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【人間ドックの日】日本人の3割は未受診。人生後半の健康を左右する人間ドックは受けるべき? アメリカでは一部の富裕層しか受けられず

集英社オンライン / 2023年7月12日 10時1分

人生100年時代と言われているが、その間体にまったく異常が生まれない人はいないだろう。「体のどこに不調をきたす可能性があるのか」「病気のもとはないのか」を知るには、定期的なチェックが欠かせない。7月12日は人間ドックの日。改めて人間ドックについて学びたい。

人間ドックを制した者が、
人生後半の健康生活を制す

まず、「人間ドック」とはそもそも何なのでしょうか?
少し、人間ドックの歴史についてひも解いてみましょう。

そもそも、意外に知られていない事実ですが、人間ドックが誕生したのは世界のその他のどの国でもなく、日本です。

実は人間ドックとは「日本独自の文化」なのです。遡ることおよそ70年、1954年7月12日、国立東京第一病院(現在の国立国際医療研究センター)で行われたのが、初の大規模な人間ドックの始まりと言われていて、その後聖路加国際病院など、全国に人間ドックの文化が広まっていきました。ちなみに、人間ドックの「ドック」とは一体なんなのだろう?と一度は疑問に思ったことがある方もいると思います。



これには諸説あるのですが、船を修理・点検するという意味のdockが語源とされています。船が海を長期間航海した後、故障している部分や、修理が必要なところがないか点検作業を行うように、人間も日々の業務や家事・育児に忙殺される中で、定期的に点検が必要である、という言葉に起因して人間ドックと呼ばれているようです。

戦前にとある政治家が自分自身の健康チェックを東大病院で行った時、たとえで言ったのが始まりだとか、諸説あります。

写真/shutterstock

しかし、そもそもなぜこのような人間ドックの取り組みが行われるようになったのでしょうか?日本では、大正から昭和初期にかけて、最も多かった死因は「結核」という感染症でした。

当時は不治の病として人々に恐れられていた結核ですが、BCG接種や治療法の発見によって、死者は大幅に減少していきました。

そして、その結果として、死因のトップは感染症から現代にもつながる三大死因(脳卒中・心臓病・がん〔悪性新生物〕)に置き換わっていったのです。

結核をはじめとした感染症に関して言えば、満足な治療法がない状態でいくら普段の健康管理をしても大きな意味は持たなかったのですが、現代の三大死因に関して言えば、逆に普段の生活・健康状態が直結してくる病気ばかりです。

この結果として、人々が自身の生活習慣や、がんの早期発見が生命に直結するという実感をより感じやすくなったのです。

こうした流れで人間ドックが始まりました。

繰り返しになりますが、感染症に対しては我々の体をいくら調べても、かかってしまってはどうしようもないもので、半ば諦観の念もあったところ、感染症の治療薬が開発され状況が変化しました。代わって脳卒中や心臓病などある程度自分自身の普段の行動を変えることで「防げる」病気や、がんのように「早期発見することで治療ができる」病気の恐怖が顕在化し、日本人の健康意識が高まったタイミングで生まれたのが人間ドックなのです。

人間ドックは日本でどのくらい浸透しているのか

では、実際に皆さんは人間ドックをどのくらい受けているのでしょうか?あなたの家族や友人、会社の人と人間ドックの話をすることはあるでしょうか?

日本のデータで確認してみると、人間ドック/健康診断の受診率は厚生労働省のデータを参照すると、徐々に上昇していて、直近(2019年)のデータでは69・6%まで上がっています。

この数字を多いとみるか少ないとみるかは人それぞれでしょうが、依然として3割の人は受診をしていない状況です。

受診していない方に理由を聞いてみると、「いつでも医療にかかれるから心配していない」「時間がない」「面倒くさい」こういった理由が多いようです。

日本ではいつでも必要な時に医療にかかれる。これはまさにその通りで、国民皆保険制度に守られている日本では、他の国に比べて圧倒的に、受診したいと思った時に、健康保険の適用のもと安価に病院を受診することができます。

しかし、なかなかこの有り難みを私たちが感じることができる機会は少ないです。

例えば、新型コロナウイルス感染の拡大期には、感染者の急激な増加によって発熱外来を受診できない「受診難民」が増加しましたが、これは海外では珍しい風景ではありません。救急現場でさえ、10時間以上待つことがそこまで珍しくない地域もあります。

コロナの感染拡大は、ある意味では日本の医療体制の有り難みを再認識する出来事になったのではないでしょうか。

また時間がない、面倒くさいという人もいますが、これは本質的な話をすれば「時間をとる価値を健康診断に感じていない」ということなのでしょう。

人間は必要だったり、求めていたりする場合は優先的に時間を捻出するものです。しかしこの考え方は予防医学を知ってほしい、実践してほしい私からすると非常に残念です。

冷静に考えれば、「いつでも医療にかかれる」ことと「人間ドックなど、病気の予防への取り組みをしない」ということには何の因果関係もないはずです。全く別の話でしょう。

日本ではいつでも医療にかかれるのは事実ですが、「病気」はいつかかっても治療ができる状態なわけではありませんからね。

早期発見していれば手術ができたがんでも、転移し、進行してしまえばもう手術は手遅れで、放射線や抗がん剤を使用する治療しかできない状況や、生活習慣病を放置して、傷つけられズタボロになった血管はもう元には戻りません。

血管をつるつるにする方法など存在しないのです。
病院に行ったからすべてが元通りになることばかりでは決してないのです。


この事実は頭に入れておいてください。

もし人間ドック/健康診断を受けていない3割の方がこの記事を読んでいるとしたら、人間ドックや健康診断は1年に1回、なんとかして時間を割いてでも行うべきイベントという認識を持ってもらえると思います。

日本と海外の人間ドックの違い

ちなみに、海外では人間ドックに対してどのような考え方がされているのでしょうか?

まず、アメリカでは人間ドックはほとんど浸透していません。一部の富裕層がそういった施設を利用している程度に留まっています。

そもそも、海外で多いのですが、「家庭医」と言って、それぞれに担当の「かかりつけ医」が存在しています。その医師の判断によって、胃カメラを受けたほうがいいと言われれば胃カメラを、頭のMRIを撮影したほうが良いと言われれば撮影するという構図になっており、患者自身の意思で、1日や泊まりがけでフルコースの検査を受けるという考え方がないのです。

要するに、アメリカでは検査を受けようと思っても、かかりつけ医の許可がいることが多いのです。

一方、がん検診に関しては自分自身で受診できるのですが、アメリカで明らかに日本より優れている点が、「がん検診の受診率」です。

というのも、アメリカでは日本のように国民皆保険制度がなく、がんになった際の治療費の自己負担が我々日本人とはケタ違いなので、自分で自分の予防をするという意識が圧倒的に強いのです。

これは国民性というよりも国の制度による影響が大きいでしょうが、とはいえ、この点は日本人が見習うべきでしょう。

例えば、私は今、日本で予防医学の啓発をしていますが、アメリカであればがん検診に関してはそこまで言及する必要もないわけです。これは日本の素晴らしい保険制度が生んだ歪な構造です。

その分、日本では自分自身で受ける検査を選択することができる。要するに、健康意識と情報を吟味する能力さえあれば、日本以上に個人が健康に力を入れやすい国はないのです。
アメリカよりも自由度や便利度は高い。

この利点を活かしてほしいと思います。


文/森勇磨
写真/shutterstock

人間ドックの作法-心構え、受けるべき検査、検査結果の見方など、丸ごと徹底解説

森勇磨

2023年5月10日発売

1,760円(税込)

208ページ

ISBN:

978-4120056543

現役医師YouTuberによる「人間ドックの正しい使い方」。『予防医学ch/内科医監修』の管理人であり、ベストセラー『40歳からの予防医学』著者でもある森勇磨氏の最新書下ろし。

「あなたは何のために人間ドックを受けていますか?」
――人間ドックを「ただ受けただけ」で終わらせてしまわないために、年に一度の健康チェックを完璧に使いこなすワザ、満載です。

人生100年時代、ずっと体に異常が生まれない人は稀です。「体のどこに不調をきたす可能性があるのか」「病気のもとは無いのか」を知るには、定期的なチェックが欠かせません。そのために存在するのが健康診断、そして人間ドックです。“人間ドックを制した者が、人生後半の健康生活を制す”とも言えます。


結果が「A」だった、「C」だったなどと一喜一憂して終わりではありません。きちんと検査結果の数値を見て、今後気を付けるべき点を知り、改善を行うことが必要です。それが正解か否かは、次の検査の時に判明します。

とはいえ、たくさんの検査項目が示され「どこをどう見れば良いのかわからない」という人もいるでしょう。また、人間ドックを受けたことのない人は「当日どんなことが行われるのかわからなくてこわい」という人もいるでしょう。本書では、人間ドックについて「わからない」ことを、一つ一つ丁寧に解説することで、安心して的確に受けるコツを収録しました。受けたことのある人も、これから受けようか迷っている人も、必読の一冊です。

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