日常生活のあちこちに、「ふと気になること」との出会いがある。たいていは「そのままスルー」となるのだが、いつまでも気になり続けているものの中には、ふと「新たな学問的論点」にたどり着くことがある。
本連載の担当者から、その「ふと気になること」を書き留める原稿を書いてほしい、との依頼を受けた。私自身では「新たな学問的論点」にたどり着けなかった「ふと気になること」でも、文字に残しておけば、共感してくれたり、新たな発見につなげたりしてくれる人がいるかもしれない。
そんなことを考えて、この連載を始めることにした。お付き合いいただければ幸いだ。
私は大学で、「情報法」という講義も担当することがある。「表現の自由」や「通信の秘密」といった憲法原則を論じた上で、名誉権やプライバシー権との調整、マスメディアの取材の自由や、放送法・電気通信事業法・プロバイダ責任制限法などについて解説する講義だ。ここで、毎年、ひっかかるのが「侮辱罪」(刑法231条)だ。