アイドルの世界は底なしに奥深く、ものすごく面倒くさい人たちがウジャウジャ生息するジャンル。
素人がにわか知識で語ると大ケガをするからやめておくが、僕がいま入れ込んでいるanoは、確かにその世界からやってきた人だ。
ご存知の方には今さらな話だけど、「ano」とはソロアーティスト活動をするときの名義で、タレントとしてテレビやラジオ、YouTubeなどに出演する際は、ひらがなの「あの」表記となる。
まあややこしいので、以降の本稿では一般にもっとも浸透している愛称の“あのちゃん”で統一しよう。
集英社オンライン / 2023年6月10日 12時1分
アイドルに入れ込むことなく半世紀以上生きてきたオヤジが、ズブズブとその沼にハマってしまったアイドルがいる。あのちゃん、ano……アイドルとひとくくりにできない彼女の魅力とはいったいなんなのか。
アイドルの世界は底なしに奥深く、ものすごく面倒くさい人たちがウジャウジャ生息するジャンル。
素人がにわか知識で語ると大ケガをするからやめておくが、僕がいま入れ込んでいるanoは、確かにその世界からやってきた人だ。
ご存知の方には今さらな話だけど、「ano」とはソロアーティスト活動をするときの名義で、タレントとしてテレビやラジオ、YouTubeなどに出演する際は、ひらがなの「あの」表記となる。
アイドルグループ「ゆるめるモ!」の第3期生として、2013年に加入したあのちゃんは、その後の6年間、中心メンバー的な役割で活躍し、2019年に脱退。
現在はソロアーティスト及びタレントとして、また2021年からはバンドI'sのボーカル・ギターとしての音楽活動も並行しておこなっている。
などと知ったようなことを書いているが、もともとアイドルの世界にほとんど興味がない僕は、ゆるめるモ!というアイドルグループも、あのちゃんという人のことも、その存在を最近までまったく認知していなかった。
そんな僕がなぜ今や、あのちゃん関連の音源を聴きまくり、「あののオールナイトニッポン0(ZERO)」をラジコのタイムフリーで欠かさず聴き、YouTubeの「あのちゃんねる」はじめ、彼女の出演する番組や動画のチェックを怠らないようになっているのかについて考えてみたい。
江戸の歌舞伎役者と贔屓筋の例を挙げるまでもなく、特定のエンターテイナーを夢中で応援する行為は古来から普遍で、人の世では必然的に発生する摂理のようなものだ。
だから僕は、偶像を夢中で追っかける人に対して何も思わないが、自分自身はどうなのかというと、若い頃から今まで、いわゆるアイドルと呼ばれる人たちに強く入れ込んだことはなかった。
昔、小泉今日子がお気に入りだったこともあったが、それも入れ込み度は低かった。
周りの友達はみんな推しのアイドルの一人や二人いて、「お前は誰が好きなの?」と聞かれることもあったので、「だったらキョンキョンかな」という自分なりの回答をあらかじめ準備していた、という方が本音に近い。
その代わり、と言うべきなのかはさておき、そんな僕にも若い頃から夢中になって追いかけていたエンターテイナーたちがいた。
中高生だった1980年代、大多数の人から“ちょっとキワモノ”として扱われるアーティストに、僕はのめり込んでいたのだ。
当時はちょうどニューウェーヴ全盛期で、世界的にハードコアパンクやポストパンク、テクノポップ、ニューロマンティック、ゴスなどが流行していた。
日本でもインディーズブームが巻き起こり、そうしたジャンルにくくられるトンがったアーティストが、全国のアンダーグラウンドから雨後の筍のごとく出現した。
僕はブームだった当時からいま現在までずっと、そんなアーティストを追い求め続けているのだ。
翻り、あのちゃんがかつて在籍していた、ゆるめるモ!のことだが、僕はあのちゃんから目が離せなくなってから、後追いでチェックしてみた。
フリーライターの田家大知が、後ろ盾も知識もない真っさらな状態から、街頭スカウトで集めたメンバーによってはじめた、真の“インディーズ系”グループで、コンセプトはなんと、“ニューウェーヴガールズグループ”。
ゆるめるモ!の楽曲から音源のジャケットデザイン、メンバーの衣装に至るまで、内外のニューウェーブやオルタナ系ミュージシャンをオマージュしたエッセンスが盛り込まれている。
つまり、僕がまったく意識していなかったアイドル活動時から、あのちゃんは僕の好きな系統のエンタメを提供していたことは間違いなく、寡聞にして存じ上げなかったことは、甚だお恥ずかしいというしかない(なんて、本当は全然そんな大仰には考えていないんだけど)。
動画サイトにまとめられている、ゆるめるモ!時代のテレビ出演時の様子を見ると、あのちゃんは今と変わらぬ独特のしゃべり方で、アイドルとは思えぬ鋭いコメントや際どい発言を繰り出している。
スタジオでライブを再現するように振られると、のんびりした通常の態度から豹変して絶叫し、走りまくりながら歌い叫び、ゲスト陣の上に体を投げ出して転がったりしている。
ゆるめるモ!のライブでも、シャウトや客席へのダイブ、クラウドサーフィンなどのパンクっぽいパフォーマンスは、ゆるめるモ!及びあのちゃんの得意技だったらしい。
いやあ、やっぱ深いな、アイドルの世界は。
そんなあのちゃんは現在も、ゆるめるモ!時代に培ったのか、はたまたもともとそういうのが好きだったのかはわからないが、やることなすことトンガっていて、往年のパンクやニューウェーブが大好きだったおじさんの心に刺さりまくるのだ。
こういう言い方はあまりにも自分本位で上から目線でいやらしい老害だということは重々承知の上で言うと、こんなに可愛くて若い女の子が、よくぞ“コッチ側”に来てくれたというのが正直な気持ちだったりする。
極端な人見知りで、人とうまく馴染めず、登校拒否や引きこもりを繰り返し、高校も中退して……というのは本人もよく語るあのちゃんのプロフィールだが、そのへんもまた80年代パンクおじさんの心に刺さる。
戸川純や泯比沙子、きどりっこのてんちゆみなどの80年代不思議ちゃん系女性パフォーマーに感じていた、いつか崩壊してしまいそうな紙一重の危うさの上に立つはかない魅力を、現代のあのちゃんにも感じるのだ。
あのちゃんのソロ曲は、一癖あるオルタナ系パワーポップやシンセポップ的な要素が巧みに取り入れられていて、聞き応え十分。
そして何より、あのちゃんがボーカル&ギターを担当するバンド、I'sが最高だ。
パワフルな本格的ロックサウンドで、楽曲も神聖かまってちゃんや銀杏BOYZなど、20世紀のパンク&ニューウェーヴ系アーティストを彷彿とさせる、激しさとエモさを織り交ぜた良曲が多い。
中には性急なビートとシャウトを前面に押し出した、血が熱くなるようなハードコア的な曲もある。
あのちゃんはステージパフォーマンスも、とてもかっこいい。
ギターも歌も上手いし、客の煽り方も抜群。
本人が作詞作曲を手がける曲も多く、本当にこの人はアイドルというより、天性のミュージシャン気質なんだろうなと思う。
しかし一般的にはどちらかと言うと、ミュージシャンよりもタレント的な側面が先にクローズアップされがちなあのちゃんは、独特のキャラクターが“素”なのかどうかがたびたび突っ込まれたりするが、もはや素だろうが作られた人物像であろうが、そんなことはどっちでもいいくらい、あのちゃんのエンタメ性に僕は魅了されている。
ネガティブ発言も、トゲのあるコメントも「待ってました!」と大歓迎で、時には声に出して笑いながら聞いているが、キャンセルカルチャー花ざかりのしち面倒くさい現代社会では一種の“炎上キャラ”になっている側面もある。
でも致命傷にならない程度に炎上を巧みに演出したり遊んだりできるほど、クレバーなところにも感心する。
“炎上上等”だとは思うが、できればそのキャラクターと音楽性のまま天下を取ってほしいので、あのちゃんも周りにいる大人も、うまくやってくれよな〜と親身な気持ちで思ったりするほどだ。
とにかく奥深くて面白くて才気あふれ、それなのに生き方クソ下手な、パンクなあのちゃんからはまだまだ目が離せない。
(この「まだまだ目が離せない」という締めは、能なしヘボライターの常套手段だけど、ほかにまとめようがないので敢えて真似してみました。炎上上等!)
文/佐藤誠二朗
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