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『サスケ烈伝』木村慎吾が作画視点で選ぶ『NARUTO -ナルト-』名シーン5選 「自分のネームを描く時も悩んだら第1話を読むんですけど、毎回“すげー!”って」

集英社オンライン / 2023年6月2日 10時1分

「少年ジャンプ+」にて連載された『NARUTO-ナルト-サスケ烈伝 うちはの末裔と天球の星屑』(以下、サスケ烈伝)の漫画を担当した木村慎吾氏に、漫画家ならではの視点で『NARUTO -ナルト-』(以下、NARUTO)のベストシーンを5つ選出してもらった。(全3回の第3回)(サムネイル、トップ画像:『NARUTO -ナルト-』第25巻226話「親しき友に…‼︎」)

ナルトとサスケの螺旋丸

――木村慎吾さんならではの視点で選ぶ、『NARUTO -ナルト-』の名シーンを教えてください。

すごく悩んだんですけど、まず1つ目が、単行本25巻のナルトとサスケの“螺旋丸”がぶつかるシーンです。こういうシーンって、ぶつかった瞬間を描きがちじゃないですか。



でも、これはそうじゃないんですよ。少し前のコマでぶつかっていて、ちょっとタイミングを空けてから、この見開きの絵になるんです。

なおかつ、水中から見ている構図っていうのがすごくて。衝撃の威力を気泡で描いた人って、ほかにいないんじゃないかな。その威力をさらに表現するために、スクリーントーンが貼られて、少し暗くなっているんですけど、水しぶきがバーっと溶けて、くっきりと2人が見える。この一連の絵、演出、もうすごいですね。

『NARUTO -ナルト-』第25巻226話「親しき友に…‼︎」

――ベスト1ですか?

ベスト5の順番はつけられないんですけど、その内の1つですね。

この1ページ前の、落ちてくるクナイの描写もすごく好きです。うちはマダラと千手柱間の少年期でも石が川底に沈む演出があるんですけど、「2人の今後の関係性」をメタファーとして表現しているような演出で、そこも含めて好きですね。

もう見られない? 幻の大技

――では2つ目をお願いします。

2つ目は、“麒麟”というサスケの術があるんですけど、岸本先生の画力と作画のテクノロジーが融合した、すごくいいシーンだなと思っていて。

『NARUTO -ナルト-』第43巻391話「雷鳴と共に…‼︎」

連載当時は「このシーンはどうやって描いてるんだろう?」って疑問に思っていたんで、岸本先生にお会いした時にお聞きしたんです。すると、岸本先生が昔持っていたコピー機の“中抜き”という、太い線を描くとアーチ型の線だけを残して、中だけ白く抜いてくれる機能を使っているそうで。

「中抜きっていう機能があったんだけど、もうなくなっちゃったから、麒麟はもう描けなくなっちゃったんだよ」みたいな話をされて、「なるほど」と思って。その後に改めて見たら、中抜きの線が三重ぐらいになっているんで、「何回もコピーしてるんだ!」と驚きましたね。

――では3つ目をお願いします。

3つ目は、やっぱりこの風景になっちゃいます。

『NARUTO -ナルト-』第28巻245話「ナルトの帰郷‼︎」

「『NARUTO -ナルト-』と言えばこの風景だ」という感じで、下描きは岸本先生が、ペン入れはアシスタントさんがされていたそうなんですが、はたしてこの下描きを週刊連載で描けるのかな、と思って。

その速さもすごいですし、このパース感というか構図も、作中の後半部分でサスケが里に戻って来るシーンがあるんですけど、それと対比になっていて。ナルトは右から左を見ているんですけど、サスケは逆で。

ナルトのセリフは「全然変わってねー」で、サスケは「ずいぶん変わった」で、セリフも対になっていて、上手いのはもちろんですけど、もう最高ですね。演出込みの選出になってしまうんですけど、幼い頃に一番衝撃を受けたのはこのシーンですね。

――4つ目をお願いします。

ダブルアクションという、映画で使われる演出を漫画で表現した、それぞれ別視点から「どん!どん!どん!」みたいな三面図は、映像感があってすごく好きです。

『NARUTO -ナルト-』第63巻598話「粉砕‼︎‼︎」

でも、これを『サスケ烈伝』でやり忘れて、「うわー!」となりました。

――5つ目をお願いします。

単行本60巻のナルトと九喇嘛のこのシーンが好きですね。

『NARUTO -ナルト-』第60巻570話「九喇嘛‼︎」

単純に絵がかっこいいのと、それまでのストーリーがあって、イルカ先生の言葉をナルトが九喇嘛に言っているのがすごく熱いな、と。自分が言われた言葉を言う側になって、それが傷ついている誰かを救う言葉になる、という。

あと、当時のジャンプのプレゼント企画の賞品で『NARUTO』のレジャーシートがあったんですけど、そのレジャーシートを入れる袋がこの絵で、抽選に当たって持っています。

そういえば、懸賞に応募するハガキに『NARUTO』を描いて、6回当選しましたね。

ネームで悩んだら読む“第1話”

――6回当選はすごくないですか?

毎週の読者プレゼントではない夏の応募キャンペーンとかは当選者の数が多いからか、7~8回応募して6回当たりました。

全部ハガキに『NARUTO』の絵を描いて、カラーを塗って。トビっていうキャラクターに「この左目が戦争を欲している」っていうセリフがあるんですけど、“戦争”の部分を“プレゼント”に変えてみたり。

それを姉に見せたら、「安直だね」って言われて、でもプレゼント当たったし、みたいな(笑)。絵は当選に関係ないとは思うんですが。

――他にお気に入りのシーンはありますか?

第1話のナルトの最初のセリフが好きです。自分のネームを描く時も、悩んだら『NARUTO』第1話を読むんですけど、毎回「すげー!」って思うんです。


おわり

取材・文/佐藤麻水

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