1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

【囲碁×経営者】上野愛咲美女流立葵杯とドワンゴ・川上量生の対局が実現! 「あの一手に衝撃を受けました」(上野)、「ヨセは嫌なんです」(川上)驚きの結果は…

集英社オンライン / 2023年7月9日 12時1分

女流5タイトル(女流本因坊、女流名人、女流立葵杯、女流棋聖、扇興杯)を一期以上獲得というグランドスラムを史上2人目に達成した21歳の上野愛咲美女流立葵杯・女流名人。実は上野さんは学校法人角川ドワンゴ学園が開校した通信制高校のN高等学校(通称、N高)出身。その縁から今回はドワンゴ元会長で同学園の理事を務める川上量生さんと一局手合わせすることに。囲碁ファン垂涎の一局をお届けしよう。

縁あるふたりの夢の対局

川上量生さんが囲碁を始めたのは30代のころ。自身が経営するドワンゴが上場したときに「君も何か趣味を持ちなさい。ゴルフ・小唄・囲碁のいわゆる”三ゴ”のうち、ふたつを趣味にしなさい」と母親の従兄弟に言われたのがきっかけなんだとか。



小唄(三味線音楽)はやりたくなかったが、碁は『ヒカルの碁』を読んでハマり、ゲームボーイアドバンスで遊んでいたこともあって、藤澤一就八段に長い間指導を受けるほど本格的にのめりこんだという。

今回はそんな川上さんと同じく藤澤一就八段の弟子であり、N校の卒業生という縁を持つ囲碁界の若き天才、上野愛咲美女流立葵杯・女流名人との対局をお届けする。

「私の就位式などに来ていただいてお会いしたことはありましたが、碁を打つのは初めてです」と上野さん。
藤澤八段の見立てで手合いは6子に決まり、さっそく対局開始。

第1譜 迷いなく大模様

川上さんは早打ちです。黒2、4から10と、迷いなく中央志向の骨格を築く。
白11から15となると、一転、黒16と守りも完璧。そして白17に対しては黒18と左下の白全体を攻めた。
これは6子の打ちぶりではない。上野さん、大変な一局になることをこのあたりで認識したに違いない。

「黒20も26もいい手で困りました。黒28と頭を出したのも素晴らしい」と上野さんをうならせる。

そして白33となって、下辺の黒がピンチだと感じた瞬間、パッと黒34とワタった。黒に付け入るスキはない。

第2譜 黒石狙われる

黒36は手堅い守りですが、地は少し損をしている。1図の黒1とサガっておくほうが、右下の地が大きい。白2の抜きにも黒3とカタツギしていて大丈夫だった。
白は37と抜いてできた厚みを生かすべく、39と打ち込むも、「黒40もいい感じですね。白まずい」と上野さん。

白は45から49などと、右上にモタれながら、虎視眈々と右辺の黒を狙う。
そのため、黒は58では2図の1と右辺を守っておけば万全だった。
白は61と右辺を襲いかかる。黒、どうする!?

第3譜 逆に攻めていく

黒62とスペースを広げて、しのげそうな感じだ。黒74までうまく根拠を作ったのだが、「黒74は3図の1とカケツぐほうがまさります」と藤澤八段。黒3までとなったあと、黒aと切ってはっきり生きる手が残るのが大きいという。

川上さんは右辺を生きよう、なんてケチな発想はなかった。
黒78は右辺から下辺に広がる白の眼形を奪う一手。これには上野さんも「衝撃を受けました。『取られる~』と思ってしょうがなく白79、83と逃げました」。

「ハンマーパンチ」というニックネームを持つ上野さん。力強く相手の大石を仕留めてしまうところからついたのだが、その上野さんが逆に攻められているとは、プロの碁でも滅多にお目にかかれない状況だ。
白は83のノゾキから87と逃げ出した。
白89は「モタレ攻め」。右辺の黒を狙っているのだ。ピンチを察した川上さんは……。

第4譜 決め手のチャンスがあったが…

黒90のハサミツケは「場合の手」。
このあたり川上さんは「気持ちが守りになってしまって」と振り返る。黒92とつながれば、黒の弱い石はなくなった。黒104で「これで逃げ切れる、くらいに思っていました」。
確かに黒は大幅リード。しかし上野さんは諦めません。ここからはヨセのフェーズに入ります。

上野さんはまず、特大のヨセ、白105ハネを決めた。
そして白115がくせ者。黒116は正解対応だったが、黒120では4図の1と二段バネがまさった。川上さんは白2と切られるのを心配したそう。黒は5まで連絡することができ、白は12まで隅で生きることになる。
左下では地を大きく減らされたが、黒13と出れば、△2子を取り込むことができ、損を取り返すことができた。

さらに黒126は黒127にサガっていて白123の一子を取ることができていた。
白127とアテられて、また少し地を損してしまった。
川上さんはこの状況を「気持ちが守りに入って。死ななきゃいいと……」と振り返る。
黒130でも5図の1とハサミツければ、下辺が黒地になったのだが、白131と打たれては助けられて、チャンスを逸してしまった。

第5譜 ヨセは嫌い

囲碁は脳のいろいろなところを働かせるゲームだ。序盤は何もないところに自分で自由に骨格を描いていくので、感覚や空間を把握する「右脳」を主に使い、ヨセに入ると計算もするので、主に「左脳」を使う。
脳を広い範囲で使うので、子どもの知育、大人の脳トレにもつながるというのは、医学界のいろいろな研究でも成果が見られているところ。

川上さんは理数系出身のため、ヨセの「左脳」を使うのがお得意かと思われたが、「数学は好きですが計算は好きじゃないです。ヨセは嫌なんですよねー。細かいところを詰める地道な作業で。今日も最後のところとかね、早く終わりにしてほしいとしか思っていなかった」と話す。
反対に「序盤は大きな方針を決めて打っていくのは楽しい」と、大きな決断を繰り返した経営者らしい発言をしていた。

普段から藤澤八段との指導碁も後半には力が入っていなかったようで、本局も「がんばってヨセました」という上野さんのプロの技に、ちょっとずつ後退して逆転を許すかたちとなった。
しかし、世界戦優勝の経験もあるトッププロの上野さんの本気を引き出した川上さんの構想力、勝負勘はお見事だった。(253手完白2目勝ち)

取材・文/内藤由起子
集英社オンライン編集部ニュース班

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください