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〈実話・ブラック社畜の生活〉プレゼンで1カ月休みなし、山奥のロケ撮影で深夜3時起きも手取り16万。「何のために生きてるんですか?」に社畜の答えとは

集英社オンライン / 2023年6月30日 18時1分

広告業界でデザイナーとして勤務し味わった過酷な労働環をYouTbeで配信している玄田小鉄氏。自らを「自分は会社に雇われた奴隷」「社畜デザイナー」と表現するほど過酷な業務をしている彼が見つけた乗り越え方を『ブラック企業で生き抜く社畜を見守る本』(ワニブックス)より一部抜粋・再構成してお届けする。

誰かの心を動かす仕事がしたい

僕は社畜として激務の中で働き、その暮らしをYouTubeで公開しています。するとよくコメントで「何のために生きてるんですか?」や「なんで辞めないんですか?」という声をたくさんいただきます。

それの答えとしては、「この仕事が好きだから」と返してはいたのですが、それでもきっと視聴者からすると、好きでつづけられるような状況じゃないように見えているんだと思います。



僕の職場は「好きだから」だけでは片付けられないほど理不尽で過酷な労働環境にあるようです。広告業界はどこもブラックで、知り合いも1カ月休みなく働いているというのをよく聞くので、それに比べれば僕はまだマシだと思って働いていました。

でもどれだけつらくてもデザイナーとして働きつづけられるのにはいくつか理由があります。

辛くても働ける最大の理由

最も大きな理由は、「人の心を動かすような仕事がしたい」からです。これが根源的な思いで、僕を突き動かしています。

感動したり、喜んだり、ワクワクしたりと、人の感情が動くことはとても尊く、仕事を通して実現できているのはとても嬉しいです。

僕自身も幼少期から学生時代に見た広告で心を動かされ、大きな憧れを感じていました。いつか僕も人の心を動かすような広告を手掛けたい。

そう思って大学ではデザインを学び、デザイン事務所へと就職しました。

でも今となってみれば純粋にエンターテインメントを提供している会社に行った方がいいのかもと思う時もあります。

広告業界で働くことはできていますが、「人の心を動かす」のはとても難しいです。

基本的に広告はクライアントの課題解決を行います。生活者に寄り添った広告はごく稀で、ほとんどがクライアントに寄り添い、クライアントの商品が売れることを切望しながら作ります。

そのなかでも僕たちクリエイターはクライアントの課題を解決しながら生活者にもしっかりと届く広告を手掛けます。難易度がとても高い仕事ですが、その難しさも仕事にのめり込んでしまう要因なのかもしれません。

己が生き方に没頭する、自分の生き方が好きだから。

学生時代の僕は、大手広告代理店に入社して、誰もが知る広告を手掛けて、華やかな生活を送ることに憧れていました。

しかし、現実はデザイン事務所に入社し、手取り16万、6畳1間にひとり、残業だらけ土日休みほぼなし。理想とはかけ離れた暮らしです。

正直、デザイナーとしての自分に限界を感じていた時もあります。

かつて理想として憧れた生活を送ることはもうできません。周囲で優秀な人は新卒から広告代理店に入社し、日々力をつけていっています。そんな人たちとの実力の差を感じながら日々焦り、仕事に追われ、憔悴していく毎日でした。

ただ、その暮らしも長くつづけているとだんだんと慣れてきました。

そして、気持ち的にも前向きになることができ、その暮らしを打開すべく個人での創作活動を数多く行うようになりました。広告賞に応募し、個人でのコンテンツ制作など精力的に活動していました。

最初はなかなか結果につながらず、周囲に自主制作の話しても「そんなの何の意味があるの?」と一蹴され、無駄な努力をしている奴と思われることも多々ありました。なので、本当に信頼している人にしか、個人での創作活動のことは話しませんでした。そして、空いた時間に作業をし、時には睡眠時間を削って寝ずに作品を作っていました。

その中でYouTubeの動画投稿にも手をつけ、自分の暮らしを公開するという狂った行為をし始めました。これも周囲には一切何も話さずひとり黙々と作りつづけていました。

内容はご存知の通り、僕の社畜の暮らしです。

始めてしばらくすると運良く動画が見られるようになっていきました。

今までもがきながら作っている広告や自主制作の作品も誰にも認知されず、価値のないものとされているのがつらかったです。

このブラックな労働環境を楽しんでやる

でもそんな終わっている暮らしを世の中の誰かが見てくれて、何かを感じてくれる。

それは必ずしも喜びというポジティブな感情ではないかもしれませんが、自分の作った動画で感情を動かしてくれるのはとても嬉しかったです。

その経験から、だんだんと自分の感覚に変化が現れました。
自分の社畜な暮らしが周囲から認められたような気持ちになり、自分の生き方を肯定的に捉えられるようになりました。

それに価値観も広がり、いい暮らしをすることや、広告代理店に行くことがすべてじゃない。今の暮らしでも十分に楽しみながら生きることはできる。そう思えるようになりました。

上を目指してもキリがありません。自分で自分を認めてあげる心がなければいつまでも苦しいままです。

YouTubeを通して、自分の今の暮らしを認められるようになりました。そして、自分の今の生き方がもっと好きになり、むしろこのブラックな労働環境を楽しんでやろうと思えるようになりました。

YouTubeの最初の頃は、深夜に代理店から電話で叩き起こされた腹いせに動画撮影しながら働いたり、上司の理不尽な言動などを記録したりしていました。何かの記録用として残していたというのもありますが、こうやって多くの人に見てもらえるようになってからは、広告業界のブラックな労働環境が楽しいです。

そう思えてからは、プレゼンで1カ月休みなく働いても前向きに取り組めるようになり、山奥でのロケ撮影で深夜3時起きするのも遠足のような感覚になってきました。この数年での大きな変化です。

これからも仕事で理不尽なことは大量に発生するかもしれませんが、どんな困難も楽しみながら生きていこうと思います。

『ブラック企業で生き抜く社畜を見守る本 』(ワニブックス)

玄田小鉄

2023年5月31日

1430円(税込)

‎単行本(ソフトカバー):192ページ

ISBN:

978-4847073175

手取り16万で週7勤務、当然のように残業代なし、婚活も勝算なし……

動画をアップする度に「早く逃げて!」「ご自愛ください……」
「笑ったらダメと思いつつ笑っちゃう」の声多数!!

「ブラック企業で生き抜く社畜を見守るチャンネル」にて5万人以上に見守られている“社畜系YouTuber”が、動画では黒すぎて言えなかったことをすべて吐き出す漆黒のブラックエンターテイメント(※実話です)。

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