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【漫画あり】専門学校もアシスタントも行かず、独学で漫画家になった『ワンダンス』作者の強み。「19歳でダンスをやめた後、半年ぐらいひきこもってアニメとマンガを見ていた時期があって…」

集英社オンライン / 2023年7月7日 12時1分

ストリートダンスに賭ける熱い思いと高校生の成長をスタイリッシュなパッケージで魅せるマンガ『ワンダンス』作者、珈琲先生のインタビュー。(前後編の後編)

ダンスから生じる神秘的な部分を描く

――『ワンダンス』はアメリカや韓国、フランスやスペインなどで広く翻訳されています。今年5月には北米でマンガ賞も獲られましたし、来年開催のパリ五輪で、さらに世界中に広がりそうですよね。

『ワンダンス』の作者・珈琲先生

珈琲 ありがとうございます。ただ、作中では全く(パリ五輪に)触れていないんです。

――描かれる予定はあるんですか?

珈琲 ないかなぁ。オリンピックがあるからやっていると思われたくないですし、なるべく作中の大会なんかは架空のものにしようと思っているんです。かっこいいダンスを見たかったら、マンガを読むより実物を見たほうが早いじゃないですか。



(集英社担当)編集A とはいえ、『ワンダンス』は実物を超えている時があります。

珈琲 確かにエフェクトと感情はマンガでしか表現できないですよね。実は、ダンスマンガを描くにあたって、僕が大好きなダンサーのYUSUKEさんとダンスバトルをしたんです。スタジオに2人きりで、時間無制限で、ただ交互に踊りあう。その時、何か神秘的なものを感じたんです。あの時の視界の見え方とかを、恩ちゃんとカボくんのダンスバトルで描きました。

――ダンスバトルのシーンでは、何か目に見えないものが空間を支配しているのを感じます。ちなみに、踊っているときは、何を考えているんですか?

珈琲 こっちはそんなに上手くないから無理やり踊るだけなんですが、相手はそのステップをカッコよく変換して返してくれる人なので、とにかく「楽しい」「カッコイイ」と思っていました。

編集A バトルで無限に踊りあう時、神秘的な感じになるの分かります。根源的と言うか、原始の時代を考えても、踊りって言葉より先にあったものじゃないですか。

珈琲 あんなに楽しいのに、どうしてあんなに辛くなるんですかね……。

編集A 自分と向き合うからですかね……。確かに辛いことのほうが多かったです。

珈琲 僕も10代でダンスをやっていたころは、楽しいって瞬間は少なかったです。けれど、大人になってからYUSUKEさんとバトルをやって楽しかったのは、これから上手くなって、バトルに出てとかの欲やプレッシャーのない、ただの遊びだったからだと思って。そういうメンタルでずっといられたら最強ですよね。

絵に関してだけは自己肯定感があった

――たしかに、純粋にダンスを楽しみ続けられたら最強ですね。キャラでいうとワンダでしょうか。

珈琲 そうですね。プレーヤーとして高みを目指しつつ、ダンスを楽しめるメンタルも持ち合わせている。

――ちなみに各キャラクターにモデルはいるんですか?

珈琲 カボ君はダンスをやっていた頃、仲が良かった友達の立ち振る舞いを参考にしています。恩ちゃんも昔のダンスの先輩をモデルにしているし、みんなが知っているような著名人のモデルはいないですね。イオリ君のモデルは同期で一番ダンスが上手かった奴。僕が好きだった女の子もその子にいったので、そいつのことが嫌いでした。僕はめちゃくちゃ嫉妬しますし、全然いい奴じゃないですから(笑)。

――(笑)。そもそもストリートダンスとは、どうやって巡り合ったんですか?

珈琲 中学生の頃、ヒップホップが好きになって、自分はこっちにいこうと思ってカルチャーを深掘りしていって、ヒップホップにラップ、ブレイキング、DJ、グラフィティなど…いろいろな要素があると知ったんです。僕の出身はかなりの田舎なんですが、周りで誰もダンスをやっていなかったので、「これをやって、すごいヤツになってやろう!」と。

作者の珈琲先生自身も多彩なダンスを踊れる

――マンガはずっと読んでいたんですか?

珈琲 読んではいました。『六三四の剣』(村上もとか)とか、『拳児』(原作:松田隆智、作画:藤原芳秀)とか。『拳児』は中国拳法の話なんですけど、主人公が師事する師匠をどんどん変えていくんです。どの師匠も魅力的で、それが面白くて。カボ君の師匠が恩ちゃん、イオリ、壁ちゃんと変わっていくのは、その影響です。19歳でダンスをやめた後、半年ぐらい引き籠ってアニメとマンガを見ていた時期があって、「オレいけそうだな」と思って。

――昔からマンガを描いていたわけではなく?

珈琲 描いたことはなかったです。ただ、授業中にずっと落書きとかしてて、絵に関してだけはずっと褒められていたので、自己肯定感がありました。

――では、あの絵やカラーを自己流で? 専門学校に行ったこととかはないんですか?

珈琲 ないですね。アシスタントも一瞬だけネット上で関わった人とかはいますけど、誰かについたとかはないです。ただ、本はいっぱい買いました。誰にも師事せず映像作品のコンセプトアートを描いているプロの方が海外に居て、改めてデッサンを勉強し直して書いた本があって、僕と境遇が近いので参考になりました。

ダンスは50代、60代になっても楽しめる

――好きでよく見ていた映像作品とかはりますか?

珈琲 ダンサーはみんな知ってると思うんですけど、『ユー・ガット・サーブド』(2003)ですね。当時、ストリートダンスを取りあげていた『少年チャンプル』(2004~2005)という深夜番組があって、それも好きでした。

――最近はそうしたダンス番組はないんですか?

珈琲 あまり把握できていないです。SKY-HIさんの『D.U.N.K.』というダンス&ボーカルの垣根を越えていこうって番組があって、それは見させてもらいました。高校生はダンスが好きというよりコンテストに憧れる子が多く、大会が終わると辞めちゃう子も多いらしいです。「それが悲しいよね」と言っているダンサーさんの話を聞いて、作品内では恩ちゃんが「みんながダンスを好きになるように」頑張っているんです。

――恩ちゃんは高3にしてすごい指導力ですもんね。たしかに、ダンスは対象年齢が若いイメージがありますが、長く続けている方もいらっしゃるんですか?

編集A お笑いコンビ・99(ナインティナイン)の岡村隆史さんが昔、所属していた「Angel Dust Breakers」って関西の老舗ダンスチームがあるんです。そのリーダーでマシーン原田さんって方は、今も踊ってますよね。50代かな。60代でうまい方もいらっしゃいますよ。

珈琲 それがまたカッコいいんですよね。そういうレジェンドダンサーが出てきても面白いかもしれないですね。公園とかで練習していたら、アドバイスしてくる変な爺さんがいて、実はレジェンドダンサーだったみたいな。

コンプレックスが武器になる

――それは見てみたいです。今日は、実際にダンスを経験されてきた方の作品は強度が違うとしみじみ感じました。

珈琲
僕はコンプレックスが強いので、それが強みになったというのもあると思います。

――ちなみにコンプレックスは今もありますか? それともだんだん飼いならせていくものでしょうか?

珈琲
吃音とかはもうなくなったので、なくなりましたね。ダンスに対してのコンプレックスもこの作品で消化されて、それと同時に僕自身もダンスが少しうまくなったので、やっぱりコンプレックスは昇華していくことが大事だなと思います。

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取材・文/山脇麻生 撮影/名越啓介

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