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「この子の幸せのためだから…」5歳児にサイン・コサインを教える呆れた高学歴親。「バランス悪い脳に悩む子供たち」

集英社オンライン / 2023年6月16日 12時1分

高学歴の親たちは「学歴偏重主義という病」に冒されていると考えることができるという。これは自身が高学歴ではない親にも当てはまり、どちらも子育てに悩んでいるケースが多い。そういった親へのアドバイスを『高学歴親という病 』(講談社+α新書) から、一部抜粋・再構成してお届けする。

5歳児にサイン・コサインを学ばせる高学歴親

いまの時代、高学歴親ほど、子どもに早期教育を施そうとします。ひとりっ子の場合などなおさら、「絶対に失敗できない」とばかりに、小さいころから幼児教室に通わせたりします。

たとえば、3歳の子どもに九九を教える幼稚園がありました。毎日唱えさせると、本当に言えるようになるのです。

「うちの子はサイン・コサインでつまずいちゃって」



そう困ったように話すお母さんの息子は5歳だそうです。するともうひとりの方は「二次関数で、もうダメよ」と言うのです。本当に二次関数?と疑いたくなると思いますが現実です。

子どもたちは内容を理解せず単に暗記しているだけ

5歳のサイン・コサインも二次関数も、3歳の九九も、私に言わせればほとんど意味がありません。子どもたちは内容を理解せず単に暗記しているだけです。親御さんたちも「何のためにこれをやるか」と振り返れば、自ずと答えが出るはずなのですが、そこに気づきません。

ひとりのお母さんは「この子の幸せのためにやっている」と答えました。わが子に良かれと思ってやっているのです。

「将来困らないように今からやっている。それの何が悪いの?」

そう考えてしまうのです。しかしそれでは、子ども時代の「今」が人生最高点に達する子を育てることにならないでしょうか。

早期教育に精を出す高学歴親の方々と、私とで一致する意見もあります。それは「子どもは可能性のかたまりだ」と考えている点です。

ただし、方法論が違います。わかりやすく言うと、そういう親御さんたちは「脳を育てる順番」を完全に間違えています。この「順番」を間違わなければ、子どもの可能性を引き出せるはずなのに。

習い事よりも大切なことがある

「からだの脳」が育つよりも先に、「おりこうさんの脳」を育ててしまう。そうすると、幼少期は親の言うことをよく聞き優秀だった子どもが、小学校高学年以降に、不登校や不安障害など、こころの問題を引き起こすリスクが高まります。

脳育ての順番を軽視すると痛い目に遭う、これは事実です。

「からだの脳」がしっかりとした土台を築き、その上に「おりこうさんの脳」、「こころの脳」が乗るのがよい脳育ちのイメージです。「からだの脳」が貧弱に育ってしまうと、後になって「おりこうさんの脳」や「こころの脳」をいくら積んでも、バランスを崩して倒れてしまう危険性があります。

からだ脳がおりこうさんの脳に比べて小さいと、崩れて落ちてしまう

たとえば、二階がリビングの戸建ての家に住むという前提で考えてみてください。

皆さんが求めているのは、リビングに置く素敵なソファであったり、大画面テレビだとしましょう。それらをほしいと思うのが間違いだとは思いませんが、一階(=からだの脳)の建物が二階(=おりこうさんの脳)に比べてあまりに小さいと、二階にいろいろなものを詰め込んでしまうと崩れ落ちます。もしかしたら詰め込まなくても、ほんの小さな地震で家は崩壊してしまうかもしれません。大震災が来たら、家族全員がつぶされてしまいます。

一階、つまりからだの脳がちゃんと出来上がっていれば、小学生の子どもは夜になったら寝て、朝になったら起きて「お腹すいた!」と言って朝ごはんを食べる。満足して幸せな気分になって「行ってきます!」と言って学校に行きます。

一見、普通に毎朝起きて学校に毎日行っている子どもであっても、実は朝はまだ半分寝ている子どもを無理やり起こしたり、空腹でない子どもにごはんを食べさせようとしている家庭のほうが圧倒的に多いことが小学校の調査からわかっています。

バランスを欠いた脳になっていないか

もしかして皆さんは、からだの脳(一階)育てがうまくいっていない暮らしのなかで、習い事やスポーツ(二階)を無理にやらせてはいないでしょうか。もちろん子どもがやりたいと言えばやらせたいのは親心です。能力を伸ばすことに力を尽くすことは構わないのですが、見落としてほしくないのが「バランスを欠いた脳になっていないか」です。

親御さんに「どんな子を育てたいですか」という話を聞くと、「とにかく丈夫であればいい」と言う人はほとんどいません。規則的に呼吸をして、心拍が速すぎもせず遅すぎもせず、筋力がちゃんとあって、危険から身を守れるぐらいの運動神経がある。夜になったらコテッと寝て、朝になったらパカッと起きて、いつもニコニコ元気いっぱい。そんな子がいいです、と言う親御さんに出会ったことがありません。

しかし、そこが一番大事なのです。そこを土台にすべてが作られるのですから。

私に言わせれば、「どんな子を育てたいですか」に対する答えは以下のようになります。

その1 「からだの脳」時代は「原始人のような子」
その2 「おりこうさんの脳」時代は「学校の勉強以外の知識欲がある子」
その3 「こころの脳」時代は「相手のこころを読める子」

『高学歴親という病 』(講談社+α新書)

成田奈緒子

2023年1月20日

990円

192ページ

ISBN:

978-4065302125

ノーベル賞科学者山中伸弥氏、推薦
「子育ては『心配』を『信頼』に変える旅――同級生の成田先生の言葉が心に響きます。
僕は成田先生を医師、小児脳科学者、そして人として、とても信頼しています」

山中伸弥氏との共著『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』が
ベストセラーになった子育ての第一人者・成田奈緒子医師、待望の続編。

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