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まさかのスピルバーグ3回目。最新作から本題である1982年の映画にうまいことつなげるはずが…「おのれに映画を語る資格なし!」と、樋口眞嗣を猛省させる致命的ミス発生!?【番外編『フェイブルマンズ』】

集英社オンライン / 2023年6月17日 12時1分

TV番組『世界一受けたい授業』で、スピルバーグの回の講師を務めたほど、公私ともに認めるスピ好きの樋口真嗣監督。1982年に見た原点ともいうべき映画たちについて語るシリーズ連載のはずが、愛が深すぎて、今回も番外編。しかも…やらかす! 天罰テキメン!!

同時に2本撮る二毛作に突入するスピルバーグ

まさかの『E.T.』 (1982)で2回分使ってしまうとは思わなかったけれども、書き始めて初めてわかる己がスピルバーグ愛の深さよ…でございますが、動物パニック映画かと思いきやハードな海洋冒険映画だった『ジョーズ』(1975)に始まり、愛に満ちたファンタジーかと思いきや冷徹なシミュレーション映画だった『未知との遭遇』(1977)といい、表層と実質のギャップが彼の映画に奥行きを与えてきました。



『E.T.』も、まさしくその系譜といえましょう。その前に『1941』(1979)という、表層も実質も身も蓋もない映画がありましたが、これはなかったことにしましょう。個人的には大好きな映画ですが。

ただし、映画の道を分け入っていくと、その魅力を妄信的に受け入れるだけでは済まなくなります。必ずやってくるのが映画好き同士による対立です。スピルバーグ好きを筆頭とする娯楽偏重主義に対する、芸術原理主義者による粛清であります。

より優れた映画を嗜む者であれば、スピルバーグの商業主義的映画作りなどけしからん、猛省せよと恫喝されます。純粋な娯楽の追求があったっていいではないかと思うんだけど、映画好きたる者、もっと崇高なものを目指すべきだと怒られます。

そんな論調を知ってか知らずか、当のスピルバーグも自身の監督作は社会性とか作家性を第一義に唱えるような映画作りに舵を切り、それまでのエンタテインメント寄りのジャンル作については製作側に回って若い監督たちに撮らせつつ、そのブランドイメージを強固にしていきます。

迷走というほどひどいもんじゃないけど、本来の作家性一筋で映画を作り続けている監督たちの作品と比べるとどっちつかずに見えてしまい、いつしかシネフィル気取りの視点を持ち純粋に映画が楽しめぬ体になってしまった己を呪うことになるんですが、1990年代中盤にさしかかってから、スピルバーグは娯楽性の高い映画と作家性の強い映画各1本それぞれをほぼ同時期――どちらかの撮影が終わり、長い仕上げ期間中にもう一方を撮影するーーという二毛作スタイルを確立し、奇跡のV字回復を遂げて現在に至るのです。

自伝的映画『フェイブルマンズ』を撮影中のスピルバーグ。家族役のキャストに囲まれて
©Capital Pictures/amanaimages

『ジュラシック・パーク』と『シンドラーのリスト』(いずれも1993)とか、『ロスト・ワールド』(1997)と『プライベート・ライアン』(1998)、『宇宙戦争』と『ミュンヘン』(いずれも2005)…最近だと『レディ・プレイヤー・ワン』(2018)と『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2017)。相対するそれぞれの作品がシナジーを生み出しているのではないかと思うのです。とてもじゃないけど真似できませんが。

そして老境の域に達して好きな映画だけを好きに撮れる――本当に羨ましい人生ですが、そんなスピルバーグがいま選んだ題材は自分の人生。最新作『フェイブルマンズ』(2022)は、映画を愛し、映画作りを志し、それを天職として選んだ自身を主人公にした映画でした。
必要なのは才能と運、そして覚悟であると唱え、たとえ地獄の苦しみがあろうとも最高の喜びが待っている――そんな我が人生を高らかに歌い上げます。

デヴィッド・リンチが演じたのは…

そのクライマックス、とんでもないネタバレなので試写の段階では口外禁止でしたが、劇場上映も終わったし、そのネタで驚くような人は映画館で見ているはずだし、見なかった人は己の不得を呪うべきですから口外しちゃいますけど、ユニバーサルスタジオに入ったスピルバーグは、同じスタジオにオフィスがあった巨匠ハワード・ホークスとたった15分だけど会うことが許され、そこで実人生でも本当に聞かされたという、映画を撮る上で必要なことを教えられます。ホークスを演じたのは、同じ映画監督だけど作風的にはほぼ真逆ではないかとさえ思えるデヴィッド・リンチ。

リンチは『エレファントマン』(1980)が、配給を担当した東宝東和の巧妙な宣伝戦略で、”感動の実話”として1981年に日本で大ヒット。その勢いで監督デビュー作『イレイザーヘッド』(1977)が同年急遽上映され、その常人離れした趣味性が広く知られることになりました。イタリアの山師製作者ラウレンティス親子と組んで莫大な予算をかけた趣味炸裂のSF大作『デューン/砂の惑星』(1984)が公開されるのは4年後の1985年春になりますので、この連載で語ることはできません。今回はそのリンチが演じたハワード・ホークスが製作、その実ほとんど監督していたと言われる…ってちょっと待て!
リンチが演じてたのはジョン・フォードだよ! ハワード・ホークスのオフィスに行ったのは原田眞人さんだよ!

2022年5月、カンヌ国際映画祭でのデヴィッド・リンチ監督
©REX/アフロ

うわー! なんてこった!
この期に及んでハワード・ホークスとジョン・フォードを間違えるなんて映画を語る資格なしだよ!
黒澤明と溝口健二を間違えるか?
小津安二郎と成瀬巳喜男を間違えるか?
ジョン・ダイクストラとダグラス・トランブルを間違えるか?

しかも今回はスピルバーグの続きと見せかけて、新作『フェイブルマンズ』のラストシーンに登場したリンチ、というか「リンチが演じた“映画監督X”が1950年代に手がけた唯一のSF映画のリメイクが、1982年に公開されたのです!」というきれいな流れで考えていたのに、そのハブとなるべき映画監督の名前を間違えていたらどう頑張ってもつながりません。ふたりともほぼ同年代だし、ジョン・ウェイン主演の西部劇映画をふたりとも撮ってるし…なんて言い訳にならんだろう。足首を縄で括って馬で引きまわされるがよい!

ということですいません。
出直してきます。

文/樋口真嗣

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