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〈死後にスマホの中身は見られたくない…〉プライバシーは守れて遺族に迷惑はかけない“1分で終わる”賢いデジタル終活術

集英社オンライン / 2023年6月13日 17時1分

昨今、多くの人がスマートフォンやPC、インターネット上でさまざまな個人情報やデータを保存・管理している。そのため生前に情報を整理しておかないと、もし自分が突然死んでしまったとき、家族やパートナーが手続きなどを進めるうえで非常に困ってしまうことも。最低限やっておきたい「デジタル終活」を、日本デジタル終活協会の代表理事・伊勢田篤史氏に聞いた。

死ぬ前にやっておきたい「デジタル終活」

人がいつ亡くなるのかは、わからないもの。もし、不慮の事故や病気で自分が死んでしまったときに、まず真っ先に困るのは遺族です。

遺族は行政的な手続き以外にも、銀行や保険、遺産相続に関する手続きなど、さまざまな作業に追われます。特に、昨今は多種多様な情報やサービスがデジタル化しており、たとえば、故人がどんな証券会社と取引していたのか、どんなサブスクリプションサービスを契約していたのかなども、ひとつずつ確認していかなければなりません。



とはいえ、遺族になる可能性のあるパートナーや子どもからしてみれば、あなたが亡くなったときの対応について相談したりするのは、「縁起でもない」と思われそうで、なかなか気が引けます。そのため、遺族に対しての負担を少しでも減らすための準備は、本人が能動的に行っておくことが大切です。

でも、いざ「終活をしよう」と意気込んだところで、具体的に何をどうすればよいのかは意外とわからないもの。また伝達事項を細かく残そうとして、途中で疲れて頓挫してしまったら元も子もありません。

そこで、今回は日本デジタル終活協会の代表理事・伊勢田篤史さんに “デジタル遺品”を残すうえで、心掛けておきたいポイントを伺いました。

何より大切なのは「スマホのパスワード」

——伊勢田さんが代表理事を務める「日本デジタル終活協会」では、普段どのような活動をされているのでしょうか。

日本デジタル終活協会は、その名のとおり「デジタル終活の普及」を目的に2016年に設立した団体です。設立当初はデジタル終活に特化した「エンディングノート」(自分の死後に備え、遺族に伝えたいことを書き留めておくノート)を作ることからスタートしました。

現在は、セミナーやメディアを通じてデジタル終活をわかりやすく伝える活動を中心に行っています。

——「デジタル終活」の分野において、遺族の方は、実際にどんな点で困ることが多いのでしょうか?

やはり「スマホやPCのパスワードがわからない」というケースが圧倒的に多いですね。PCなら何とかなることもありますが、特にスマホはパスワードロックを解除するのがかなり大変です。

一般的に、自分自身のスマホのパスワードを家族やパートナーと共有しているケースは少ないように思われますが、万が一の際、スマホのログインパスワード(パスコード)がわからず、そもそもスマホ内にアクセスすることができないというケースは今後増えていくものと思われます。

故人のスマホのログインパスワード(パスコード)がわからない場合には、データ復旧の専門家にご相談されるとよいでしょう。

——故人のスマホのロックを解除してくれる業者がいるんですね。

はい。ただ、専門家にスマホのパスワードロックを解除してもらう場合、ケースバイケースですが、半年から1年以上かかることもあり、また解除費用も非常に高額(20~30万円程度)となってしまうこともあります。

特に、最新のOSや端末については、特に時間がかかるようです。

スマホやPCが開けないと、遺族としてはかなり困ることになります。たとえば、故人の友人を葬儀に呼びたいけれど、連絡先がわからない、遺影となるいい写真が見つからない等のトラブルはよく耳にします。また、相続関連では「サブスクリプションで毎月何に課金していたかがわからない」「ネット証券会社がどこかわからない」といったケースがよくあります。

そういう事態を防ぐために、私はとにかく「スマホのパスワードを残しましょう」というメッセージを発信しています。もちろん、PCのパスワードも残しておいてほしいところですが、まずはとにかくスマホです。スマホのパスワードさえわかれば、あとはどうにかなるケースが多いので。

自分の死後もプライバシーを守るために

——ただプライバシーの関係上、「生前にログインパスコードを伝えるは嫌だ」という方も多いですよね。その場合は、どう対処すればよいでしょうか?

生前にスマホのパスワードを知られたくないなら、「亡くなったときに伝わるような仕組み」を作っておきましょう。もちろんエンディングノートに記しておくという手もありますが、ほかの手段でも構いません。

エンディングノートの場合、たとえば「家族との想い出を書きましょう」といったパートで何を書こうか困ってしまい、なかなか作成が進まないこともあるので。

——「亡くなったときに伝わるような仕組み」とは、具体的にどのようなものでしょう?

あまり難しく考えず、まずは遺族の方がわかるように、スマホのログインパスワードを簡単なメモで残しておきましょう。遺族が見る可能性が高いであろう財布や通帳に挟んでおく、一人暮らしであれば冷蔵庫のドアに貼っておく等の方法で、万が一の際でもパスワードが容易に伝わるような仕組みを作っておくとよいでしょう。

また、たとえば保険に加入しているならば、その保険証券が自宅にあるはずなので、その保険証券の中に、ログインパスワード等を書いたメモを入れておくという方法も考えられます。

なお、専属の担当者がいるような場合には、その担当者に対して、「保険証券の中にログインパスワード等を書いたメモが入っているから、万が一の際に家族に伝えてほしい」とお願いしておくことも考えられます。

——「自分の死後であっても、スマホの中は見られたくない」といった場合は、どうすればよいでしょうか?

その場合は、生前に「遺族にとって最低限必要な情報」をまとめて残しておきましょう。

たとえば証券なら、取引している会社名さえわかれば、遺族は何とかなるものです。「どのような銘柄に投資しているのか」といった詳細は省いて、会社名だけ記しておく。そういった最低限のことをノートやメモにまとめておけば、遺族はそれを確認するだけで済み、故人としてもスマホ内を漁られる可能性が低くなります。

そして、そのノート等からPCなどに誘導する場合には、遺族用のフォルダをPC上に用意しておいて、そこまでの導線を記載しておくとわかりやすいです。あらかじめ「PCに入って、このフォルダを開いて」と指示しておけば、わざわざほかのフォルダまで探られる心配もグッと減ります。

なお、「指示したフォルダ以外は見ないでほしい」と具体的に指示をしておくことも重要です(生前から、このような指示をしても疑われないような人間関係を築いていくことも大事です)。

いつ死ぬかわからないから、シンプルに

——デジタル終活は少々煩雑なイメージもありましたが、実は至ってシンプルなんですね。

もちろんベストなのは、自分がどういうツールやサービスを使っていて、担当窓口が誰で、ID・パスワードがどうなっているか、といった情報をきちんとノートなどで残しておいて、「もし自分が死んだら解約して」としっかり家族に伝えておくことです。

しかし夏休みの宿題と一緒で、締め切りギリギリまでやらない人(かつての私もそうでしたが)は、何を言ってもやりません。終活の場合は「いつ終わりがくるのかがわからない」という点が、少々厄介なのです。明日死なないのに、今日やる必要はない、と考える人は多いのが実情といえるでしょう。

作業としては30分くらいで終わることであっても、「自分が死ぬ」ということを考えなくてはいけないので、ついつい先送りしてしまいがちです。しかも、本人にとっては先送りしても困らないですからね。

——先送りにしがちだからこそ、シンプルな手段を薦める、と。

はい。なので、私としては「スマホやPC、各種サービスのパスワードをすべてノートに羅列して…」といったことをやってもらおうとは考えていません。とにかく、スマホだけでも構わないのでログインパスワードを残しておくこと。まずは、それだけでいい。これだけやっておけば、デジタル終活はほぼ完了です。これなら1分で終わります。

そのうえで、もし「もっときっちりと残しておきたい」と思ったならば、エンディングノートを作成したり、遺族とあらかじめ話し合ったりと、本格的にやっていただければよいのです。

伊勢田さんの著書『デジタル遺品の探しかた しまいかた 残しかた+隠しかた』(日本加除出版 刊)

文/井上晃

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