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『竜そば』への参加、紅白出場――チャレンジを止めない音楽家・中村佳穂が語る“うた”の未来(前編)

集英社オンライン / 2022年5月30日 13時1分

『竜とそばかすの姫』で主役として声優に初挑戦し、さらにBelle名義での紅白歌合戦への出場を果たしたシンガー・中村佳穂。3年半ぶりの最新アルバム『NIA』をリリースした彼女の本音に迫るインタビュー、前編をおくる。

中村佳穂、激動の2021年を振り返る

歌の現場で、彼女はいつも自由を手に入れる。
フェスで、イベントで、ワンマンで。それぞれ環境や客層も異なるわけだが、いつしか自分のペースに引き寄せ、やがて歌が媒介する形で最大限の解放を生む。そのベースには、細部まで丁寧に作り込まれた作品があり、ライブでの演奏も兼ねるレコーディングメンバーとの強い絆がある。
2022年3月、待望のアルバム『NIA』をリリースした音楽家・中村佳穂。2018年のベスト・ポップアルバムと言える『AINOU』から3年半を経たわけだが、昨年は劇場アニメ『竜とそばかすの姫』(以下、『竜そば』)の主人公=すずとして声優と劇中歌を担当し、メインテーマを「millennium parade × Belle(中村佳穂)」名義で歌唱。


大晦日には同名義で『NHK紅白歌合戦』に出場するなど、その名をよりマスへと広げた一年となった。まずは、激動という言葉がふさわしい日々となった2021年を、『竜そば』への参加から振り返ってもらった。

中村 音楽活動を始めて10年ほど経ちますが、その長い中でも濃密な1年間でした。『竜とそばかすの姫』の細田(守)監督から“佳穂ちゃんに決まりました”とオーディションの最終通知をオンライン通話でいただいた時は、身体中に“ここから私はまた新しくいろんな可能性を見出していけるのだ”と、稲妻のように人生のイメージが頭の中で駆け巡っていったのを覚えています。
実際、音楽だけではなく、俳優の方々、ファッション、アニメーション、CG作家、更に幅広いジャンルレスな方たちとコミュニケーションを取れるようになったことで、視野が広がって、その分より落ち着いて自分の人生を見られるようになった気がしています。

2018年にリリースされたアルバム『AINOU』

声優活動から得たもの

『竜そば』は、細田守監督作品の中でも最大ヒットを記録。リアルとネット社会を巧みに対比させながら、双方のコミュニケーションの齟齬や可能性を、「歌」を起点に描いた意欲的な作品において、中村佳穂の声が果たした役割は非常に大きいものだった。彼女にとっても、「すず=Belle」という人格と向き合い、その中で歌うことは刺激になったという。

中村 すず、という人は“内向的である”という自分が作ったイメージから抜け出すのにあと一歩、力やきっかけが足りないという人。対してBelleという人は仮想現実で「絶世のいい女」という設定。対照的でありながらも、肉体を操作しているプレイヤーは同じ。唯一の違いは“環境”かなと思ったので、アフレコの最中は、すずの時はスニーカーにミニスカート、なるべく呼吸は浅く。Belleの時はパンプスを履いて、呼吸はなるべく深くしっかりと話すことを意識していました。
音楽活動においても“本番までにどんな自分でいたいのか、それまでにどのような環境を整えればいいのか”ということにさらに意識するようになりました。

3年半を費やした『NIA』というアルバム

アニメ作品への参加という新たな挑戦と並行して、自身名義でのアルバムの制作も続けられていた。当初は、強いメロディとエレクトロで精密なアレンジを特徴とする『AINOU』との相似形や続編のようなイメージを意識していたというが、時代の急激な変化に合わせ、その有り様は変わっていかざるを得なかった。

中村 前作の『AINOU』という作品が2018年にリリースされた後に、すぐ(制作に)取り掛かっていました。元々『AINOU』という作品は2作になりそうだなというのは2016年の段階で構想していました。引き続き自分の持ち合わせている実演奏スキルと電子音のサウンドを掛け合わせた異色もの、というところまでは決めていたのですが、コロナ禍ということもあり、自分が何を求めているのかが日々変化しているように感じて、活路を見つけるまでに時間がかかりました。

そうした制作上の変化を乗りこなす上で、彼女のサウンドプロダクトに貢献し、共同制作に名を連ねているメンバー、西田修大、荒木正比呂の存在は大きいと語る。ライブにもコアメンバーとして参加するふたりは、中村佳穂という強烈な個性を持て余すことなく、ときに歩幅を合わせたり、ときに一歩後に引いたりしながら、歌を引き立たせる職人だ。

中村 ふたりは今作、ミクスチャーのような存在でした。洋楽ライクなトラックの上に日本詞を乗せるとのっぺりしてグルーヴしないということが多々あるのですが、トラック時点で得られたバランスが崩れないように、私が提案したメロディをコラージュのように再編集し、跳ねるようなグルーヴを作っていただいたりしました。粘り強く作っていただけて本当に感謝しています!

現在も京都を拠点としている。「ミュージシャンの時間の感覚が豊かで、自分の心の軸にしたがって生きている感じがするのが居心地良く感じています」とその理由を語る

中村佳穂が考えるポップスの形

ふたりの協力をもって完成したアルバム『NIA』は、確かに『AINOU』の延長線にありながらも、そこからの飛躍的な伸びしろを感じさせる作品だ。先行シングル「アイミル」や「さよならクレール」をはじめ、中村の声を活かしたファンキーで躍動感溢れるポップスが縦横無尽に展開されていく。しかも、インディー的なLo-Fiサウンドではなく、Hi-Fiでクリアな録音がなされていることが、その普遍性に寄与している大きな要因だろう。そしてそれは、彼女の中での“ポップスとは?”という問いへの回答のようにも感じられた。

中村 (Hi-Fiなサウンドは)強く意識はしていませんでしたが“普遍的に聴こえる”というもののひとつの解が、今回のサウンドに行き着いたのだと思います。実際インディーズでもあるので、その自負から外れた自分の中の新しい側面にも辿り着いてみたいと思っていたので、そう言っていただけて嬉しいです。
ちなみに、私の中でポップスと聞かれてパッと思いつく言葉は、ジャンク、気軽さ、気楽さ、隠し味でした!

<ツアー紹介>
[中村佳穂 TOUR ✌ NIA・near ✌]
■2022/09/14(水) @東京・J:COMホール八王子 開場18:00/開演19:00
■2022/09/19(月・祝) @福岡国際会議場(メインホール) 開場17:00/開演18:00
■2022/09/22(木) @岡山・倉敷市芸文館 開場18:00/開演19:00
■2022/09/27(火) @トークネットホール仙台(仙台市民会館)大ホール 開場18:00/開演19:00
■2022/09/29(木) @札幌市教育文化会館 開場18:00/開演19:00
■2022/10/05(水) @愛知県芸術劇場 大ホール 開場18:00/開演19:00
■2022/10/07(金) @東京・昭和女子大学人見記念講堂 開場18:00/開演19:00
■2022/10/27(木) @大阪・フェスティバルホール 開場18:00/開演19:00

一般発売 : 2022/05/28(土)10:00~

取材・文/森樹

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