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二刀流”完全解放”を英断…エ軍マドン前監督「唯一無二の才能に制限をかけてはならぬ」大谷翔平が贈った「感謝と自責の言葉」

集英社オンライン / 2023年6月16日 12時1分

2023年シーズンのMLBも開幕から投打に好調な滑り出しを見せ、2021年シーズン以来2度目のア・リーグMVP獲得にも期待がかかる大谷翔平。その規格外の活躍をもっと楽しむために知っておきたいベンチ裏秘話や現地発の愛されエピソードなどを『もっと知りたい! 大谷翔平: SHO-TIME観戦ガイド』 (小学館新書)から一部抜粋・再構成してお届けする。

大谷ラブを公言するホセ・イグレシアス

「I LOVE SHOHEI(アイ・ラブ・ショウヘイ)。僕らは何か、非常にいい感じでつながっている。準備、考え方、注目して見ている。ものすごい、驚くべきエナジーがある。彼をリラックスさせて、楽しませたい」

そう言って”大谷さんラブ”を公言していた選手がいます。2021年シーズンの途中まで同僚だったホセ・イグレシアスです。キューバ出身の陽気な選手で、大谷さんへの愛情を惜しみなく表現し、言葉では言い表せない〝つながり〟も感じていたようです。



大谷さんがホームランを放った時にはベンチから真っ先に飛び出し、先頭でお出迎え。思いっきり抱きついたり、肩もみしたり、本人以上に喜んでいた姿をご記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのラテンな喜びようは微笑ましく、日本のファンからも愛されていました。

2022年はロッキーズに在籍し、シーズン前のオープン戦で再会。ともにがっちりハグで旧交を温めていました。

「ショウヘイのためにね、僕が作ったよ」

イグレシアスと言えばもう1人、2022年シーズンにライセル・イグレシアスが守護神として活躍しました。前述のホセと同じキューバ出身で、オオタニ愛たっぷりでした。

2022年5月6日の試合前のことです。胸部分に「TEAM JAPAN」と書かれた黒の練習用Tシャツを着用し、ニコニコと満足そうに練習を終えました。

「ショウヘイのためにね、僕が作ったよ」

そう言いながら投手陣、さらには数人のメディアにも配布し、一体感を生み出しました。クラブハウスでは帰宅時に日本メディアに向けて「コンニチハ」と日本語を話したり、お辞儀であいさつする親日家です。かつて、母国キューバとつないだZoomインタビューでは、スタジアム内の食堂で食事をしていた大谷さんをサプライズで登場させ、満面の笑みを見せていました。大谷さんも楽しそうで、仲睦まじい様子が伝わってきましたね。

絶対的守護神だったとはいえ、2022年のイグレシアスは精神的にややムラがありました。エンゼルスでは7月末までに39試合に登板し、2勝6敗、防御率4.04で救援失敗は3度もありました。しかし、2022年8月初旬にブレーブスへトレードされ、移籍後は28試合の登板で0勝0敗、防御率0.34、救援失敗は1度だけ。これほどまで変わるのか、と思われるくらいの大活躍でした。

エンゼルスに放出されると活躍する謎

ライセル・イグレシアスのように、エンゼルスに所属した選手が他球団へ移籍した途端に花開き、活躍するケースは、実は珍しくありません。

例えば前述のホセ・イグレシアスは2021年シーズン、エンゼルスでは打率2割5分6厘でしたが、9月にレッドソックス移籍後、なんと3割5分6厘の高打率を残しました。同じく前述したロン毛・ロン髭のブランドン・マーシュはフィリーズに移籍してワールドシリーズで活躍しましたが、エンゼルスにいてはワールドシリーズ進出など望むべくもなかったでしょう。

2021年5月にエンゼルスを去った大ベテラン、アルバート・プホルスも、他球団に移籍して成績がアップした1人です。同年、エンゼルスでは24試合の出場で1割9分8厘、ホームラン5本でしたが、移籍したドジャースでの85試合は、打率2割5分4厘、ホームラン12本をマークし、貴重な右の代打として活躍しました。

古巣のセントルイス・カージナルスに戻った2022年シーズンは打率2割7分、ホームラン24本と大活躍。MLB史上4人目の大台となるホームラン通算700号の偉業を成し遂げ、最終的に703本で現役引退。最後の花道を古巣で飾りました。

2021年に先発投手として期待されていた左腕ホセ・キンタナも、なぜかエンゼルスでは不振でした。同年エンゼルスでは0勝3敗、防御率6.75と打ち込まれました。ところが、翌年はパイレーツとカージナルスの2球団で投げて合計32試合に先発登板し、6勝7敗と負けが先行したものの防御率2.93と安定した内容でした。

選手が本来の力さえ出せば、「なおエ」脱却の日は案外近い

元同僚でワールドシリーズ制覇を経験した選手も数人います。大谷さんの元女房役マーティン・マルドナドは、2019年シーズンからアストロズに在籍し、正捕手として2022年の世界一に貢献しました。

他にも、ダニエル・ハドソンがナショナルズ時代の2019年に守護神としてワールドシリーズ制覇に貢献。胴上げ投手にもなったベテラン右腕は、同年のシーズン前にエンゼルスの春季キャンプに招待選手として参加していましたが、メジャー契約はならず、ブルージェイズに移籍。その後、ナショナルズにトレードされ、花開きました。

2019年シーズンに所属していた選手では中継ぎのルイス・ガルシアも他球団で活躍しました。2022年にパドレスの貴重なリリーフとして、64試合に登板。4勝6敗ながら、防御率3.39でチームのポストシーズン進出に貢献しました。

エンゼルスから放出された選手が新天地で大活躍するのは素晴らしいことで、素直に祝福したいところなのですが、同時に、なぜエンゼルスでは活躍できなかったのか、と複雑な気持ちも芽生えます。エンゼルスから放出された選手がなぜ活躍するのか、その答えは正直なところ、分かりません。

しかし、たまたまエンゼルスで活躍できなかっただけで、放出された選手はもともと能力のある選手だったことは明らかです。つまり、エンゼルスにいる選手は能力の高い選手が多く、選手が本来の力さえ出せば、「なおエ」脱却の日は案外近いのではないでしょうか。

理解者マドン監督

さて、今度は大谷さんのボスたちに焦点を当てて見てみましょう。過去5年間で経験した監督は4人。1年目の2018年はマイク・ソーシア監督、2年目はブラッド・オースマス監督、3年目から5年目の途中までジョー・マドン監督、そして、5年目の途中から、フィル・ネビン監督がチームを指揮しています。

監督によって、大谷さんの起用法もさまざまでした。簡単に振り返ると、ソーシア監督の時代は登板前後の1日は準備や体の回復に専念するため休みでした。登板は基本的に中6日で日曜日が中心。「サンデー・ショウヘイ」という言葉も誕生しました。

リハビリ中だった2年目はさておき、4年目の2021年、マドン監督が大谷さんに対する制限を撤廃。登板日にも打者で出場するリアル二刀流を解禁し、休養に充てられていた登板前後も打者で出場する、二刀流フル稼働でシーズンを戦いました。

ただ、実は1年目から大谷さんはフル回転できることを首脳陣にさりげなくアピールしていたそうです。当時のソーシア監督は「登板した翌日、彼はバットを持って、私の前に立って、『たぶん、僕は打てると思うよ』、なんてジョークのような感じで言っていたかな」。チーム方針で欠場とされながらも、大谷さんは打者出場の意欲は示していました。

類い希な唯一無二の才能の持ち主に制限をかけてはいけない

その意欲が叶ったのが4年目、マドン監督が制限から”解放”したことで、二刀流は開花しました。類い希な唯一無二の才能の持ち主に制限をかけてはいけない。これが最優秀監督に3度選ばれている名将の考え方でした。もちろん、大谷さんが手術や故障を乗り越えて、フル稼働の二刀流に耐えられる体作り、メンテナンスを確立させたことが1番の要因です。

それぞれの監督へ、その時々で思うことはあるでしょう。ただ、2022年の6月上旬にチーム低迷によりマドン監督が解任された際には、自責の念と感謝の言葉を述べました。

「全てが監督のせいという訳ではもちろんないですし、むしろ自分自身の調子がこう上がらない。申し訳ないというのはもちろんあるので。お世話になりましたし、本当に感謝の気持ちはあります。どの監督もお世話になった監督はみんな一生懸命やっていましたし、選手自身もそういう監督についていきたいなと思ったんじゃないかなと」

共通して言えることは、過去の監督たちが大谷さんに全幅の信頼を寄せていたことです。前述したように2023年シーズンはフィル・ネビン監督が大谷さんを基本的に中5日で回す意向を示しています。これもエースへの信頼の表れと言えるでしょう。

監督からの期待に応えるのが選手。二刀流でフル稼働している大谷さんの気持ちが通じ、チームがポストシーズンに進出する。これこそが、今までの監督を含めて、信頼を寄せてくれた指揮官たちへの恩返しとなるでしょう。

欠かせないパートナー一平さん

理解者と言えば、大谷さんを陰で支える存在として、皆さんもお馴染みの水原一平通訳は外せません。

日本ハム時代に外国人選手の通訳を務め、大谷さんと同僚でした。今ではエンゼルスのチームメイトや監督、コーチと大谷さんの意思疎通だけでなく、日々の練習パートナーとしても欠かせない存在です。投打の調整で、投球や打撃フォームの映像やチェック点を記録。水原通訳が二刀流の成功において重要な役割を担っています。

2021年11月15日、大谷さんは日本記者クラブでシーズンを振り返る会見を行いました。その中で、「お世話になったのはやっぱり一平さんじゃないですかね。常に一緒に仕事もしてますし。それはその通りじゃないかなと思います」と感謝の気持ちを述べました。

言葉通り、さまざまな面でサポートしてきた水原通訳は、大谷さんが米国で車の免許を取得するまで、代わりに運転することも多かったようです。

何事にも一生懸命な姿は球団、ファンから注目を浴び、球団公式インスタグラムなどのSNSに度々、登場するようにもなりました。本拠地エンゼルスタジアムでは「We Love Ippei」のボードまで出現し、敵地でも水原一平ファンが現れるほどの人気ぶりです。

大谷翔平から通訳・水谷さんへイキなプレゼント

2018年、ア・リーグの新人王に輝いた大谷さんは、水原通訳の右腕を左手でつかんで高く掲げ、満面の笑みで写真撮影を行いました。水原通訳は少し恥ずかしかったようですが、感謝と喜びを一緒に分かち合っていました。その年のシーズンオフには、結婚した水原通訳に大谷さんがサプライズの新婚旅行をプレゼントしたそうです。

故障など紆余曲折を乗り越えて、大谷さんを最も近くで支えてきた水原通訳ですが、4年目の2021年に思わぬ大役が回ってきました。日本人初のホームランダービーに出場した大谷さんが、捕手役として水原通訳を指名したのです。オールスター用に捕手の防具を着用した水原通訳が球団のインスタグラムで紹介され、大きな話題を呼びました。

今や、大谷さんに欠かせない注目度抜群の存在ですが、周囲の喧騒をよそにパートナーとしての心構えをこう語っています。

「第一には野球に集中してもらえるような環境を作るというか、整えるというか。まずはそこですね。邪魔にならないようにしています(笑)」

2022年シーズンで、ヤンキースのジャッジと大谷さんのMVPガチンコ対決が見られましたが、水原通訳が夢見ているのが、「トラウトとのMVP争いが見たいです」。同僚でMLBの現役最高選手トラウトとのMVP争い。仮にチームメイトでMVPを競うようなことがあれば、さすがにエンゼルスも「なおエ」にはならないはずです。

『もっと知りたい! 大谷翔平: SHO-TIME観戦ガイド』 (小学館新書)

福島 良一

2023年6月1日

990円

192ページ

ISBN:

978-4098254507

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2023年3月のWBCで日本を世界一に導き
大会MVPを獲得する大車輪の活躍をした大谷翔平。

2023年シーズンのMLBも開幕から投打に好調な滑り出しを見せて、
2021年シーズン以来2度目のア・リーグMVP獲得にも期待がかかる。

規格外の活躍をもっと楽しむために知っておきたい
更新の可能性のある歴史的な記録とMLBの強力なライバルたち。

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