ディレクターの島田には、明菜の微妙な変化が気になっていた。
「彼女はいつもこちらが望む以上の結果を出してくれましたが、その集中力はある種の狂気を孕(はら)み、私自身も引き摺られた部分がありました。明菜との仕事で夜も眠れず、胃の痛みで3回救急車に乗っています。中途半端な覚悟でできるものではありませんが、そのうちに彼女のレコーディングでの集中力が落ち始めたのです。納得行くまで何度も挑んできた彼女が、夜が更けてくると段々とソワソワし、『もういいでしょ』みたいな雰囲気が出てくるようになった」
その原因はのちに明らかになる。85年1月に公開された映画「愛・旅立ち」で共演した近藤真彦との秘めた恋が始まっていたのだ。