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【漫画あり】《マンガ大賞2023第3位》話題沸騰の青春ラブコメ『正反対な君と僕』の阿賀沢紅茶「きれいなだけの恋愛漫画が刺さらなくなってきた」

集英社オンライン / 2023年6月4日 13時1分

2022年の「少年ジャンプ+」での連載開始以来、各方面で話題を呼んでいる『正反対な君と僕』。元気いっぱいだけど周りの目を気にしてしまう鈴木と、自分の意見を言える物静か男子・谷くんが繰り広げる青春ラブコメディだ。作者の阿賀沢紅茶氏に、制作環境やキャラクターの描き方について詳しく聞いてみた。

「ここはもうちょっと赤面させてください」と言われました

——作画は最初からデジタルツールでされていたのでしょうか。

はい。『氷の城壁』の1話を描いている途中で、板タブ(※手元のタブレットに専用のペンで描くと、パソコンのモニターにそれが映る仕様のデジタルツール。「液タブ」は直接モニターの上に専用のペンで描く仕様)が壊れてしまって、それ以降ずっとiPadです。



そのときは会社員で、趣味で描いているだけだったので「新しく板タブとか液タブを買っても、そんなに使うかなぁ」という迷いがあって。でもiPadなら絵を描かなくなっても使えるし、と思って買ったら、思った以上に気軽に使えてすごくよかったんですよ。

パソコンを起動するとなると「さぁ頑張るぞ!」と気合を入れる感じがありますが、iPadならそれもないし、板タブと違って画面に直接描けるのもいい。気に入らなかったら保存しなければいい、という気軽さもあります。

——『氷の城壁』はオールカラーですが、ご自分で色をつけていたのですか?

連載の半分以上は1人でやっていました。途中から色のパレットを渡して、人に頼むようになって。美麗イラスト!という感じのウェブトゥーンだと塗り方に作者の癖が出ると思いますが、私の場合はバケツ塗りが多いので。

——色の濃淡をつけずに単色を流し込む塗り方ですね。『正反対な君と僕』は白黒ですが、たまに色がついているコマがありますよね。その色味がとても今っぽくてかわいいです。

「『ジャンプ+』で連載できることなんてそうないだろうな」と思ったので、可能な遊びは全部やって帰ろう!と思っていろいろやってみています(笑)。

——シャボン玉などたくさんのおもちゃに色がついているコマを見たときに、すごくテンションが上がりました。カラーにするコマはどんなふうに決めるのですか?

『正反対な君と僕』より

「どこに色つけてんねん」みたいなところがカラーだと、ちょっと笑えるかなと(笑)。決めゴマっぽい感動的なシーンがいきなりカラーになるのは、今の絵柄とか話のテンションとは合わないと思うんです。「ここやで!」「どうぞ感動してください!」みたいな感じになりそうで、照れくさいので…。

——照れとの闘いがあるのですね。

『氷の城壁』のときは、今以上に照れがありましたね。担当さんから「ここはもうちょっと赤面させてほしい」と言われたりしていました。それで、本当にちょっとだけ赤を足して送ったんですが「いや、変わっていないです」と言われて(笑)。

『氷の城壁』より。「赤面させてほしい」と言われた湊の顔

——(『氷の城壁』担当編集)もうちょっといけます、とお願いしました。

3回ぐらいやりとりをしましたね。今はもう「照れとかそんなん言ってられん!」という感じになりましたが(笑)。

読者が見たいものを描こう、と思えるようになった

——なぜ今はそれほど照れずにできるようになったのでしょう。

開き直りですかね(笑)。『氷の城壁』の後半から恋愛の甘い感じを描くようにしたら、喜んでもらえたので、読者の方が見たいものを描こう、と思えるようになって。

序盤は暗い話なんですが、自分が描きたかったのは、それが解消されるところまでだったんです。でも読んでくれている人は、キャラクターがくっついているところが見たいんですよね。

実際描いてみたら、私も楽しかったんですよ。前半で描きたいものを描くことができたので、「ここまでお付き合いくださってありがとうございます!」の気持ちもありました。

——以前のインタビューでも、「いちばん描きたかったのは、根本の部分に主人公たちがどうむきあうかでした」とおっしゃっていましたね。キャラクターたちが「根本の部分」や自分の感情に向き合うときの解像度がものすごく高いと感じます。たとえば、『氷の城壁』の主人公・小雪は、自分は湊のことを「傷付けた」のではなくて自ら「傷付けにいった」と、自分の感情をはっきりと言葉にして受け止めています。

『氷の城壁』より

だんだん、きれいな恋愛漫画が自分には刺さらなくなってきていて…その理由はなんなんだろうと考えたときに、すごく性格がいい女の子じゃなくて、ギリギリ「あるよね」と言えるくらいの汚さとか悪いところがある女の子を私は見たいんだな、と思ったんです。完璧な人にコンプレックスでもあるんですかね(笑)。

——『氷の城壁』の中盤で、小雪が「自分と違うタイプ」の人も「感情のある同じ人間なわけで…」と気づく場面があります。読んでいてハッとさせられたのですが、終盤で、今度はそのことを人に伝えるシーンがありました。二度出て来たので、誰もが「感情のある同じ人間」であるというこの考え方は、先生が描きたいことの1つなのかなと感じたのですが…。

『氷の城壁』より。湊に対して「感情のある同じ人間」なのだと感じた小雪

うーん…言われてみれば、確かにそうかもしれませんね。今描いている『正反対な君と僕』も、結局そういう話ですし。平っていうちょっと暗い男の子が出てくるんですが、その子が東っていう派手な女の子に対して「思ってたより…『同級生』っぽいな…」って言うシーンを最近描いたんですよ。

『正反対な君と僕』より。修学旅行で行動を共にするうち、平は東にこれまでと違う印象を抱くようになる

暗い側が、派手な側に対して感じているコンプレックスみたいなものを、ちょっとほぐすシーンを描きたかったのだと思うんですが…それも「感情のある同じ人間なんだ」っていうのと、考え方のベースは一緒なんだと思います。今しゃべりながら「そうかもしれない」って思ったことなんですけど(笑)。

想像もしていなかった楽しいことが起きる

——阿賀沢先生にとって、ファンの方はどんな存在ですか?

ファンの方……と自分で言うのはちょっと照れるんですが(笑)、応援してくれている方の支えをすごく感じています。

『氷の城壁』を最初に描き始めた頃は、LINEマンガのアプリで連載されているたくさんの漫画の中からなかなか見つけてもらえなくて。でも完結するまでの間に読んでくれる方がどんどん増えていったんですよ。

読んだ人がシェアしない限り、そんなふうには増えないので、本当にその方たちに助けてもらった、と思っています。

——ファンレターは、やはり登場人物たちと同じく、中高生の方からが多いのでしょうか?

中高生の方からもですが、大人の方からもたくさんお手紙をいただきます。なかには、「普段は漫画を読まないのですが」という書き出しの方もたまにいらっしゃるんですよ。時間つぶしにスマホを見ていてたまたま読んだ、ということなのかなと思うんですが、それもウェブトゥーンならではのことだと思うので、ありがたいなと思いました。

主婦の方もたくさん読んでくださっていて。先ほどお話した「紙の本にしてほしい」という方の理由として、「子どもに読ませたいから」というのもあったんですよ。それも嬉しいですよね。高校生よりも下の年齢になると、そもそもスマホを持っていなくて読めなかったりするので。

あっ、今回『氷の城壁』が紙の本になることが、当時「紙の本にしてほしい」と言ってくれていた方に伝わるといいなと思っているんです。完結から1年経っているので…伝わるかちょっと不安で(笑)。

——連載でお忙しい中で、今楽しいと思っていることや、これからやってみたいことがあれば教えてください。

漫画を描いて、載って、『正反対な君と僕』で初書籍を出せた時点で楽しくて、ホクホクしていたんですよ。そうしたら、『氷の城壁』が「ボイスコミック」になったり、「ジャンプフェスティバル」で鈴木と谷のパネルを作ってもらったり、『氷の城壁』と『正反対な君と僕』のコミックス共同でグッズを作ることになったり…「そんな文化があるんだ!」みたいな想像もしていなかった楽しいことが起きるんです。
自分の描いているものに対して、周りの方たちが動いてくださる感じになんだかドキドキして…すごく嬉しいです!

『氷の城壁』第2話を読む

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文・インタビュー/門倉紫麻

『正反対な君と僕』(集英社)

阿賀沢 紅茶

2022年7月4日発売

660円(税込)

B6判/184ページ

ISBN:

978-4-08-883125-1

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元気いっぱいだけど周りの目を気にしてしまう鈴木は、自分の意見を言える物静か男子・谷くんに絶賛片思い中。だが周りの目が気になって普通に接せず、いつも谷くんにダル絡みばかり…。しかしある日勇気を出して、一緒に帰ろうと誘ってみたところ…!?
共感マックスの等身大ラブコメ、開幕!!

単行本版『氷の城壁』(集英社)

阿賀沢 紅茶

2023年7月4日発売(電子版はコミックシーモア、LINEマンガで6月4日先行配信)

990円(税込) ※電子版は792円(税込)

B6版/200ページ

ISBN:

978-4-08-883544-0

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人と接するのが苦手で、他人との間を壁で隔ててしまう氷川小雪。
高校では誰ともつるまずに1人で過ごしていたけど、なぜかぐいぐい距離を詰めてくる雨宮ミナトと出会い――?
孤高の女子・小雪、学校の人気者・美姫、距離ナシ男子・ミナト、のんびり優しい雰囲気のヨータ。
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