「夢」という言葉がある。誰でも幼い頃に抱く、将来なりたい仕事や目標、あるいは憧れ。そういった意味でぼくらは日常的にこの言葉を使っている。いつかそうなるといいな、と思って、人は努力したりしなかったり。人は夢を抱き続ける。
「あなたの夢はなんですか?」
もう何百人というラテンアメリカの人に、ぼくはこの質問をしてきた。そして、その度に、胸にトゲが刺さったような少しだけ苦い感覚を覚えるのだった。
それはなぜか。日本では定番のこの質問。だが、世界のいろいろな場所では、この質問が定番になっていない。「夢」の意味がわからない人が、そこにはいる。そのとき彼らは、質問の意味がわからない。そして、その「わからなさ」という手触りを感じるとき、ぼくは、途方に暮れた感覚に陥る。またこの質問をしてしまった、と後悔する。ぼくらと同じような夢を持っていることが当たり前と思っていた自分に失望する。