まずは「電話」に関する新機能について見ていこう。当たり前のことだが、iPhoneはスマートフォン、つまり電話である。
そう考えると、メインアプリであるはずの標準「電話」アプリのユーザーインターフェースは、ほかのアプリに比べると、これまで少し垢抜けない印象だった。
iOS 17からは、着信時に表示される画面に写真やミー文字を配置したり、フォントの種類や色を選んだりと、パーソナライゼーションが楽しめるようになる。
集英社オンライン / 2023年6月21日 12時1分
今年も筆者はAppleの世界開発者会議「WWDC」を、米クパチーノにある本社「Apple Park」で現地取材した。会期中はApple初の空間コンピュータ「Apple Vision Pro」の話題で持ちきりだったが、今秋に正式リリースを控える「iOS 17」にも期待すべき新機能がいくつかある。リリース前に押さえておきたい注目機能を、いくつかピックアップして報告しよう。
まずは「電話」に関する新機能について見ていこう。当たり前のことだが、iPhoneはスマートフォン、つまり電話である。
そう考えると、メインアプリであるはずの標準「電話」アプリのユーザーインターフェースは、ほかのアプリに比べると、これまで少し垢抜けない印象だった。
「電話」アプリの着信画面を自由にカスタマイズできるようになる
また見逃せないのが、「電話」アプリの新機能「ライブ留守番電話(Live Voicemail)」だ。これは、誰かが留守番電話を残すときに、リアルタイムでメッセージがテキスト化されるというもの。WWDCの基調講演でも、発表時に客席からどよめきが起こった。
たとえば会議中に着信があり、相手が留守電にメッセージを記録していたら、その場で書き起こされているテキストを読んで、対応するかどうかを決めることができる。書き起こされたテキストは音声メッセージとともに保存されるので、あとから確認して対応方法を決めるといった使い方も考えられる。
留守番電話に相手が収録しているメッセージを自動で書き起こす「ライブ留守番電話」機能が加わる
Appleは2023年5月、iOS 17のアップデートよりも先に、iOS 16から提供予定のアクセシビリティに関わる複数の新機能を発表している。その中に「Personal Voice」という、AIによる機械学習を活用するユニークな機能がある。
Personal Voiceは、ユーザーがiPhoneに向かって15分間自分の声を録音すると、まるで自分が話しているような声を自動で生成してくれる機能だ。
先述のライブ留守番電話然り、Open AIの「ChatGPT」やGoogleの「Bard」で話題のジェネレーティブAI(生成AI)に関わる機能が、iPhoneにもデバイス上の処理だけで安全・安心かつ迅速に使える形で、続々と組み込まれつつある。
ユーザーの声を録音して「そっくりな声」を自動生成するiOSのアクセシビリティの新機能「Personal Voice」
ジェネレーティブAIに対してAppleは、「ユーザーに最高のメリットをもたらすもの」でない限り、安全性やプライバシーの面でリスクを抱えたまま世に送り出すことをよしとしていない。
たとえば、クラウドで膨大な計算処理を必要とする機能については、ユーザーのプライバシーを優先する理由から、これまでむやみに自社プロダクトに組み込んでこなかった。
その代わりに、iPhoneなどのデバイスに組み込んで、ユーザーが迷うことなく安心して使えるレベルにまで練り上げたものは、OSの新機能として積極的に組み込んでいる。たとえば、機械学習言語モデル「Transformer」を用いたテキストタイピングのサポート機能(自動修正と音声入力)などが、それにあたる。
これらの機能が、iOS 17でさらに賢くなるようだ。予測変換や文法・スペルミスの修正などの機能が、よりいっそう精度高く実用的に使えるようになる。最初は英語から対応が始まるが、日本語への拡大も期待できる。
また、AirDropのテクノロジーをベースとする「NameDrop」という新機能も追加される。
これは、iOS 17をインストールしたiPhone同士、またはwatchOS 10をインストールしたApple Watchを近づけるだけで、デバイスに保存している連絡先情報やコンテンツを瞬時にシェアできる機能だ。従来のAirDropでも連絡先情報をワイヤレスで送信できたが、それがさらに簡単に実現できるようになる。
なおNameDropでは、自分のプライベートな電話番号やメールアドレスなどを相手に渡したくない場合、相手によって渡す情報を選び分けることも可能だ。
iPhone同士、またはiPhoneとApple Watchを近づけて連絡先をワイヤレスで送信できる「NameDrop」
次に「ヘルスケアの充実」に関して見ていこう。iOS 17におけるヘルスケア機能のアップデートは、実はwatchOS 10の進化と密接につながっている。
2015年にApple Watchとともに誕生したwatchOSも、遂に「10」まで進化した。これを機にOSのデザインも変更されるが、その前にヘルスケア関連の機能がどう変わるのか説明したい。
watchOS 10からは、iOS 17の標準「ヘルスケア」アプリと連係して、心の健康をチェックできるようになる。watchOS 8から搭載された「マインドフルネス」アプリに、「State of Mind(=心の健康)」という新機能が加わるのだ。
ユーザーが心の健康をカジュアルにチェックできる「State of Mind」機能
「State of Mind」を起動し、筐体のDigital Crownを回すと、画面上に「Neutral(平常心)」「Slightly Pleasant(少し愉しい)」「Pleasant(愉しい)」といった感情を表す言葉と色、シンボルの表示が切り替わる。
そして、そのときの気分に適した表示を選んで記録すると、それがiOSの「ヘルスケア」アプリに気分の変化が蓄積されていく。このとき、「家族」「友だち」「仕事」など、その気分を抱いた理由を一緒にタグ付けして残すことも可能だ。
また、「ヘルスケア」アプリではユーザーの睡眠やエクササイズといった運動習慣の記録と「心の健康」を紐づけて表示する機能が備わる。
iPhone、またはApple Watchから心の健康状態を記録する
「ヘルスケア」アプリ側から、ユーザーの心の健康について改善を促すよう働きかけることはないが、クリニックでよく使われる「うつ」や不安症の検査にアプリからアクセスしたり、ユーザーが自分の心の健康に関するリスクレベルを確認したりするための新しいツールが、今後用意されるという。
周囲に知られることなく、Apple Watchを使って心と身体のケアができるようになれば、多くのユーザーに歓迎されそうだ。
「ヘルスケア」アプリは、iPadOS 17によってiPadでも利用できるようになる
最後に少しだけ、watchOS 10のユーザーインターフェースの進化について触れておきたい。
現在iOS/iPadOSのウィジェット機能として提供されている「スマートスタック」が、watchOS 10にも追加される。
Apple Watchのデジタルクラウンを回すと、文字盤の上に「天気」「カレンダー」「株価情報」「ウォレット」などのウィジェットが表示され、ユーザーが必要とする情報がすぐに見られようになる。
watchOS 10に追加される「スマートスタック」機能
筆者の場合、Apple Watchの文字盤にたくさんの情報を表示しておきたいので、ショートカットの役割を担う「コンプリケーション」の数が多い文字盤をつい選んでしまう。
このスマートスタックが使えるようになれば、普段はよりデザイン性に富んだシンプルな文字盤や、「ポートレート」のように好きな写真を表示する文字盤を、より積極的に選びたくなるかもしれない。
本稿で紹介した機能のほかにも、iPhoneを横向きで充電しているときにフルスクリーンで時計や写真が表示される「スタンバイ」や「メッセージ」アプリの進化など、iOS 17には実に多くの新機能が追加される。
iOS 17の主な新機能。日本語版の公式プレビューページも公開されている(https://www.apple.com/jp/ios/ios-17-preview/)
iOS 17とwathcOS 10を正式リリース前に試せるパブリックベータ版は、来月7月に提供開始予定。Appleの最新テクノロジーをひと足先に試したい人は、ぜひインストールしてみはいかがだろうか。
文/山本敦
写真/apple.com
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