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一気に30万人消失! 台湾人が中国大陸から逃げ出している…技術を盗まれ、工場は乗っ取られ、愛人たちは金を持ち逃げし…

集英社オンライン / 2023年6月14日 7時1分

リーマンショックの惨状を超える国際金融の地獄が待ち受けているといわれる今の国際経済。そのとき日本経済は生き延びられるかどうかに迫った『国際金融危機!米中メルトダウンの結末』(ビジネス社)から、起業家や世界の投資家の間で語られる北京の不信ついて一部抜粋、再構成してお届けする。

1980年代、台湾人は恐る恐る大陸へ

1980年代、中国が改革開放に転じたとき海外華僑は半信半疑だった。最初は香港の華僑が、それも零細企業がスイッチの部品とか、プラスチック成形機を運んで、人件費の安さに惹かれ中国に進出した。といっても広東語の通じる広州から深圳にかけて進出した地域は限定されていた。広東人にとって上海語はまったく理解できない。



華僑コネクションを通じて噂を伝え聞いた台湾人が、おそるおそる、繊維、プラスチック、玩具、軽工業や機械部品の工場を大陸に移管し始めた。第一に台湾語は福建語の変形だから言葉が通じる福州、厦門あたりへ。第二の理由は賃金だった。アパレル進出の台湾工場では大陸の女工さんたちを台湾の5分の1以下の給与で雇用できた。

台湾企業の中国投資ブームが起こった。ウーロン茶製造のノウハウからカラスミの処理方法まで台湾人が大陸へ持ち込んだ。台湾の経営者のなかには現地妻を抱える手合いも夥しく、そのお手当の安さを吹聴したものだった。

ここでマフィアが絡み出した。台湾人の住まいを狙う窃盗、強盗事件が頻発。殺人事件も相当数にのぼった。ついで脅迫、誘拐による身代金、美人局ときた。政治的に見ると江沢民から胡錦濤時代の20年間、中国ではかなりの程度まで商業活動は自由で、ぼちぼちスナックがナイトクラブとなり、高給バーやらワインバー、なかには日本酒の銘酒をそろえたバーもできた。めざましい経済発展がおきた。クラブは大概が銀座の真似でボトルキープの棚が目立った。ほとんどのビジネスホテルにカラオケバーがあった。



「大丈夫、われわれは中国人同士、考えていることはわかる」

1990年代に台湾は中国投資を上限5000万ドルとして正式に許可し始める。

台湾プラスチックの王永慶会長にこの頃インタビューに行ったが、上限額を超える投資を中国大陸になすというので「禁止されているのでは?」と聞いた。王は「米国子会社の投資とするので台湾の規制には引っかからない」とあっけらかんとしていた。

金門島の知事に会いに行くと、「台湾から対岸の厦門へ橋をかける」と豪語しはじめ、具体的な青写真を見せてくれた。台湾侵略にミサイルを配備している国に金門島から橋を繫げるのは危険では?」と尋ねた。「大丈夫、われわれは中国人同士、考えていることはわかる」と胸を張った。

中国から30万人の台湾人が逃げ出した

2011年、中国に40万人の台湾人が駐在、あるいは移住していた。2015年、42万人となった。おそらくピーク、習近平の台湾強攻策が始まった。

2020年、往時の半分近い24万2000人に減った。理由はコロナ、共産党の強硬な態度、そして中国以外への工場移転である。このころ、台湾の世論調査では台湾独立をのぞむ台湾人が過半、現状維持が25.7%、両岸統一を語る人は11.8%だった。

2021年、中国に滞在している台湾人は16万3000人に激減した。その傾向は歯止めがかからず、現在はもっと減っているはずである。主因はコロナ災禍で、工場を休業し台湾へ帰り、そのまま戻らなかった。加えて習近平の独裁が確定し、台湾統一を前面にだして軍事訓練、威嚇を本格化させたため嫌気がさすようになった。

台湾企業も技術を盗まれ、投資した工場は彼らに乗っ取られ、愛人たちはさっさと金を持ち逃げ

つぎに人件費の高騰で、川下産業の典型、繊維や玩具、雑貨などは中国からベトナムへ、カンボジアへ、そしてバングラデシュへ工場を移転した。台湾企業の繊維の街だった厦門近辺はゴーストタウン化した。

結局、台湾企業も技術を盗まれ、投資した工場は彼らに乗っ取られ、愛人たちはさっさと金を持ち逃げ、投資そのものが間違いだったことに気がついた。
日本企業諸氏、この台湾起業家たちの教訓をどう読むか?

ジャック・マーに帰国をうながした中国政府

そんな中で、2023年3月、馬雲(ジャック・マー)が忽然と浙江省杭州に出現した。杭州市はアリババ本社があり、上海とは新幹線で繫がって45分。

アリババ創業者のジャック・マーは1年以上の海外旅行の後、中国本土に戻って杭州市に彼が設立した学校を訪れた。2017年にアリババが資金提供した、幼稚園から高校までをカバーする私立学校の教師と生徒と、「チャットGPT」などについて話し合ったとか。

馬雲はスペイン、オランダを彷徨い、農業技術開発センターを視察し、またイスラエル、米国に旅行し、半年にわたって滞在した日本では、近畿大学のマグロ養殖実験場を見学しており、ビル・ゲーツ同様に次世代農業技術に異様な興味を示した。

馬雲に帰国をうながしたのはどうやら中国政府で、『自由時報』に拠れば、民間企業の新しい分野の活動を取り締まっていながら、他方で中国は世界に向けて、「民間企業を支援する」と獅子吼している。この文脈から中国政府はジャック・マーを政府と民間部門の評判を修復するための最良の候補者と見なしたのだ。

起業家や世界の投資家の間で北京を不信にする可能性


ボーアオ会議(23年3月、海南島)で李強首相は「グローバル路線で中国が成長する方針には変わりない」と打ち上げ、海外企業の進出継続をうながした。アップルCEOのティム・クックも訪中し、就任後初めて、李首相と会見した。

事情通に拠れば、新首相の李強が「民間企業への確固たる支援を強調するために、ジャック・マー(馬雲)が中国に不在であることは、起業家や世界の投資家の間で北京を不信にする可能性があるため帰国をうながした」と分析している。

海外流浪といえば、タイのタクシン・シナワット元首相だろう。タクシンはたびたび日本にも来ているが、頻度多い訪問先は香港。ここで次女の貝東丹(ペイトンタン)と会った。彼女は5月の総選挙に立候補を予定し、将来の首相候補のひとり。タクシンは東京で共同通信とのインタビューに応じ、16年間も海外を流浪しているが、近くタイに戻る可能性があると述べた。

タクシンは2006年の軍事クーデターで追放され、英国と日本で暮らした。帰国すれば2年の懲役を宣告されており、選挙結果を待って恩赦を狙っての帰国となりそうだ。

国際金融危機!米中メルトダウンの結末(ビジネス社)

宮崎 正弘

2023年5月17日

1,650円

248ページ

ISBN:

978-4828425313

米国・シリコンバレー銀行の経営破綻から始まり、米国の銀行、数行から1日に400億ドルが預金口座から蒸発した。
IT系のベンチャー企業に無理な融資を行い、焦げ付きが生じたと言われている。
さらにクレディスイス銀行、ドイツ銀行などEUの金融大国にも危機が飛び火。中国の資産家や企業も打撃を受ける事態に!
世界経済のバブルが弾ける。そのとき日本経済は生き延びられるか?ドル基軸体制は、いつまで持つのか?
国際資本の伏魔殿の最新情報!

GAFAM黄金時代の終わり/中国経済の大陥没/ウクライナの怪しいマネーが招く大混乱
次の世界恐慌が目前に迫る。


[本書の内容]
ジャック・マーに帰国をうながした中国政府/米国主導だったグレートゲームは終了する?
米国の分裂状態は悪化する/政権中枢に経済通がいない
金融も共産党直轄になるなんて!/海外マネーの逃避が続出している
米国の対中制裁「ブラックリスト」は651社/中国のZ世代は何を考えているのか
それでも中国への油断は禁物/「ドル基軸体制の終焉」が警告され始めた
●もくじ
プロローグ リーマンショックの惨状を超える未来の国際金融の疑獄図
第1章 SVB、シグニチャー銀、クレディスイスの破綻は「金融恐慌」前夜
第2章 米国は中国に勝てるのか?――GAFAMの黄金時代は終わった
第3章 ウクライナの伏魔殿が導く大混乱
第4章 中国経済の大陥没が起きる
第5章 グローバル・パワーとして振る舞いだした中国
エピローグ 大きく揺らぐドル基軸体制

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