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「20代の恋愛は先のことなど考えていなかった」「想像を絶する絶望感や失望は何度もあった」人生のハンドルを自ら握って運転を始めた山下智久。独立から3年で身につけた“急がば回れ”の精神

集英社オンライン / 2023年6月29日 19時1分

映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』に出演した山下智久。独立して3年、俳優として世界を舞台に活躍を続ける彼が語る、壮絶な過去と希望に満ちた未来……。

世界中、どこにいても仕事はできる

──山下さんが独立されてから今年で3年目となります。大きな後ろ盾がなくなる独立に、当初不安はなかったのでしょうか?

もちろん不安はありました。でも自分で運転したかったんですよ。誰かに運転を任せるのは楽ですが、やっぱり自分の人生ですからね。ハンドルを握って、やりたいことを見つけて、実現に結びつけていきたかった。

遠回りになるかもしれないし、全くの無駄足かもしれない。それでも自分のやりたいことを追求したいし、その過程も楽しみたかったんです。そのほうが絶対におもしろいと思いました。



──自分の人生のハンドルを握ってみていかがですか? 独立後の道のりについて教えてください。

いろいろ大変なことはありますし、道はまだまだ荒れていますね(笑)。そんな中でも一緒に旅をしてくれる心強い仲間はいますし、自分で運転しているからこそ見えてくる景色もある。

スピードも以前に比べたら遅いかもしれないけれど、そのほうが「生きている」という実感があるんです。荒れた道のほうが心拍数も上がりますし、記憶にも残りますから。

──高いモチベーションを維持し続ける原動力は?

波はありますよ(笑)。モチベーションがあったり、なかったりすることはあります。でもモチベーションが上がらずに前に進めなくなったら、休めばいいんです。

トレーニングをしていても「もうこれ以上は無理だ」という瞬間があるじゃないですか。そうしたら休みますよね。休んで、またトライして、そうやって前に進んでいく。心の持ちようもそれと一緒だと思います。

“急がば回れ”みたいな感じですね。

──海外での活動も積極的に行っていますが、ご自身の中ではどのような位置づけなのでしょうか? 海外を拠点にすることも視野に入れているのですか?

今はどこにいても仕事ができる時代だと思っています。ですが、海外での活動を目的にしているわけではなく、新しい感覚、自分にない感性を持っている人と仕事がしたいんです。一緒にコラボレーションをすることで、自分が違う色にどんどん変化していくことを体験したい。おもしろい出会いや経験ができるのであれば、どこでも行きたいです。

あとは、時間をしっかりかけられる仕事をしたいなとも思っています。僕は俳優としてテレビドラマで育ったので、やはり常に時間に追われるなかでの撮影が多くて。限られた時間の中で最高の作品を作ろうと懸命に努力するドラマの現場は、本当にすごい。でも僕の場合は、メンタル的に焦ってしまうこともあったので、違う現場も経験していきたい。

今は量より質を重要視したいと思っています。

視力を失う恐怖を体感

山下さん演じる漫画家・泉本真治を支えるのは、生まれつき耳が聞こえない女性・相田響(新木優子)

──作品を吟味して出演されているようですが、新作映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』で演じられたのは、キャリアが順調に行き始めた矢先に視力を失った漫画家という、難しい役どころ。視覚障害の役を演じるにあたって準備したことを教えてください。

僕も実際に目隠しをして1日生活してみたのですが、自分の家にいるのに、目隠ししていると何がどこにあるのかわからない。普段の生活でいかに視力に頼っているかがわかりました。それだけに視力を失うというのは想像を絶する困難で、自分がそうなったら……と思うだけでも怖かったです。

リハーサルのときにも目隠しをして外を歩いたのですが、本当に声が頼りなんですよ。こんなに“聞くこと”に集中したことがなかったから、神経の研ぎ澄まし方がまったく違うんだろうなと思いました。この映画には視覚を失ったときに、何に気づくか、何を感じるかというテーマもあるので、実際に目が見えない状態を経験することで、少しだけですが、実感することができました。

──視力を失い、絶望した主人公・泉本真治の心情を理解する上で参考にしたことはありますか?

実際に、視覚障害のある方にお会いして話を聞く機会をいただきました。視覚障害にもさまざまなパターンがあり、僕が演じた真治のように途中から見えなくなる方もいれば、生まれたときから見えない方もいます。やはり見えていたのに視力を失った方は絶望を感じたそうで、真治のように途中で命を断つことも頭をよぎったそうです。

でもそこで支えになったのは「家族」だと語っていた方がいて、やっぱり救ってくれるのは“人”なんだと思いました。僕がリハーサルで目隠しをしていたときも、心細くてスタッフに頼りましたから。周りにいる人たちは大きな支えだと実感できました。

──メガホンを取ったのは、『私の頭の中の消しゴム』(2004)のイ・ジェハン監督。山下さんはジェハン監督のファンだと聞きましたが、一緒に仕事をされた印象は?

撮影中に感じたのは「小さいものが小さくないこと」です。例えば撮影で小物を撮るときや衣装を決めるとき、監督の頭の中に明確なイメージがあり、そこに到達するまでたくさんテイクを重ねるんです。衣装合わせでも監督のイメージに合う衣装になるまで何度も何度も衣装に袖を通しました。

僕がこれまで出演してきたテレビドラマでは、小物は小物扱いで「はい、オッケー!」で終わり。俳優のように丁寧に演出されることはなかったのですが、ジェハン監督の現場ではあり得ない。小物がまるで主役のように扱われていました。

監督はその小さな存在が作品にどれだけ大きな影響を及ぼすかということを知っている。俳優たちの表情、アングル、光など、すべてのことに関わってくる大切なものなんだとわかりました。

──すごくいい経験でしたね。

僕がジェハン監督の『私の頭の中の消しゴム』を見たのは高校生のころですが、今回改めて観て、本当に素晴らしい映画だと思ったし、監督と一緒に仕事をしたことで、ディテールへの細かいこだわりなど、当時気づけなかったことに気づくことができました。

だからこそ、ジェハン監督の映画は時が経っても色褪せないのだと思います。

──ジェハン監督の演出はいかがでしたか?

演技が良くても悪くても最低5テイクは撮りますと言われました。すべてのシーンでテイクを重ねて編集していくわけですから、作品が完成するまでの工程を考えると、何百何千の組み合わせがあると思うんですよ。役者の表情、声のトーン、映像の陰影など、壮大なパズルを組み立ていくような感じだと思います。

それが最終的に最高の形でバチっとはまるのは奇跡的なことかもしれない。監督の仕事のすごさをのぞかせてもらったし、僕にはできない(笑)。監督することに興味がないわけではないのですが……あと5年くらいはないな、と思います。

アイドルは厳しい世界だった

──本作は山下さんにとって久しぶりの王道ラブストーリーです。20代のころは多くのラブストーリーに出演されていましたが、30代になって恋愛に対する心情に変化はありましたか?

現実的になったかもしれません。若いときは現実が見えていなくて、とにかくその瞬間を全力で楽しみたいという気持ちだったし、先のことなど考えて恋愛をしていなかったと思います。でも30代になった今は、5年後、10年後を考えながら先を見据えるようになったし、相手を思いやる変化が生まれていると感じています。

──今回は、突然視力を失い絶望する役柄を演じていますが、山下さん自身、真治のような絶望に直面した経験は?


想像を絶するような絶望感や失望は何度もありましたし、乗り越えてきました。過ぎ去ったこと、起こってしまったことをなかったことにはできないし、変えることは難しい。だから僕は「未来を変えていかなくては」という気持ちで進んできました。そうやって歩みを進めていった結果、5年後、10年後が輝かしいものであれば、必然的に過去も見え方が変わってくると思うんです。

自分の前向きな気持ち、未来を変える気持ちさえ失わなければいいんだと。いまはそういうマインドで仕事に臨んでいます。

──「想像を絶する」という表現をされるほど、過酷なものだったのですね。

やはりアイドルは厳しい世界でしたから。何十人、何百人の男性たちが集まっている中で勝ち残っていくのは、才能だけではダメ。メンタルの強さも必要なんです。

だからといって、他人を蹴落としてまで生き残ろうとは思わなかったし、そういう気持ちで突き進んでも絶対に成功はできなかったと思います。やはり「勝ち残っていきたい」という真っ直ぐな情熱がいちばん大切だったと思います。

──ちなみに、絶望や失望から立ち直ることができたきっかけは?

守らなくてはいけないもの……僕にとっては家族ですが、その存在があったからこそ、立ち直れたと思います。

何事もそうだと思いますが、自分に負荷をかけないと突き進む力にならないのかもしれません。家族を守ることはメンタルに負荷をかけることになりましたし、ダンスなどの練習やハードスケジュールなど、当時は物理的な負荷もありました。

でもそれを乗り越えたからこそ、今も仕事をさせてもらえる状況にあるのかなと思います。そういった経験に僕は感謝しています。

──先ほど、独立後のキャリアについて「自分で運転したかった」と語っていました。山下さんが目指す目的地は?

今はとにかく新しい景色が見たいという思いだけなんです。「とりあえず今回は西に進んでみようか」というような身軽さです。

俳優業がメインになっていますけど、そこにこだわりがあるわけでもありません。新しい人に出会って、新しい価値観でおもしろいものを作っていきたい、そこに自分の身を置いていたいという感じです。

とはいえ、ツーベースヒットではなく、みなさんを驚かせるような場外ホームランを狙う気持ちは常に持っていて。その気持ちをずっと持ち続けていれば、いつかはかっ飛ばせるんじゃないかと思っています(笑)。


取材・文/斎藤 香 撮影/千葉タイチ スタイリスト/百瀬豪 ヘアメイク/北一騎(Permanent)

『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛している』(2023)上映時間:2時間12分/日本


漫画家の泉本真治(山下智久)は、自分の作品が映画化されることになり大喜びするものの、長年無理して作業をしてきたため体が悲鳴を上げて倒れてしまう。医師から診断された病名は「急性緑内障発作」。次第に視力を失っていき、漫画を描くことどころか生活もままならなくなる真治。自暴自棄になり身を投げようとした彼を救ったのは、真治の漫画の大ファンで、耳の聞こえない相田響(新木優子)だった。毎日のように自分の世話をする響に真治は次第に心を開いていく。

ディレクターズカット版 7月7日(金)より劇場公開
PrimeVideoにて独占配信中
公式サイト:https://see-hear-love.com
©2023「SHL」partners

山下智久 やました・ともひさ
1985年4月9日生まれ。千葉県出身。1996年から芸能活動を開始。数々のドラマに出演し、幅広く活動してきた。主な作品に『ドラゴン桜』(2005/TBS)『野ブタ。をプロデュース』(2005/2020/日本テレビ)『プロポーズ大作戦』(2007、2008/フジテレビ)『クロサギ』(2006/TBS)『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』(2008、2009、2010、2017/フジテレビ)など多数のドラマで活躍。近作では『正直不動産』(2022/NHK)。『TOKYO VICE』(2022/HBO Max、WOWOW)。配信ドラマでは『THE HEAD』(2020/Hulu)『今際のアリスシーズン2』(2022/Netflix)映画では『映画クロサギ』(2008)『あしたのジョー』(2011)『サイバー・ミッション』(2019)『マン・フロム・トロント』(2022/Netflix配信)。最新作は『神の雫/Drop of God』(Hulu)が2023年9月から配信開始。歌手活動の最新作は『SHE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛している』の主題歌「I See You」。2023年6月9日よりAmazonMusicで配信開始。High Hope Entertainment 所属

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