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危機のクレディスイス、汚職官僚や犯罪者らの不正資金口座疑惑浮上…中国・深圳に合弁会社を作った矢先の惨劇

集英社オンライン / 2023年6月12日 7時1分

世界の富裕層の間でスイスから資金を引きあげる動きが広がっている。スイス金融大手UBSによる同業クレディスイス・グループの買収の過程で、不信感が強まったからだ。そこにはどのような因果関係があるのか、『国際金融危機!米中メルトダウンの結末』(ビジネス社)から一部抜粋、再構成してお届けする。

ビットコインも海外資金逃避の伏魔殿だった

金融の伏魔殿はビットコインが代表する暗号通貨資産である。

暗号通貨取引大手だったFTXのトップ、バックマンフリードは、バハマ諸島ナッソーで逮捕され、ニューヨークで裁判が進行中である。

3年ほど行方をくらましていた韓国人の「暗号通貨王」ことド・クォンは、23年3月にソウルから遙かに遠い、バルカン半島のモンテネグロで逮捕された。韓国当局から逮捕状がでていた。



このド・クォンは暗号通貨「テラUSDコイン」なる投機商品を発行し、被害総額は400億ドル。「3本の矢キャピタル」や「セルシウス」など流通業者が倒産に追い込まれ、SEC(米国証券取引委員会)からも召喚されていた。

ド・クォンはシンガポールの拠点を畳み、ドバイからセルビアあたりに潜伏していたが、3月23日にモンテネグロのポドゴリッツア空港で逮捕された。

大富豪らが「危ない資金」をスイスから「もう少し安全な場所」へ

この暗号通貨破産と、さきのSVBの倒産とはいかなる因果関係で結ばれるか?

トランプ前政権の首席補佐官代行だったマルバーニが「オペレーション・チョークポイント2・0」との関連を示唆した。

米財務省は「暗号通貨はSVB倒産と無縁」と考えて、「リスク管理の悪さが原因だ」としているのだが、当局がSVBに対して「暗号通貨を避けるよう」に圧力をかけた経過がSVB崩壊につながった可能性があることを示唆した。つまりSVBは暗号通貨に手を出していたのだ。

「オペレーション・チョークポイント2・0」とは銀行が暗号通貨の預金を保持したり、当該通貨の「安全性と健全性」に基づいて暗号通貨会社に銀行サービスを提供したりすることを思いとどまらせる取り組みを意味する。ただし米国当局は「オペレーション・チョークポイント2・0」を公式戦略とは認定していない。

FRBならびに連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)が「暗号資産に関する共同声明」で、「暗号通貨と分散型ブロックチェーン・ネットワークは安全で健全な銀行業務と矛盾する可能性が非常に高い」と警告していた。

暗号通貨は富豪たちの隠れ蓑となった。一時はビットコインの80%が中国人によって商われた。マイニングならびに取引業者は香港、シンガポールから現在はドバイに集中している。要するに大富豪らが「危ない資金」をスイスから「もう少し安全な場所」へ移したのだ。いずれ『ドバイ文書』の出現となるかもしれない。

スイスはペーパーカンパニー設立に最も多く関与した国の1つ

『パナマ文書』は2016年に公開された。筆者はこのペーパーバックをロンドンの書店で購入したが、タックスヘイヴンに設立された法人に関する機密ファイルだった。

『パナマ文書』によると、スイスはペーパーカンパニー設立に最も多く関与した国の1つだった。翌年に明るみに出た『パラダイス文書』でもスイスの大物政治家や企業経営者、大企業の名前が関係者として挙がった。

ロシアのプーチン大統領の名前はなかったが、彼の3人の友人の名前が挙がった。中国の習近平総書記の義兄、同李鵬元首相の娘、英国・キャメロン元首相の亡父、マレーシアのナジブ・ラザク首相の息子、アゼルバイジャンのアリエフ前大統領の子供達、カザフスタンのナザルバエフ前大統領の孫、パキスタンのシャリーフ元首相の子供、南アフリカのズマ大統領の甥、モロッコのムハンマド6世国王の秘書、韓国の盧泰愚元大統領の息子や、俳優のジャッキー・チェンら有名人の名前もあった。

パナマの新聞『エル・シグロ』は、ジャッキー・チェンが英国領ヴァージン諸島に登記された6つのダミー会社の株主になっていると報じた。

2017年に暴露された『パラダイス文書』は漏洩案件が1340万件もあり、調査に時間がかかった。顧客の企業や個人数を国別に分けると、米国が3万余、次いでイギリス1万4000余だった。

タックスヘイヴン関連文書にゼレンスキー大統領の名前も

ついで『パンドラ文書』の発覚は2021年10月だった。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、リークされた機密書類の概要を暴露したので、銀行と組んだスイスの弁護士、会計士、コンサルタントらが富裕層や権力者の資産を世界各地に移動させる手助けをしていた事実が浮かんだ。

分析の結果、91ヶ国の330人以上の政治家や政府高官にタックスヘイヴンとのつながりが確認された。ブレア元イギリス首相、アブドラ2世ヨルダン国王、ウクライナ大統領のゼレンスキーの名前も報道された。「正義の大統領」=ゼレンスキーの名前があるのだ。

また、詐欺や贈収賄や人権侵害等の不正行為で告発された人物や企業が隠れ資産を所有していた事実も明るみにでた。

スイスの銀行法第47条は、たとえ違法行為を公開する目的であっても、個人の口座情報を他人に公開した場合は刑事罰に問われると規定している。しかしスイスの法律の壁は壊れた。大富豪たちはスイス口座を畳みはじめ、世界のオフショア、とりわけドバイ、リヒテンシュタイン、ケイマンなどへ巨額を移動した。

クレディスイスに、汚職官僚や犯罪者らの不正資金口座疑惑

2023年3月9日、クレディスイスは22年度決算で最終損益が72億9300万スイスフラン(約1兆円)の赤字だったと発表し、経営不安による顧客の預入資産の流出が原因だとした。

表面的には22年10月頃から経営不安が強まり、富豪顧客が預金引き出しを開始していた。このため7%という高金利を謳って、クレディスイスは中国へも進出した。

日本の定期預金は100万円を1年預けても利息は雀の涙にもならない! クレディスイスは新規500万ドル以上の預金に対して3ヶ月定期預金に年率6.5%の金利を設定。1年物では最高7%の金利を設けた(スイス政府の保証はひとり13万5000ドル)。

中国に開設した合弁の「クレディスイス・セキュリティーズ(中国)」は深圳に限られていたブローカー免許の拡大も認められ、中国全土で営業をはじめた矢先だった。同行は米国投資銀行と熾烈な競争を繰り返し、その無謀とも言える拡大主義によって多くの不祥事を起こし、信頼を落としてしまった。

内部告発情報を基に行った調査で、クレディスイスに、汚職官僚や犯罪者らが不正資金を預けた口座がまだ数十件あるという疑惑が浮上した。

「スイス・シークレット」と名付けられた同調査では数十件の問題口座を特定。預金額は計80億ドル(約9200億円)を超え、汚職スキャンダルに関与した重要人物の名前もある。ベネズエラの石油関連汚職で告発された官僚や、追跡不可能な57億ドルの負債を抱えて自身の銀行が破綻し、ポルトガルで捜査を受けているアンゴラの銀行家らの名前が挙がっている。

かくして秘密口座の機密が漏洩し世界の富裕層はスイスに預金口座をおく必要性がなくなった。

国際金融危機!米中メルトダウンの結末(ビジネス社)

宮崎 正弘

2023年5月17日

1,650円

248ページ

ISBN:

978-4828425313

米国・シリコンバレー銀行の経営破綻から始まり、米国の銀行、数行から1日に400億ドルが預金口座から蒸発した。
IT系のベンチャー企業に無理な融資を行い、焦げ付きが生じたと言われている。
さらにクレディスイス銀行、ドイツ銀行などEUの金融大国にも危機が飛び火。中国の資産家や企業も打撃を受ける事態に!
世界経済のバブルが弾ける。そのとき日本経済は生き延びられるか?ドル基軸体制は、いつまで持つのか?
国際資本の伏魔殿の最新情報!

GAFAM黄金時代の終わり/中国経済の大陥没/ウクライナの怪しいマネーが招く大混乱
次の世界恐慌が目前に迫る。


[本書の内容]
ジャック・マーに帰国をうながした中国政府/米国主導だったグレートゲームは終了する?
米国の分裂状態は悪化する/政権中枢に経済通がいない
金融も共産党直轄になるなんて!/海外マネーの逃避が続出している
米国の対中制裁「ブラックリスト」は651社/中国のZ世代は何を考えているのか
それでも中国への油断は禁物/「ドル基軸体制の終焉」が警告され始めた
●もくじ
プロローグ リーマンショックの惨状を超える未来の国際金融の疑獄図
第1章 SVB、シグニチャー銀、クレディスイスの破綻は「金融恐慌」前夜
第2章 米国は中国に勝てるのか?――GAFAMの黄金時代は終わった
第3章 ウクライナの伏魔殿が導く大混乱
第4章 中国経済の大陥没が起きる
第5章 グローバル・パワーとして振る舞いだした中国
エピローグ 大きく揺らぐドル基軸体制

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