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47.2歳が人生で“一番不幸”と感じる年齢。自分の可能性は消え、増える「息子介護」…超高齢化社会に生きる40代に訪れる“ミッドライフクライシス”とは

集英社オンライン / 2023年7月11日 17時1分

人生後半戦に突入したともいえる40代には、仕事以外でも問題が山積みになってくるそうだ。40代になると新たに訪れる問題を『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』 (ワニブックスPLUS新書)から一部抜粋・再構成してお届けする。

#1

「喪失感」が身近に。人生でいちばん不幸な「47・2歳」

絶望の淵に立たされた男の年齢は、47歳。人生で「一番不幸」と感じる年齢とされる47・2歳(米ダートマス大学研究より)のブラッド・スローンです。

映画〝Brad'sStatus〟(邦題『47歳人生のステータス』)は2017年9月に米国で公開され、主演は『ナイト・ミュージアム』シリーズのベン・スティラー、脚本は『スクール・オブ・ロック』などを手がけたマイク・ホワイト監督、制作は社会問題に切り込む作品を数多く手がけるブラッド・ピット率いる「プランBエンターテインメント」です。



部下の「この仕事をしてると気が滅入る」発言で、完全に自信を喪失したブラッドですが、息子トロイと大学受験のためにボストンの志望校をまわる小旅行に出かけたことで、少しずつ心に変化が生じ、最後には「人生で本当に大切なもの」に気づきます。『47歳人生のステータス』が描くのは、まさに「40歳で何者にもなれなかったぼくら」の葛藤であり、不安であり、他人と比較することのバカバカしさです。

40〜50歳の人生の折り返し地点の曖昧な不安は、「ミッドライフクライシス」と呼ばれ、カナダの心理学者エリオット・ジャックが1965年に提唱した概念です。

中年期になると職場での立ち位置の変化や体力の低下に加え、恩師の訃報が届いたり、同級生が亡くなったり、内的にも外的にもネガティブな経験が増え、人生の時間的展望が微妙に変化します。「喪失感」が身近になり「可能性」という3文字が消えていくのです。

でも、本当に「40歳を超えて新しい変化は訪れない」のでしょうか?

でも、本当に「人生後半戦に、可能性はない」のでしょうか?

ダメダメ中年の典型のようなブラッドが、最後に「人生で本当に大切なもの」に気づいたのはなぜなのでしょうか?

新しい変化はまず訪れない40歳だからこそ、自らアクションを

答えはシンプルです。ブラッドは「具体的に動いた」。心にブレーキをかけずにとりあえず動きました。トロイと小旅行に出かけ、色々な人に会ったことで、ありのままの自分と向き合うことに成功し、ミッドライフクライシスから脱したのです。

他人は常に自分を映し出す鏡です。

日常の人間関係だと気づけませんが、非日常の〝鏡〟の前に立つと「あるがままの私」が映し出されます。

ブラッドはトロイの友人たちと出会い、飲み明かし、虚勢をはって嫌われ、「社会的評価という曇りガラス越しに人を見ている自分」を鏡にみました。一方で、成功した大学の親友たちに連絡をし、実際に会い、完全無敵のスーパースターに見えた友人たちの「負」の側面を知り、反面教師的に自分の信念を思い出します。

そして、映画の最後に息子のトロイがブラッドに言った言葉さえあれば、「人生思い通りにならなかったけど、結構おもしろかった」と笑うことができる(なんと言ったかはネタバレになるのでここでは書きません)。他人との比較で生まれる嫉妬心は、心にするどい痛みをもたらしますが、具体的に動けば、「何か」が変わるのです。

人生には放っておいても勝手に起こる出来事と、自分から仕掛けて起こる出来事があります。新しい変化はまず訪れない40歳だからこそ、自分からアクションを起こし、自分が仕掛けた出来事でジタバタしてください。

「親の老い」がくる

しかし一方で、40歳を過ぎると自分ではどうすることもできない、「思いもよらぬ出来事」が次々と押し寄せ、変化せざるをえない状況に遭遇するのも、また事実です。

例えば、親の変化です。「親に何かあったら……」というのは、私たち世代共通の心配事ですが、「親が老いる」という当たり前が、どのような形で「私」に影響を及ぼすかを想像するのは、とてもとても難しい。

「追い込まれるから必死にやるんでしょうに」──。

以前、私が介護問題について書いたコラムに、こんなコメントをくださった方がいました。その言葉の真意は、自分が「言い訳できない」状況に追い込まれて初めてわかります。自分のことだけ考えて生きていた時代が、妙に懐かしく、それが、実は特別なことだったと身に沁みるのです。

いつだって親の〝変化〟は突然であり、ひとつの大きな変化をきっかけに、次々と予期せぬ変化が起こり、想定があっという間に崩壊します。しかも、「老いる」プロセスは人によりまったく異なるし、日によってもオン・オフがあり、「あれ?問題ないじゃん」と安堵する日がある一方で、目を、耳を、疑うような絶望の現場に直面するのです。

男性は65・3%、女性は49・3%、ビジネスケアラーは約346万人

「絶望の現場」を繰り返し目の当たりにすると、

・転んで大腿骨を折ってしまったら?
・道に迷って、帰れなくなってしまったら?
・間違って部屋から出てしまったら?

といった不安が容赦なく襲いかかり、やがて「ひとり暮らしを続けるのは無理」という確信に至り、「介護離職」という言葉が頭をよぎる。

「会社を辞めたら最後」「介護離職は、自分の首を絞めることになる」「親のためという考え方は禁物」「公共のサービスをフルに使って、辞めてはダメ!」と、どんなに他人にたしなめられても、自分でも整理し切れない正体不明の感情が押し寄せ、出口の見えない孤独な回廊に足がすくむのです。

介護を理由に離職する人は毎年10万人程度で、約8割が女性です。一方で、働きながら介護をしている人は約346万人。男女別の有業率は、男性は65・3%、女性は49・3%です。いわゆる「ビジネスケアラー(働きながら介護している人)」は、圧倒的に男性で占しめられています。これには隠れ介護者が含まれていない可能性も高いので、実際の数字はもっと多いと考えたほうがいいかもしれません。

最近は「息子介護」という言葉も使われるようになりました。共働き世帯が増え、妻は妻で自分の親の介護がある。独身男性も増えているので、結果的に息子が親の面倒をみるしかない。

しかし、会社と介護の距離は半端なく遠いのです。社員の介護問題と真剣に向き合う企業も徐々に増えてきましたが、多くの企業では介護に冷たい。50歳以上には「できればさっさとお引き取り願いたい」が本音なので、冷たい企業が圧倒的なのです。

誰も教えてくれない「年をとる」意味

それでも、どんな状況になろうとも「自分の人生をしっかり生きる」と自分に言い聞かせるのをやめてはいけません。私も親の変化に翻弄され続けているひとりなので、何度も何度も「自分の人生をしっかり生きなきゃダメ」という言葉を言い続けています。

親の老いはどうやっても止められません。しかし、自分自身の振る舞いはコントロールできます。案外、日本の高齢者福祉は充実しているので、それを最大限に使い、周りの力を借りることが肝心です。

例えば、社会的支援には、医療保険を利用するものと、介護保険を利用するものがあり、さまざまな使い方ができます(併用はできませんが)。地方自治体の高齢福祉課に相談すると、ものすごく親切にしてくれますし、知人やご近所さんも介護問題には手を貸してくれたりもします。

超高齢社会のいい点は、誰もが例外なく老いた親の問題を抱えているってこと。若い人たちも祖父母の介護をしている親を見ているので、SOSを出せば快く助けてくれます。私自身、さまざまなシーンで見知らぬ若者や同年代の人たちに助けてもらいました。それに、親は最後まで子に何かを教えようとするのですよね。老いるとは何か。人が最後まで手放したくないものは何か。誰も教えてくれない「年をとる」意味をさまざまな形で教えてくれます。

介護問題は冷たい雨が自分の頭上に落ちてこない限り、その大変さはわかりません。

なので、そのときが来たら、今ここに書いたことを読み返してください。

『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』
(ワニブックスPLUS新書)

河合薫

2023年6月8日

1375円(税込)

‎328ページ

ISBN:

978-4847066931

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サラリーマン無理ゲー社会における
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