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長時間のスマホで、両目が内側を向く急性内斜視になり高校生が失明寸前に…ある日突然襲ってくる“スマホ失明”の対策と見極め方

集英社オンライン / 2023年5月25日 10時1分

今や日常に欠かせないスマートフォンだが、長時間の使用で近視が進み、気が付いたときには手遅れ、最悪の場合“失明”ということにもなりかねない事態が発生しはじめているという。そこで、『スマホ失明』(かんき出版)の著者で、眼科医・医学博士の川本晃司氏に、その実態を伺った。

ある日、突然やって来る急性内斜視

──スマホを長時間使用して視力が低下している患者さんが増えていると感じたのはいつ頃からですか?

この3年くらいですね。コロナ禍の巣ごもり生活でスマホを使う機会が増えて、近視の深さ(近視の進行度合い・近視進行の深刻さ)が尋常でない方が増えたと感じました。

──記憶に残る患者さんは?

16歳の男子高校生が、フラフラになって父親に抱えられて診察室に入ってきたんです。もちろんアルコールは口にしてはいませんが、泥酔しているような感じで、目の焦点も定まっていませんでした。



「見えない」という訴えだったので、診察してみると両目が内側を向いているいわゆる“急性内斜視”という状態でした。

写真はイメージです

──急性内斜視とは?

左右の眼のどちらか、もしくは両方がある日を境に、急に内側を向いている状態です。私たちの眼は近くを見るとき内側を向く“寄り眼”状態になります。このとき長時間近くのモノ、例えばスマホ画面などを見続けて、その状態が固定化されると、その視線の先にしかピントが合わなくなります。ですから、それ以外のところに視線を移すと、二重にダブって見えるようになってしまうんです。

日常生活がままならない急性内斜視

──なぜ高校生は急性内斜視になったのですか?

わたしがその男子高校生に「(スマホで)ゲームやりすぎたの?」と聞いたら「違います」という返答でした。父親も「スマホは禁止にしているので、そんなことはないはずです」と言っていました。

しかし、その後、父親に診察室を出てもらって、2人っきりになると、「実はスマホのやり過ぎで親に怒られて、1週間取り上げられていた」って言うんですよ。

それから解禁になって、週末、それこそ寝ずにずーっとスマホでゲームをやっていたと言いだしたんです。急性内斜視の状態で、ここまで酷い症状の患者さんは初めてでした。物が見えないだけでなく、自分で歩くことすらできない、日常生活が送れなくなるほど目に影響が出たケースでした。少し大げさかもしれませんが、社会的あるいは機能的に失明です。

スマホ利用の禁止や特殊な眼鏡の使用といった保存的治療がうまくいかないと手術(※)をすることになりますが、たとえ手術がうまくいき、医師が治ったと思う状態でも、本人的には視力に違和感を感じることが多く、完全には元の状態には戻らないと思ってください。

※手術には、眼を動かす筋肉(外眼筋)の付いている位置を移動させるなどがある。

写真はイメージです

――“急性内斜視”にならないためにはどうすればよいですか?

まず大前提として、長時間スマホを凝視しないことが重要です。例えば、アメリカでは、“20―20―20のルール”があります。これは「20分間継続して近くを見た後は、20フィート(およそ6メートル)以上離れたものを、20秒間眺める」という取り組みです。

また、急性スマホ内斜視のほとんどの症例は、眼鏡やコンタクトレンズを装用しない状態で、スマホを長時間使用することが最もリスクが高いと考えられているので、「度が合った眼鏡をかけて生活する」「近視の人はこれ以上近視が進まないためにも、スマホを使う時は、眼鏡やコンタクトレンズを装用する」「帰宅して眼鏡やコンタクトレンズを外したら、スマホは見ない」といった対策が有効です。

自分だけでなく家族の目も守るには…

──普段から、自分の眼の異変をどうチェックすればいいでしょうか?

両眼でモノを見ていると異変に気が付きにくいので、時々片眼で見てください。そのときに気が付くことがあります。例えば、障子の格子、エクセルのワークシートなど格子状の模様が入ったものを片目だけで見たときに格子がゆがんで見えたり、見ようとする部分がボヤけていたり、暗く見えている場合は、眼科に行きましょう。

──子どもを持つ親は何を注意すればいいですか?

子どもは自分から見えづらいとはなかなか言わないので、親御さんはすぐには気付きにくいですよね。でも例えば、普段よりテレビとの距離が近くなっているとか、食事しているときに姿勢が悪くなっているとか、何かしら変化を感じたらひと声かけてみるのもポイントかと思います。

今はスマホがないと生活が成り立たなくなっているので、スマホからときどき目を離す工夫が必要です。スマホを見る時間、環境を大人が整えてあげましょう。例えば一定時間ゲームをすると自動的に画面が暗くなるなどのアプリをインストールするのもいいでしょう。

夢中になっている子どもに声がけをすることも大切です。赤ちゃんや幼児の育児でスマホを使うのは便利ですが、確実に目に影響を及ぼしています。

写真はイメージです

──日本は海外に比べて、対策が遅れているそうですが…

メガネに対するイメージが大きいと思います。
メガネをかけるということに対して、ネガティブなイメージが日本は少ないような気がします。それに対して、欧米人はメガネに対するイメージが非常にネガティブです。
こうした背景も対策が遅れている原因となっているのではないでしょうか。


取材・文/集英社オンライン編集部

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