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セクシー業界は昭和・平成・令和でどう変わったのか? AV監督・カンパニー松尾が「頑張る」女優に感じる違和感とは…「俺が撮りたいのは恥ずかしさや後ろめたい気持ち」

集英社オンライン / 2023年7月7日 17時1分

映画『ドキュメント サニーデイ・サービス』(7月7日公開)を手がけたAV監督のカンパニー松尾。1988年にデビューし、「ハメ撮り」という手法を確立したAV界のカリスマは、どのようにして現在に至るのか? 昭和から令和へ至る、AV業界の変化とは?(文中敬称略)

ロック好き・松田聖子ファンの少年がAV業界へ

「高校1年生のとき、地元の名古屋のローカル番組で、高校生が松田聖子にインタビューできるという企画があったんですよ。僕は松田聖子が好きだったから応募したら、面接で不合格になって。

でもプロデューサーが、『せっかく来たんだから』と収録現場を見せてくれた。MTVに憧れもあったので、そこからテレビ屋になりたいと思いました」



カンパニー松尾は高校卒業後、堤幸彦らを輩出した東放学園に入学。2年後に制作会社へ就職したが、1年ほどで倒産してしまう。

カンパニー松尾

そのとき、先輩に誘われたのが、設立2年目のAVメーカー「V&Rプランニング」。時は1987年のAV創生期。『全裸監督』で知られる村西とおるが、女優・黒木香をスターダムに押し上げていた。

「会社に行って、まず社長兼監督に言われたのは、『松尾くん、うんこは大丈夫か』。1週間後のロケで、その真意がわかるんですよ。入ったのは、SMをドキュメンタリーで撮る会社。うんこ、おしっこは当たり前で『汚れたら片付けてね』って話だったんです。

衝撃を受けたのは、2本目の撮影のとき。男優さんが時間になっても来ないので、淫靡(いんび)な照明を当てて、女の子を縛り、イメージシーンの撮影から始めたんです。

そうしたら、一緒にモニターを見ていた社長が、いつのまにかフレームインしてきて、いきなり女の子を平手打ちした。そしてパンツを脱いで、『おまえ、こういうのが好きなんじゃろー! くわえろー!」って(笑)。

後で聞いたら社長と女優さんとは旧知の仲で、そういう展開があるとわかってたみたいですが、それを知らずに見て俺は『この人、カッコいい!』と。思春期にシビレた、セックス・ピストルズの『アナーキー・イン・ザ・U.K.』がまた鳴り響きました」

若かりし頃の松尾

「ハメ撮り」に目覚めさせた伝説のAVアイドル

自らカメラを持って「ハメ撮り」を始めたのは、伝説的AVアイドル・林由美香(2005年没)との出会いがきっかけだった。

「林由美香が18〜19歳、僕が23歳のときに仕事をして、インタビューで聞いたんですよ。『君はかわいいのに、何でこんな仕事をやってるの?』って。そしたら林由美香は『私は自分らしくありたいと思って、この仕事をやっている』と。

それを聞いたときに、また電流が走ったというか。僕はAV監督でありながら、AVを否定するような言い方をした。だけど、裸の世界で生きていく覚悟を持って来ている子もいるんだと知ったんです。

それから林由美香を、本気で好きになりました。でも俺がやってるのは、男優さんを当て込んで、セックスが終わったら、『気持ちよかった?』と聞きに行くこと。彼女は体を張ってるのに、安全圏から『どうだった?』と聞く俺は、相当間抜けでダサいなと。

自分が体感することで想像以上のものが撮れるかもしれないし、『女優・林由美香』じゃなく、その先の本人に会えるかもしれないと思って、ハメ撮りを始めました」

1990年の林由美香(右)と松尾のツーショット

以降、有名・無名を問わず、女性のリアルな言葉と性を捉えたドキュメントAVは、多くのファンを獲得していく。一方、娯楽性の高い企画モノとして人気を得たのが、素人女性のナンパを競う『テレクラキャノンボール』だ。

『劇場版テレクラキャノンボール2013』は、ミニシアターで観客動員1万人超えのヒットを記録。

『劇場版テレクラキャノンボール2013』より

SPACE SHOWER FILMSのプロデューサー・高根順次氏との巡り合いにつながり、のちに『ドキュメント サニーデイ・サービス』が誕生する。

『ドキュメント サニーデイ・サービス』より

「AV女優を頑張らないで!」

監督デビューから35年。昭和から令和にかけて、AV業界ではどんな変化があったのか。

「すげぇ変わりましたよ。ビデオソフトからDVDになり、今は配信。カメラも変わりました。でもカメラはね、ちょっと前に出たのを使ってるんですよ、俺は。手ブレするので、ハメ撮りはデカすぎても小さすぎてもよくない。相手との距離が近いので、広角も大事。ちょうどいいのはソニーのハンディカムで、5年くらい前に出たFDR-AX60を使ってます。

一番変わったのは、女優さんかな。昔はAVに出たら『堕ちた』と言われたし、AVに出ることは非常に恥ずかしく、人目をはばかるようなことでした。でもSNSが出てきた頃から時代が変わって、『AVを頑張る』っていう子が増えたんですよ。

AVを自分の表現活動と考えて、お友だちに認められたり、親に認められたりすることも、いいとは思いますよ。ただ、『AV頑張る』って言ってる子が、『アッハーン』っていうのは、なんかつまんない(笑)。AVは頑張らなくていいんです」

その理由は、頑張れば頑張るほど、「嘘」になっていくからだろう。

「AVの9割以上は企画が決まっていて、このシチュエーションで絡みは何回って決まってるんです。女の子は事前に『うんこはしません』とかNGを決めることができるけど、仕事だから自分の性癖に沿わないものもやらなきゃいけない。

そうすると、頑張らなきゃいけないし、“演じてる風”になる。俺が撮りたいのは、人間の内側というか。裸になることの恥ずかしさや、後ろめたい気持ち、そのものを知りたいんです」

ハメ撮り監督ほど楽しい職業はない

AVを撮り続ける一方で、庵野秀明監督の実写映画『ラブ&ポップ』(1998年)に、メイキングドキュメンタリー&特報カメラマンとして参加。また2019年には、『〜元気の出るごはん~タチ喰い!』(テレビ東京)で地上波ドラマの演出も手がけた。

「『ラブ&ポップ』で俺のことを知ったというサブカルの人は多いですね。あれは……ベストを尽くしました(笑)。現場に張りついていても、庵野さんがほとんどの演者とコミュニケーションを取らないから、つまんないんですよ。

ただ現場が、凍てついたまま進んでいく(笑)。それでもひと夏を一緒に過ごしたら何かあるんじゃないかと観察したけど、最後まで何にもなかった。それはそれで、最高ですよね(笑)。テレビドラマは、僕は普通のドラマ演出はできないので、『ハメ撮り風でやらせてくれ』と言って、カメラ1台で撮りました」

最新作の『ドキュメント サニーデイ・サービス』ではバンドの魅力や歴史をあぶり出す作品を手がけた。今後はAVの枠を超えた「ドキュメンタリー作家」としての活躍に期待がかかるが……。

「いやいや、ない。今回でもうお腹いっぱいです(笑)。それにAV監督は、めちゃくちゃ楽しいんですよ。だって、自分がやりたい女とやれるんだから……って、こんなこと言っていいのかな?(笑)。

ハメ撮り監督なので自分の好きに撮影を組めるし、好きなバイクもカレーも、音楽も採り入れてやれている。何も我慢してないし、難しいと思ったことは1ミリもないです。最高ですよ」

取材・文/泊 貴洋
撮影/村上庄吾
場面写真/©2023 ROSE RECORDS / SPACE SHOWER FILMS
編集/一ノ瀬 伸

『ドキュメント サニーデイ・サービス』(2023年)
監督/カンパニー松尾
ナレーション/小泉今日子
出演/サニーデイ・サービス(曽我部恵一、田中貴、大工原幹雄)、丸山晴茂、渡邊文武、藏本真彦、新井仁、杉浦英治、北沢夏音、やついいちろう、山口保幸、小宮山雄飛、ワタナベイビー、夏目知幸、安部勇磨
配給/SPACE SHOWER FILMS

1992年に曽我部恵一、田中貴らを中心に結成され、今年、CDデビュー30周年を迎えるサニーデイ・サービスのドキュメンタリー映画。コロナ禍の全国ツアーに密着しながら、メンバーや関係者による証言でバンドの歴史を振り返る。新旧の貴重なライブシーンや、カンパニー松尾ならではの映像美も見どころ。

7月7日(金)渋谷シネクイントほか全国公開
公式HPはこちら https://films.spaceshower.jp/sunnyday/

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