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【漫画あり】「漫画家は孤独。何のために描いているんだろうと思うこともある」––「メイちゃんの執事」シリーズ・宮城理子が32年間漫画を描き続けられた理由

集英社オンライン / 2023年6月23日 12時1分

大ヒット漫画『メイちゃんの執事』の続編として、2014年から連載されていた『メイちゃんの執事DX』が6月5日発売の「マーガレット」13号にてフィナーレを迎えた。本日6月23日には、最終巻となるコミックス20巻が発売。同シリーズの作者・宮城理子氏に、「マーガレット」デビューのきっかけや今後の展望について聞いた。

「ちょっと違う要素が入っている枠に滑り込めれば」と思った

––––「マーガレット」には、大学時代に投稿を始めたそうですね。

そうですね。実は、集英社の少女漫画をそれまでほとんど読んでいなかったんですよ。別の物語があって、その流れの中にラブロマンスが入ってくるような漫画は好きで読んでいたんですが、学校に通っている男の子と女の子の恋愛が中心の作品自体、ほぼ読んでいなくて。じゃあなぜ「マーガレット」に投稿したんだ?という話なんですが(笑)。



自分が描ける絵柄が少年誌向けのものではなかったのと、小学館の雑誌に投稿していた友だちに「理子ちゃんは集英社の雑誌……『マーガレット』に投稿ね」と決め打ちで言われまして(笑)。そこからマーガレットコミックスを借りて読みました。

––––読んでみて、どう思いましたか?

槇村さとる先生や岩舘真理子先生の名作を貸してもらったんですが、どれもすごくおもしろかったです。ただ自分が描けるかというと、そうは思えず。案の定、投稿では落ち続けました。

でも諦めかけたときに、当時あった「マーガット」と「別マ」の合同の賞に出してみたら、デビューさせてもらえた、という感じです。

––––そこからは順調に?

いえいえ。27〜8歳の頃、当時の編集長から「君の今までの絵柄とストーリーでは、これ以上連載枠はとれない」と言われまして…。

いろんな人に相談したのですが、「別の雑誌に移ったら」と言う人が多い中で、「もっと振り切って何かやってみたら?」と言ってくれる人がいて。振り切るってどういうことかな?と思いながら、先ほどの「理子ちゃんは集英社で」と言ってくれた友だちに話したら、「『少女コミック』ではエロが流行っているんだけど、『マーガレット』にはないから狙い目だと思うよ」と。

それでいろいろと研究をして、ちょいエロな『花になれっ!』という漫画を描きました。

『花になれっ!』より。花の香りを放つ「花人」のももが、蘭丸を一途に想いながら、男性たちを次々に惑わせてしまう様子を描く

『花になれっ!』はエロではあるんですが、自分の中で「『マーガレット』では、ここまでは描かない」という基準は設けています(笑)。

––––“マーガレット的”なものも意識した、ということでしょうか。

ちょいエロなので、“マーガレット的”なものは意識していないです(笑)。“マーガレット的”なものは、昔から「マーガレット」を読んできたうえで描いている作家さんたちには敵わないです。本当にみなさんうまいので。

––––“マーガレット的”なものを言葉にすると、どうなりますか?

「別マ」は王道の学園ラブストーリーで確立していると思うんですが、「マーガレット」にはちょっと違う要素が入っている漫画も昔からありましたよね。私はその枠に滑り込めれば、と。

あと月に2回出るというペースの速さもあって、いろんなことにチャレンジしやすいのかなと思いました。

––––やはり月2回という形態は、連載するうえでの影響が大きいのですね。このインタビューのシリーズでも、そのことに言及する作家さんが多くいらっしゃいました。

大きいと思います。私は2〜3年前に月1回・31ページの連載に変えていただいたんですが、こんなに作り方が違うんだと思いました。

ページ数が多いとストーリーの展開のさせ方も違うし、「間」も入れやすい。一方で月2回だと、ページ数も少ないので間は入れにくいし、すぐに次回への引きをつくらなきゃいけないんです。だからこそ、読者さんの反応を見て、方向転換がしやすいというメリットもあるんですよね。

それとデジタルで読むには、すぐに次回への引きがくるような、テンポの速い漫画のほうがサクサク読んでもらえそうな気がするので、どちらにもいいところがあるなと思います

「縦スクロール・フルカラーでセルフリメイクがしたい」

——今デジタルのお話が出ましたが、読書環境も作画環境も一気にデジタル化が進みました。この変化をどう捉えていらっしゃいますか?

私もコロナ禍以降、半ば強制的に作画環境をデジタル化することになりました。今はネームからすべてiPadで描いています。

デジタルでしかできないこともいろいろ試せたし、アシスタントさんたちがご自宅で、自分のペースで作業できるようになったのもよかったです。

——漫画の形式にも、縦スクロールのような新しいものが出てきましたね。

すごく楽しいな、と思います。いろんな形式で表現できるようになってきたのは、漫画にとっていいことですよね。

もちろん今までのモノクロのコマ割りされた紙の漫画もしっかり残ると思うのですが、どんどん新しい形式も取り入れていかないと、漫画という文化自体がなくなってしまうかもしれない、と思うようになって。

最近はドラマやアニメのような「映像」「動画」しか観ないという人も増えていますよね。ドラマ化やアニメ化されて、それがおもしろければ原作漫画も読むというように、漫画の入り口も動画の場合が多い。

動画は「ちょっと観てみて」と人にも勧めやすいですが、世代によっては今後「この漫画読んでみて」と勧めるのが難しくなるのかもしれないと思っています。

——『メイちゃんの執事』も、ドラマ化されたことで原作を読んだ方も多いですよね。きっかけがなければ、能動的に「読む」という行為自体にハードルを感じる人もいるかもしれません。

その中で、縦スクロール・フルカラーの作品が、漫画の形式のひとつとして皆さんに受け入れやすいのだとしたら、どんどん取り入れていかないと、と。

これは私の夢なんですけど……セルフリメイクを縦スクロール、オールカラーのような形態でやりたくて。物語も今の時代に沿ったものに再編集して、リリースしてみたいんです。

——今ある原稿を縦スクロール用に変換するのではなくて、描き直すのですね。

ネームから切り直したいです。縦スクロールだと画面の作り方が違ってくると思うので、ストーリーの流れ自体も変わるかもしれない。世界線を変えるかもしれないですね。

ある分岐点で、縦スクロールのほうは「マーガレット」の連載版とは違うストーリーになって、違うラストを迎える。そういうのも面白そうだなと思います。

『メイちゃんの執事』をフルカラーで、さらには違う展開で、再び読める日が来るかもしれない

——わくわくしますね。ぜひ読みたいです!

「漫画家をやってきてよかったです、本当に!」

——先生の中で、ファンの方は今どういう存在ですか?

本当によく付き合ってくださって…ありがたいです。ここ、2〜3年でSNSをやり始めたんですが、メッセージもいただいて。時々、私が気づかないような見方を書いてくださって、「あ、なるほどそういう見方もあるな」と思ったりしますね。もちろん今までいただいたお手紙でも、それは感じていたんですが。

——やはり読者の方からのお手紙やメッセージは大切なものなのですね。

はい。漫画家は、孤独なんですよ。読者さんと直接触れ合うことがないので、「もしかしたら、本当は読者さんなんていないのかもしれない!」と思ったりする(笑)。「私は何のために漫画を描いているんだろう」と思うこともあります。

そういう状況に陥ったときに、読者さんからお手紙やメッセージをいただくと、「ああ、よかった……ちゃんと見てくれている人がいる」と思えるんです。

——『メイちゃんの執事』完結後のご予定はもう立っていますか?

取材後に掲載された、17年の連載の最後を飾る「マーガレット」のカラー扉

うっすら立ててはいるんですが、それにはあまり囚われないようにしようかなと。とりあえず最後まで描き切って、そのあとにどんな“残りカス”があるかは私にもわからないです(笑)。

あ、そうだ、少し人間らしい生活をしようとは思っています。大学4年から漫画を描いてきて、ありがたいことに連載をずっといただいてきたので、人間らしい生活をしてこなかったんですよ。

——「人間らしい生活」とはどういうものでしょう。

土日は友だちと会って食事をするとか、ゴールデンウィークは旅行に行くとか、そういうごく普通のことをしたいです。親も結構高齢なので、悔いがないように一緒に過ごしたいとも考えています。

——30年以上、ずっと漫画を描き続けていらしたわけですもんね…。

もっとさっさとやめると思っていました(笑)。投稿しているときも「向いていないかもしれない」と思っていましたし、デビューしてからもあまりいい評価を受けなかったですし。

漫画を書くこと自体が好きという気持ちはあるんですが、ネームが本当にしんどくて「私は漫画が得意じゃないんだな……早々にやめるんだろうな」と思いながら描いていました。

——なぜ続いたのだと思いますか?

仕事をくれた、当時の編集部のおかげですね。仕事をいただくから、次も頑張ろう、と思う……そういうサイクルがあったから続けることができたんだなと思います。

——今、長く漫画家をやってきてよかったと思いますか?

よかったです、本当に! とても自分勝手な人間なので(笑)、脳内の自分勝手に作った世界、仮想世界で遊ぶことができたのがよかったですね。なかなかおもしろい仕事だなと思っています。

『メイちゃんの執事DX』第2話を読む

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文・インタビュー/門倉紫麻

『メイちゃんの執事DX』(集英社)

宮城 理子

2015年1月23日発売

440円(税込)

新書判/192ページ

ISBN:

978-4-08-845330-9

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「メイちゃんの執事」の続編がスタート!!
最高学年になった途端に、婿選び決闘やら逃避行やなんやらで、世界中を駆け回ってたメイが、やっと学園に帰ってきました!! やっといつもの生活に戻ったと思いきや、謎の新入生が登場したり、18歳になったメイに、理人さんが××××を××××したりと、前作以上にデラックスな学園生活が始まります!!

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