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既存の自転車に後付けで電動アシスト化できる! スマホが起動の電子キーとなり位置情報までも管理できるホンダが開発した「SmaChari(スマチャリ)」とは

集英社オンライン / 2023年6月28日 12時1分

バイク・クルマでおなじみのホンダが、ユーザーの好みの自転車を電動化、コネクテッド化できるシステム作り、その環境を整えようと動きはじめた。本田技研工業株式会社・SmaChariのプロジェクトリーダーとして技術・アプリ開発を担当した野村真成さんに詳しいところを聞いてみた。

電動アシスト自転車が、手の届く範囲に!

──ホンダが、自転車業界にも進出したということで話題となっています。今回の「SmaChari(スマチャリ)」プロジェクトで、電動アシスト自転車が、学生にとっても優しい値段になるとか?

はい、さまざまな自転車を電動アシスト化、コネクテッド化するシステムを開発しました。

数年後には自転車に、カゴをつけたり、ギアを変えたりする感覚で、電動アシストユニットを選択できるような状態に持っていきたいと考えています。



ざっくり言いますと「SmaChari」は、自転車本体のことではなく、既製の自転車を電動アシスト化・コネクテッド化するシステムです。

プロジェクトリーダーの野村真成(なおき)さん

──システム? 電動アシストユニットは作っていないんですか?

はい、それは作っていません。といっても、SmaChariは、スマートフォンと連携できる特別なソフトウェアが必要となりますから、その仕様はホンダが作りました。

仕様の使用許諾を持つ自転車店やメーカーがSmaChariを採用した自転車や部品を作り上げます。このプロジェクトの第一段階として、自転車販売チェーン大手のワイズロードさんが、既存の軽量クロスバイクに電動アシストユニットを後付けしたものを、2023年9月に販売を開始する予定です。

この形を取ることで、限られたメーカーしか製造できなかった電動アシスト自転車を、販売店でも製造することが可能になり、よりユーザーの意見を反映させた商品開発ができるようになります。

目下、ママチャリタイプの電動アシスト自転車が目立っていますが、このプロジェクトの第二段階として、ワイズロードさんから、後付けのメリットを活かした多彩な電動アシスト自転車を販売する予定です。

こうなってくると、ユーザーにとって圧倒的に選択肢が増え、お好みのタイプのものを見つけることができるようになり、例えば、現在、30~50万円もするスポーツタイプの電動アシスト自転車が、もっと安く手に入れられるようになります。

さきほども話しましたが、現時点での最終目標は、自転車にカゴをつけたり、ギアを変えたりする感覚で、自転車店の判断のもと、持ち込んだ自転車に電動アシストユニットを付けられるようになればと考えています。

ワイズロードのSmaChari第1弾モデル「RAIL ACTIVE-e」「KhodaaBloom(コーダーブルーム)」の軽量クロスバイク「RAIL ACTIVE(レイルアクティブ)」をベースモデルとして採用。2023年9月に販売予定

コネクテッド化でさらに便利に!

──大手通販サイトでも、自転車を電動化する電動アシストユニット(海外製)を見かけますが、ホンダが設計したものとは何が違うんですか?

違いは2つあると思います。1つ目は、電動アシストの出力が、日本国内の法規に準拠していることです。

法律は国によって違います。海外から輸入された製品の中には日本の法規に適合していない製品も見られます。アシストできる範囲が広く、スピードが出すぎるため、日本では電動アシスト自転車として公道で乗ることはできないのです。

2つ目は、自転車とスマートフォンとサーバーのコネクテッド化です。電動アシストユニットとスマホがBluetoothでやり取りできるようにしました。さらにそこで得た自転車の速度や走行距離、消費カロリーといった走行データをホンダの管理するオンラインサーバーと結びつけます。そうすることで、専用アプリを通じて、これまでにない新しい機能を使えるようになり、今後も、さまざまなサービスをアップデートしていけます。

自転車とサーバーを連携させ、新しい機能を実現

──「これまでにない新しい機能」とはなんですか?

例えば、スマートフォンからきめ細やかな出力調整が可能です。従来の「強・中・弱」といった大ざっぱなものではなく、走行状況にあわせられるAIモードを搭載し、快適な走行を実現します。

また運転補助機能付きの自動車のように自動で異常を検知します。電動アシストシステムの故障やエラー、バッテリーの残量表示など速やかにユーザーに通知することで使い勝手と安心感を向上させます。

盗難対策としては、スマートフォンが電動アシスト機能起動の電子キーとなり、GPSで自転車の位置情報を管理することが可能です。情報をアプリで共有し、保護者はお子さんがどこにいるかを確認できますし、仲間同士のサイクリングでも、集合場所の共有や互いの位置の確認などに役立ちます。

スマホアプリのメーター画面

自転車通学者の半数は、電動アシスト車が欲しい!

──SmaChariを開発するそもそものきっかけは?

きっかけはホンダの新事業創出プログラム「IGNITION」に参加したことでしたが、自転車へモーターを後付けするアイデアは学生時代からありました。

当時、片道約10kmの自転車通学をしていて、とにかくそれが辛くて、オートバイに乗ろうにも「三ない運動」(高校生に対しバイクの「免許を取らせない」「買わせない」「運転させない」の教育方針)が壁となり難しく、自転車に「全国高等専門学校ロボットコンテスト」で使うモーターを付けられないかと夢想していました。

──プロジェクトを進めるにあたり、市場調査をしたそうですが…

自転車通学を行う高校生は約180万人もおり、全国各地で高校生に直接ヒアリングを行いました。調査した自転車通学する高校生2,708人のうち、48%が自転車通学に体力への負担を感じており「電動アシスト自転車が欲しい」と答えました。なんと高校約5,000校のうち、通学路に高低差50m以上の坂がある高校は約45%もあります。

印象的だったのは、神奈川県の相模原です。通学路に長い坂道が多く、女子生徒の10%がすでに電動アシスト自転車を使っていました。男子生徒はスポーツタイプの自転車に乗りシャカリキにこいでいましたが、本音は「電動アシスト自転車にしたいが、ママチャリタイプでは格好がつかない」という話でした。

私も学生の頃、同じ思いを持っていました。乗るならばカッコいいものに乗りたい。しかし、電動アシスト自転車は種類やデザインに限りがあります。ならば、ユーザーが好みの自転車を、後付けで電動アシスト化する方が、需要があるのではないかと考えるようになったわけです。「誰もが、好きな自転車を電動化できるようにしたい」という想いのもと、開発の方向を定めました。

SmaChariプロジェクトのメンバー。左より服部さん、野村さん、砂本さん、大貫さん

──今後の抱負をお願いします。

実は、ホンダの創業者・本田宗一郎が1947年に初めてHondaの名で製品化した商品は、奥さんが買い物に行くために使っていた自転車にエンジンを載せた「補助エンジン付き自転車」なんです。遠くまで買い出しにいく妻の姿をみて、楽にしてあげたいとの想いから生まれ、後に“バタバタ”という愛称で親しまれました。

補助エンジン付き自転車 通称“バタバタ”

SmaChariの「既存の自転車に動力を取り付ける」という発想は、ホンダの原点である“バタバタ”と同じです。新事業創出プログラム「IGNITION」に応募したあと、周りから『これって、現代版の“バタバタ”だよね』と言われました。いつの時代になっても「周りの人を助けたい、移動を楽にしてあげたい」という想いに変わりはありません。

学生さんだけでなく社会人、ご年配の方も、お客さまの手が届く範囲で暮らしを豊かにするために、SmaChariプロジェクトに磨きをかけていきたいと思っています。

取材・文/集英社オンライン編集部

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