日本中のロードサイドに、または繁華街のビルの屋上に、まるで「日本の原風景」然として点在するバッティングセンター。野球をプレイしたことがなくても、もっと言えば野球のルールさえ知らなくても、一度は足を運んだことがある人は多いと思う。
だが、その歴史や成り立ちに関しては、驚くほど言及されてこなかった。日本におけるバッティングセンターの1号店がどこなのか? そんな基本的な情報さえ知られていない。メディアで取り上げられる際も、「ホームランを打っているおじいちゃん」などお客さんばかりが注目されてきた。
「じゃあ、自分はよくバッティングセンターで草野球の練習をしているから、取材もしてみよう」
そう思い立ち、筆者・カルロス矢吹は、日本のバッティングセンターに関する取材を続け、2月に『日本バッティングセンター考』(双葉社)というタイトルの書籍を上梓した。
本稿では、その中からバッティングセンターという娯楽施設が日本になぜ定着したのか? その歴史を駆け足ながら振り返ってみようと思う。
そもそも、日本以外にもバッティングセンターはあるのか? 答えはイエス。 主に日米韓の三か国にあり、それぞれ特徴が違う。米国はグラウンドにピッチングマシンが置かれ、打撃練習場のようになっており、運動施設の要素が大きい。反対に韓国は繁華街のビルやゲームセンターの片隅に設置され、至近距離から高速でボールが飛び出てくるようになっていて、娯楽施設に振り切っている。日本はその中間で、野球の練習にもなるけれど、アミューズメントにもなっていることが特徴として挙げられる。