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話し下手でも、上手に無理なく会話をコントロールできる! 元TBSアナ堀井美香が伝授する「聴く技術」とは?

集英社オンライン / 2023年6月25日 11時1分

昨年、27年間勤めたTBSを退社し、50歳でフリーアナウンサーとなった堀井美香さん。「話し方」にまつわる書籍は山ほどあるなか、最新著『聴きポジのススメ 会話のプロが教える聴く技術』(徳間書店)では「大事な人との関係は、聴くことから始まる」と「聴き方」にフォーカス。人の話を聴く姿勢にも通じる“聴くポジション=聴きポジ”とは何か? 堀井さんに聴いた。

「話す力」よりも「聴く力」

TBSに在籍した27年間では、ナレーションなどのアナウンス業だけでなく管理職や新人採用にも携わってきた堀井さん。アナウンサー時代は情報を一方的に伝えるだけでなくMCやゲストの話を聴く仕事を多くこなし、管理職時代はその培ってきた「聴く力」がよりどころとなったという。そんな堀井さんのルーツは秋田県で「大家族に囲まれた幼少期」を過ごした。思い返せばその頃から“聴き役”だったとか。



「田舎の昔懐かしい大家族というか、親戚同士の集まりは広いお座敷の上座の方におじさんとかが座って、お母さんや女性たちはお給仕して後ろの方で集まって食べるという感じの環境で育ちました。今考えるとおかしな話ではありますが、母の教えや周りの空気もあって“女子が中央に立って喋ってはいけない”という雰囲気があって、どちらかというと幼い頃から聴き役というかキャッチャー側でした。

だから人前で喋ることは得意ではなかったですね。だけど母は声に出して本を読むことの大事さを教えてくれました。毎朝、母からの言いつけで国語の教科書の音読はしていたので、その経験から間の取り方や息継ぎは自然と学んでいたように思います」

堀井美香氏

「地元では公務員になるのが一番いい道だ」と両親に教えられたと言うが、そんな中でアナウンサーという道を選んだ堀井さん。幼い頃からの音読経験だけでなく、大学の進路担当の先生からのこんな声がけがきっかけだったとか。

「大学の進路の資料を出しに行った時に担当の方が『アナウンサーコースを受けてみたら?』とマスコミ講座のチラシを渡してくれたんです。私に対して特別にってわけでもなくて、手当たりしだいにばら撒いてただけなのかもしれないんですけど(笑)。

アナウンサーだなんて、自分とは住む世界が違うとは思いましたが、そのコースでは面接の練習もあったので、一般企業の入社試験にも役立つだろうと思って始めました。でもそこで切磋琢磨するうちに本気でアナウンサーになりたいと思うようになったんです」

堀井さんがTBSに入社した1995年は、まさに女子アナブーム真っ只中。『ねる様の踏み絵』ではとんねるずのアシスタント、『王様のブランチ』では初代進行アナとして出演するなど、瞬く間に人気アナに。

可愛らしい声で重宝されるも「このままではすぐ“詰む”」


「新人時代は甘ったるく可愛らしい声で重宝されたかもしれませんが、このままではすぐ“詰む”な、ということは自分でもわかっていました。この声で10年、20年とやっていくのは難しいと。声自体を意識的に変える、喋り方を変えることはスキルの一つとして必要だなと思いました。

バラエティはもちろん楽しかったし、やりがいもありましたが、紀行物やニュースをやるには、やっぱりこの声では違和感があるんです。実際に声を当ててみても重みが足りない自覚はあったので、声自体を変えなければいけないと思いました」

入社してすぐに人気アナとなった堀井さんだが、「このままではすぐ“詰む”」と独自にトレーニングを開始したという


低い声を出すように意識を切り替え、ボイストレーニングを始めた堀井さん。くわえて、“聴くポジション”に徹することで、いつしかゲストから「話しやすかった」「堀井さんが聴き手なら安心だね」と言われることが増えたという。

「もともとアナウンサーには本質を聞き出すとか、真相を聞くとか、そういう役割はなくて、万人が楽しめるキャッチーな言葉を引き出すのが役割だと思うんです。だから話すことに意識を向けるよりも聴くことに意識を向けてきました。大事なのは話を引っ張り出そうとすることではなく、あなたのことをもっと知りたい、教えてほしい、という意識なんだと思います」

また堀井さんが“聴く力”を身につけたのは、アナウンサーだけでなく管理職も経験したことも大きかったという。

「管理職になってからは、コーチングの研修も受けました。そこではひたすら黙って聴くこと、答えは提示しない傾聴を学びました。やり方を示さずに傾聴に徹するのは、とても難しかったです。人は会話をしながら『自分の意見を求められたらどう返そう』などと考えてしまうものですが、自分ではなく、相手だけに集中するというのも、そのときに身についたのだと思います」

会話の中で沈黙があるとどうしても焦ってしまったり、何か喋らなくては、という気持ちになってしまいがちだが、そうした焦りも必要ないという。

「アナウンサーはインタビューの際、相手の言葉を待ちなさいと教えられるんです。それが鉄則。たとえ沈黙があったとしても、その後に本音や思いもよらない言葉が出ることがあるからです。これは一般的な会話にも活かせると思います。思ったことをすぐに口にするのではなく、相手はどう受けとめるだろう、と頭の中でいったん反芻してから言葉にすると、より伝わるものです」

阿川佐和子さんの「聴き方」の凄味

「以前、あるトークイベントの司会をして菅義偉前首相のお話を聞く機会があったのですが、菅さんって間が長くて待ちきれなくなるところで話し出す方で、最初はその間を独特に感じました。でも、だんだん心地よくなってきたんです。菅さんとのあの時間で、“間”という時間がいかに会話を深め、共有する時間の楽しさを実感させてくれるものだと思いました」

そんな堀井さんは本書の中で「聞く力」の阿川佐和子さんと対談。「改めて聴き方にはいろんなスタイルがある」と思い知らされたという。

「私は人の話を聞くときに自分を一切消して挑むんです。まあそれは、職業柄、台本通りに進めないといけないという縛りもあるからですが、阿川さんはまったくスタイルが違うんです。ご自身が聞きたいことをどんどん聞いて、その言葉によって引き出しが開き、次の質問が浮かんでくるそうなんです。私は完全に自分の中に話のルートをある程度入れてから挑むタイプなので、とても真似できないし、うらやましくも思います。

ただ、スタイルは違えど“この会話を楽しい場にしよう”というのは共通していますし、ひとりひとりにスタイルがあると思いますので、皆さんにも、ぜひ色々な形の聴き方を参考にしてほしいと思います」

今年2月に上梓した『一旦、退社。50歳からの独立日記』(大和書房)に続いて、早くも2冊目の書籍を書き上げた堀井さん

堀井さんに、阿川さん以外にも注目している聴き手についても聞いた。

「武田砂鉄さんはすごく聴き方のフックの掛け方が個性的な方でした。彼はインタビューする相手をすごく調べて挑まれるんですが、質問が一言一言、短いんですよ。鋭い着眼点と独特の切り口で聞いてくるから、どんどん喋らされてしまう感じがします。私は自分で質問したのに、何を言ってるんだか自分でもわからなくなってしまうことがあるんですけど(苦笑)、砂鉄さんのように端的に話のフックをかける聴き方はいいなって思いました」

会話というと、どうしても「話す力」がフォーカスされがちだが、実は会話を弾ませるには「聴く力が不可欠」だという堀井さん。自身が“聴くポジション”をつかめば、誰でも会話の中に自分の居場所を見つけることができそうだ。

「喋れない人こそ、相手をちゃんと受け入れて、自分と相手の居場所をしっかりと確保することで会話が円滑に進むと思います。今回の書籍がその参考になれればいいなと思っています」


取材・文/河合桃子 撮影/杉山慶伍

聴きポジのススメ 会話のプロが教える聴く技術

徳間書店

発売日‏ : ‎ 2023年5月31日

価格:1,650円(税込)

単行本(ソフトカバー) : ‎ 256ページ

ISBN:

978-4198656348
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「話が合わない」「沈黙が気まずい」「場が盛り上がらない」
こんな時は……話し下手でも主導権を握れる聴き手のポジション略して聴きポジですべてを制す!

・同意も理解も不要
・関係が良くなる3つの相づち
・名詞の使い方で納得感アップ
など、今日からでも実践できる具体的なテクニックが多数◎

大ベストセラー『聞く力』著者・阿川佐和子さんとの対談も収録!

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