2022年に、10周年を迎えたガールズケイリン。初となるG1レース『パールカップ』が開催されるなど、年々人気が高まっている。その美貌と実力で人気を集める塩田日海選手は、大学卒業後、内定していた企業への就職をやめて競輪選手となった。
ラグビー選手か、競輪かで迷ったという身体能力抜群の塩田選手はなぜ競輪選手となったのか。そして気になる競輪選手のプライベートまで。気になる質問全てを聞いてみた。
内定していた企業も公務員という道もすべて捨てて、ガールズケイリンの選手へ。塩田日海がそれでも自転車に乗る理由
集英社オンライン / 2023年6月13日 12時1分
高校・大学は、棒高跳び。内定をもらっていた企業への就職を蹴った塩田日海が、新たに挑んだのは――ガールズケイリン。自転車競技未経験の彼女が競輪選手になった理由と、プライベートな質問についても聞いた。
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競輪経験やツテが
一切ない状態から選手へ
――公式プロフィールによると、身長162.2cm、背筋力147.0kg、太股60.0cmで、体重は非公表となっていますが。
そうなんですか?
――はい。生年月日や好きな食べ物、嫌いな食べ物まで書いてありますが、なぜか、塩田日海選手だけ、体重が非公表扱いになっていました。
どうしてかな? わからないです。太股のサイズまで書いてあるんですから、体重も載せてもらって問題ないのに(笑)。なんででしょう?
――その疑問はひとまず脇に置いて(笑)。塩田選手は3人姉妹の末っ子なんですよね。
三者三様で、一番上は偏差値が70と、めちゃめちゃ頭が良くてオクタ気質。真ん中はスポーツ万能の面白キャラ。末っ子の私はその中間という感じです。
――棒高跳びで、神奈川県の高校記録を出したり国体に出場されたり、スポーツ推薦で大学にも進んだわけですから中間ではないと思いますが…。でもなぜ、そもそも棒高跳びだったんでしょう?
中学のとき器械体操をやっていたんですが、それを知った顧問の先生が、「こいつは棒高跳びで伸びる」と目をつけていたみたいで(笑)。半ば強制的に棒を持たされ、そこから大学を卒業するまでの7年間は、棒高跳び一筋でした。
でも、先生のおかげで棒高跳びに出会うことができて、感謝しています。
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――大学卒業後も、棒高跳びを続けるという選択はなかった?
それはありませんでしたが、ずっとスポーツだけやって来た私が、それ以外で働くことができるのか不安でした。
公務員試験の勉強もしていましたし、内定をいただいていた会社もあったんですが、まだまだ体は動くし、自分を活かせる場所がほかにあるんじゃないかと思っていたときにパッと目の前に現れたのが、女子ラグビーとガールズケイリンだったんです。
――最終的に、ガールズケイリンに決めたのは?
2つとも興味はあったんですが…ラグビーは社会人リーグ。午前中は会社員として働く必要がありました。でも競輪はプロとして一つのことに集中して取り組めるので、競輪に決めました。
日本競輪選手養成所のweb説明会に参加して、未経験でも参加できることを知りすぐに願書を提出、一次試験に受かるとは思っていなかったのですが、なんとか通過できました。
――二次試験には、自転車での走行能力を測るワットバイクがあります。
私の場合は、ワットバイクって何? というところからのスタートだったのですが(笑)、二次試験までに乗ってみなくちゃということで、川崎競輪場を紹介していただき、今の師匠、對馬太陽選手に繋いでいただいて…という細い糸のような縁を大切にして、ここまでやってきた感じです。
強い選手が2人いるレースの方が
勝ちやすい?
――新人選手だけで争うルーキーシリーズのデビュー戦は、2022年4月30日の松戸でした。
2次試験に合格した段階である種の覚悟を決めて、養成所で24時間自転車と向き合うことで、プロとしての自覚も持ったはずなのに、本番を前にするといきなり不安が襲いかかってきました。
――敢闘門という入場ゲートが開いて、選手はそこからコースに出ます。
本当なら卒業記念レースは、お客さんの前でやるんですけど、コロナ禍のため、無観客でのレースになってしまって。なので、この日がはじめてお客さんの前で走るレースだったんですが、とにかく人が多くて熱気がすごくて、私にとってはものすごい衝撃でした。
――初勝利は、7ヶ月後の11月20日、佐賀県・武雄競輪場です。
私の中では、先輩たちと横一線でスタートするレースに勝つのは、最低でも一年はかかると思っていたので、デビューしたその年に勝てたことは、正直驚きでしたし、同時にすごく嬉しかったです。
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――勝因を挙げるとすれば?
レースは7人で走るんですが、結果的に私が勝てたそのレースに、強い選手が1人ではなく、2人いたことです。
――えっ!? それってどういうことでしょう? 1人ならまだしも、2人いたらそれだけ厳しい戦いになると思うのですが。
強い選手が1人だけだと、みんなその選手の動きに合わせてレースをすることになるので、主導権は強い選手が握ることになり、レースは、ほぼその強い選手が思い描いていた通りに進み、結果その強い選手が勝つことが多くなります。
――なるほど、言われてみるとその通りです。
でも、強い選手が2人いるとその強い選手同士も牽制し合うし、周りも2人の動きを注視するので展開が緩んで、そこに付け入る隙が生まれることがあるんです。私が勝ったレースはまさにそんな感じでした。
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――レース前にそこまで読み切る?
読み切るところまではいきませんが、今の私の力で先輩たちと勝負できるとしたらその展開しかないので、思いつく限りのパターンをイメージして、その中のひとつにうまくハマってくれたので勝利できましたね。
競輪場で迷子に!?
――競輪選手のひと月のスケジュールを教えてもらってもいいですか?
レースは3日間あって、前日に決められた宿舎に入るので、1回のレースで4日間の拘束になります。レースは、月に2〜3回あるので、その間はレースに集中しています。
――残りは?
朝練組、昼組、午後組と、師匠やグループによって違いますが、川崎は朝練組が多くて、6時30分に集合してそこから練習がスタート。午後は個人でウエイトトレーニングをしたり、師匠の元でもがいたり…その日によって違います。
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――お休みは?
レースの翌日を休みにすることが多いです。
――ということは、月に3回レースがあったとして、休みは3日しかしない?
午後の自主練は、文字通り自主的な練習なので、やる、やらないも含めて個人の自由裁量になっているので、必要な時はお休みを取ったりしますね。
――そういうときは、帰って寝る? それとも美味しいものを食べに行く?
体調にもよりますが、どっちもですね(笑)。
休みの日は高校や大学の友達と買い物に行ったり、温泉に行ったりもしますし、基本的に食べるのが好きなので、美味しいものを食べて、思い切りおしゃべりをして、気分転換をしています。
――苦しかった養成所生活含めて、こんなにきついならやめてやる! と思ったことは?
力を出し切る練習をするときは、最後の方はもう息もできなくなって、終わった瞬間に倒れ込むこともしょっちゅうなので、なんで、こんなきつい練習をしているんだろうと思うことが何度もあります。
でもやめてやる!と思ったことは、まだないですね。昨年デビューしたばかりなので、あくまで、今のところはですけど(笑)
――最後にひとつ、話せる範囲のちょっと恥ずかしかった話があったら教えてください。
新人あるあるなんですけど…競輪場はひとつひとつ全部作りが違っていて、結構、複雑になっているので、何度か迷子になったことあります。
迷った挙句、お客さんのいるフロアーに出てしまったり、警備員さんに、「選手なんですけど…」と聞いたり。最後の手段として同期に電話をして、「今、こういうところにいるんだけど、どうやっていけばいいの?」と聞いたこともありました(笑)。
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取材・文/工藤晋 写真/松木宏祐
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