と緊張感が増したことは間違いありません。

遊撃手でいえば、木浪聖也選手が打撃で好結果を残し続けていることもあり、小幡竜平選手の出場機会が激減していますが、小幡選手は代走で起用された試合で、自分の武器であるスピードを存分に生かし、好走塁で決勝点をもぎとったとこともありました。

こういう姿を見ると、選手全員がモチベーションをうまく保つことができているのだなと思います。

現在は、ライトのレギュラーが固定されていない状況ですが、ある意味、わざと固定していないという見方もできます。ファームで結果を出した選手をすぐに一軍で使えば、当然ファームの選手たちのモチベーションもあがります。

岡田監督は、チーム全体としてレベルアップするために何が必要なのか、選手個々が成長するために何が必要なのかというところを考えて、いろいろな手をつくしているのではないでしょうか。

今シーズン一気にさらなる覚醒の可能性も

さて、調子が上向いてきた佐藤輝明選手ですが、まだまだ現状には満足していないと思います。打撃フォームやタイミングの取り方などについて、今も様々な試行錯誤を繰り返していることでしょう。

例えば、足をあげて打った方がいいのか、足をあげずに打った方がいいのかという課題に対して、そもそも正解があるわけではありません。


懸命に努力した結果である過去の自分を越えていくことは、本当に難しい作業です。佐藤輝明選手も、1年目より2年目のほうが、本塁打数が減ってしまいました。
それでも、ボールを遠くに飛ばすことができる、ホームランが打てるという能力が一番の魅力である選手なので、本人も打率より、本塁打と打点で結果を残せるような形を求めていると思います。

数字で言えば30本塁打・100打点をベースに、毎年キャリアハイ更新を狙えるような選手になる要素は十分にあります。そのための過程で、どんな変化を見せてくれるのか楽しみですし、今シーズンこれから一気に覚醒する可能性も十分あると思っています。

構成 飯田隆之 写真/産経新聞社

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