元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第3部】反政府活動で混乱する台湾、中国が夜中に重要施設を攻撃
集英社オンライン / 2023年7月20日 11時1分
元陸上自衛隊最高幹部が、中国の台湾侵攻を完全にシミュレーションした『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』より、Xデー(上陸日)がくる10日から前日までのシミレーションを一部抜粋・再構成してお届けする。
中国・台湾・アメリカ・日本の軍事能力など様々な情報を基に分析を行い、もっとも可能性があると思われるシナリオに基づいて中国軍の台湾進行及び日本への波及、アメリカの参戦などのシミュレーションを行った。展開しているシナリオは、本書(第1部)で触れた図上演習の成果(日本政府の対応)を反映している。『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』より
【Xデーマイナス10日~7日①】
( 台湾 )
反政府活動は全土に広がっていた。台湾当局の厳しい取り締まりにもかかわらず、過激派による公共機関へのゲリラ攻撃が続いていた。
数日以内に中国軍の侵攻作戦が開始される可能性があるとして、台湾軍は全軍に非常警戒態勢を命じた。沿岸部では防御陣地の構築と機雷の敷設などが行われ、予備役に動員令が出された。
台湾海軍は、駆逐艦及びフリゲート艦を南北海域の領海線付近に配置した。馬祖島、金門島、東引島守備隊には戦闘命令が下令された。
台北市、台中市、台南市、高雄市などでは国外に逃れようとする市民が飛行場や港に殺到しパニック状態となっていた。市民の一部は漁船や小型船舶などを奪い、日本やフィリピンに向けて出港しようとして漁民などと衝突する事件が多発した。
( 東京 )
日本政府は台湾を危険度レベル4へ引き上げて、渡航中止及び在留邦人2万345人に退避勧告を行った。外務省は台湾政府と在留邦人の避難について協議を行い、防衛省に対して邦人輸送を要請した。
海上自衛隊は輸送艦2隻を台湾本島東部の花蓮市沖合に停泊させて邦人輸送の準備を開始した。
米豪海軍の輸送艦、病院船も花蓮市沖合に停泊し自国民の退避に向けた準備を行っている。
( 中国 )
中国国防部報道官は「台湾の治安情勢が極度に悪化しており、外国の干渉を防ぐために、明日0900(午前9時)から台湾周辺海域を海上封鎖する。台湾領空への航空機の進入を禁止する」と一方的に発表した。これに伴い、中国海軍艦艇が台湾海峡の南北海域に配置されて封鎖態勢に入っていた。
ただし台湾の東側である太平洋海域への艦艇派遣は行われていない。中国軍は、台湾本島から脱出する外国人が搭乗した民間機については、その飛行を妨害する動きを行っていない。
( 朝鮮半島・38度線 )
北朝鮮は、米韓合同演習への対抗措置としてミサイル発射実験を繰り返し行っていた。数日前には弾道ミサイルの発射実験を敢行し、日本列島の上空を通過して太平洋上に落下させた。北朝鮮外務省は、国営放送で「大規模な軍事演習の一環」と説明した。
在韓米軍及び韓国軍は警戒レベルを上げ、半島には緊張感がみなぎっていた。
38度線、軍事境界線東部戦線を担任する韓国陸軍第1野戦軍司令部(江原道原州市)に、軍事境界線の警備を担任する第2師団から緊急報告が入った。北朝鮮前方軍団の動きが活発化しており、非武装地帯に北朝鮮軍の多数の斥候が入っているという。
「3軍を動員した大規模演習と、アメリカを威嚇する弾道ミサイル発射実験……前方軍団の活発な活動。北が冒険を考えているなら大変なことになる」
第1軍団長の言葉に参謀が静かにうなずいた。
【Xデーマイナス10日~7日②】
( アメリカ )
米軍は防衛態勢を高度態勢のデフコン3から最高度に準じるデフコン2に引き上げた。
インド太平洋軍は、インド洋から南シナ海に向かっていた第7艦隊のニミッツ空母打撃群に台湾海峡付近への進出を命じた。ハワイのロナルド・レーガン空母打撃群を横須賀に、セオドア・ルーズベルト空母打撃群をグアムに向かわせた。
太平洋艦隊は、西太平洋に3個空母打撃群が作戦展開する態勢を取った。核ミサイルを搭載した戦略原潜を太平洋に集中展開させ、核攻撃に対する反撃態勢を敷いた。太平洋空軍も戦闘飛行隊を嘉手納、横田、グアムに展開させ即応態勢を取った。太平洋陸軍はワシントン州フォートルイスの第1軍団に日本への展開準備命令を出した。
アメリカ政府は国連に対し、台湾海峡の平和維持に関する緊急の安全保障理事会の開催を要請した。
( 東京 )
和田防衛大臣は自衛隊に在外邦人輸送命令を発出した。
花蓮市沖合に停泊していた海上自衛隊の輸送艦から、大型輸送ヘリが花蓮市郊外の外国人専用臨時ヘリポートへと飛行し、邦人輸送を開始した。近くの米海軍、豪海軍も同じく自国民の救出作戦を開始していた。
外務省は、中国国内の在留邦人約10万8000人の安全を確保し帰国に対する便宜を図って、安全な帰国を保障するよう中国外交部に要請した。
( 中国 )
中国軍東部戦区では、大規模な海軍演習が開始された。多数の艦艇や民間貨物船が海軍基地、主要港に停泊し、その周辺地域には陸軍の部隊が集結した。米軍情報関係者によれば、東部戦区に集結している演習参加部隊の兵力は30万人を超えているとのことである。
林東部戦区司令員は隷下部隊兵士に向けて、「祖国防衛の信念を貫け。諸君は歴史的偉業を達成し、その名が歴史に刻まれるだろう」と訓示した。
中国国内ではSNSへのアクセスが遮断された。
そのころ、欧米の偵察衛星が大規模な中国軍の動きを察知していた。貨物船に物資を載せる動きが活発化し、海軍陸戦旅団と、陸軍の一部の部隊が艦船への乗艦を開始していた。福建省とその周辺地域の空軍基地、飛行場には多数の輸送機、輸送ヘリコプターが集結、空軍空挺兵旅団や空中突撃旅団がその周囲に集まっていた。
海南島の海軍基地から晋級ミサイル原潜4隻が出航したのが確認された。
【Xデーマイナス4日】
( 台湾 )
政府要人や軍の高官を狙った暗殺事件が多発しはじめていた。頼総統の公用車に爆弾が仕掛けられたが、総統は危うく一命をとりとめた。
一連の要人暗殺テロにより、国防部次官や軍高官、与党議員などが死亡したり、重傷を負わされたりした。警察当局は、中国軍特殊部隊による斬首作戦であるとして要人警護の態勢を強化した。
台湾から脱出しようとする市民はますます増加した。道路は大渋滞となり混乱は台湾全土に拡大した。中国軍が台湾領空飛行禁止を宣言したことで、民間航空会社の定期便は軒並み運休となった。
再開を待つ市民でごったがえしていた台湾桃園国際空港や、台北松山空港のターミナルビル、台北駅・西門駅・北門駅・中山駅・善導寺駅の駅舎が何者かによって爆破され、多くの市民が死傷した。この一連の破壊活動で台北市の市内交通システムMRTが麻痺し、市民生活はさらに混乱した。
総統府は台北市、台中市、台南市、高雄市、基隆市などに非常事態を宣言し、戒厳令を敷いた。
( ハワイ )
中国軍の台湾侵攻が間もなく開始される――。インド太平洋軍は全軍に待機命令を出した。
ニミッツ空母打撃群は南シナ海を北に航行中で、ロナルド・レーガン空母打撃群は台湾海峡北部の東シナ海に、セオドア・ルーズベルト空母打撃群は石垣島南西海域付近に展開している。
ネブラスカ州オファット空軍基地の戦略軍司令部は、隷下の地球規模攻撃統合部隊(JFCC―GSI)と統合ミサイル防衛部隊(JFCC―IMD)に対し、核ミサイルを迎撃し弾道ミサイルによって反撃する態勢をとるよう命じた。
( 中国 )
ロケット軍司令部は戦略核ミサイル部隊の警戒レベルを最高度に上げ、計画に基づき移動式ミサイル発射機を森林地帯に機動展開させた。さらに衛星攻撃ミサイル部隊に発射態勢に入るよう命令した。
【Xデーマイナス3日①】
( 台湾 )
台北市内の空は黒煙に覆われていた。未明から行われた中国軍の弾道ミサイルや巡航ミサイルなど精密誘導兵器の攻撃によるものである。攻撃目標は台北市の総統府・国防部・外交部・内政部・経済部・交通部・海軍司令部・空軍司令部・憲兵司令部・海巡署(海上警察)及び桃園市の各政府庁舎や軍事施設に加えて、電気・ガス・通信施設などの重要インフラに及んだ。
台湾軍の通信組織には大規模な電子戦攻撃が仕掛けられ、大きな効果を発揮していた。中央から末端まで台湾軍のあらゆる部隊の指揮通信網が麻痺した。
中国軍は、偵察衛星や多数のドローンによって台湾軍の部隊、弾薬庫・燃料集積所などの場所を正確に把握し、ピンポイントで攻撃し確実に破壊していった。台湾空軍のバンカー(掩体壕)には、米軍のバンカーバスターと同種の地中貫通型ミサイルを使用した攻撃が行われ、バンカー内に収容されていた多くの戦闘機が破壊された。固定レーダーの防空レーダー施設はそのすべてが巡航ミサイルの攻撃によって破壊され、台湾空軍の防空警戒網は甚大な損害を受けた。
海軍基地も標的となった。基地内に停泊していた艦艇は対艦ミサイルによって沈没、大破した。陸軍の地上発射型対艦ミサイル基地にも巡航ミサイルが飛来し、多数の発射装置が破壊された。
台北市、台中市、台南市の沖合に設置されている機雷網は中国軍の無人水上艇と無人潜水艇によって安全化された。
変電所への攻撃により市内で大停電が発生。港湾近くのガスタンクが爆発炎上しガスの供給がストップした。電話会社のサーバー施設が破壊され、固定・携帯電話が使用できなくなった。
地方都市では、発電施設や燃料施設が自爆ドローンによって集中的な攻撃を受けていた。各都市で空襲警報のサイレンが鳴り響き、脱出しようとする市民の自動車が道路上に溢れて大渋滞を引き起こした。
港では多数の市民が貨物船や漁船に乗り込み、日本やフィリピンなどを目指して出港した。台湾東部の花蓮市沖合では、各国海軍がヘリによるピストン空輸を行い、自国民を脱出させた。
台湾総統府は、政府機能の一部を花蓮市に移設すると発表した。台湾陸軍参謀本部は、花蓮市に所在する第2作戦区の花東防衛部隊司令部を祖国防衛司令部に格上げした。
台北市、台中市、台南市の海岸線に埋設されている対戦車地雷などの対着上陸障害を広域処理するために中国軍が燃料気化爆弾を使用した。この爆弾は、一次爆発で液体燃料をガス化し拡散させ、二次爆発で広範囲に衝撃波と高熱を発生させる。その効果は障害処理にとどまらず、海岸部の住宅や台湾軍防御施設を焼き尽くしていた。
SNS上には「台湾政府の政策では、市民の被害が増加していく一方で、中国に降伏するべきだ」「台湾政府・軍は市民を盾にして、自分たちだけ助かろうとしている」など、政府批判が溢れていた。
中国の新華社通信は、台湾市民向けの放送を開始した。「人民解放軍は台湾同朋を解放するために作戦している。この責任は台湾の分裂主義者が取らなければならない」と繰り返し主張した。
【Xデーマイナス3日②】
( アメリカ )
ホワイトハウス報道官は「中国の攻撃は国連憲章違反であり、ただちに攻撃を停止するように求める」との声明を発表した。
( ハワイ )
インド太平洋軍司令部では作戦会議が連日行われていた。
「数日以内に中国軍が台湾に侵攻する。ホワイトハウス及び国防総省からの命令は出ないのか」
ロバートソン司令官の質問に、作戦部長が応じる。
「中国軍機や艦艇との直接交戦はしないようにとの命令に変更はなく、現在の台湾東部の太平洋地域及び台湾海峡の北部・南部海域の航行の自由確保命令が維持されたままです」
「日本の出方はどうだ」
「重要影響事態の認定を視野に、我が軍に対する支援を行う準備をしています」
「海兵隊の展開はどうなっている」
「現在、沖縄の海兵沿岸連隊を石垣島に輸送準備中です。輸送後、陸上自衛隊の駐屯地に配置します。またこれに加えて第1及び第2海兵遠征旅団を沖縄に輸送する予定です」
カリフォルニア州の第1海兵遠征軍、及びノースカロライナ州の第2海兵遠征軍は、隷下に各1個海兵遠征旅団を常設しており、兵員数はそれぞれ約1万5000人である。沖縄の第3海兵遠征軍は旅団規模を持たず、沿岸海兵連隊(MLR)2個を常設し、うち1個連隊をグアムに置いている。沿岸海兵連隊は歩兵大隊及び長射程対艦ミサイル部隊、高機動ロケット砲システム部隊から編成されている。
「北朝鮮に不穏な動きがあり、在韓米軍の陸軍、空軍は動かせない。イランやロシアの動向を見ても在欧米軍や中央軍からも大きな戦力は抜けない」
ロバートソン司令官は苦悩していた。
【Xデーマイナス2日~1日①】
( 台湾 )
前日の精密誘導兵器、自爆ドローン攻撃に続いて、この日は早朝から中国空軍爆撃機による大規模な航空攻撃が行われた。
攻撃の重点目標となるのは、台湾空軍基地の残存航空機・防空部隊及び陸軍の集結部隊や沿岸部防御施設などである。沿岸部後方地域に集結していた台湾陸軍の機甲部隊には燃料気化爆弾が投下されて、部隊は壊滅状態に陥った。
夜間に入り、台北市・台中市・台南市正面海岸では中国軍の掃海部隊によって残存機雷の掃海作業が隠密裡に続けられた。
中華電信とシンガポールのシンガポール・テレコムが共同運用しているST通信衛星など、台湾の使用している通信衛星にサイバー攻撃が行われ、数基の通信衛星が衛星攻撃ミサイルによって破壊された。これにより台湾の衛星通信は大打撃を受けた。
( 中国 )
政府機関・民間のインフラ施設に対するサイバー攻撃、それに続くミサイル・自爆ドローン攻撃、航空攻撃など、一連の上陸前準備打撃が終了。東部戦区第73集団軍3個海軍陸戦旅団を先陣に機械化合成旅団からなる一次侵攻部隊約16万の乗艦船する揚陸艦船が次々に発進した。
揚陸艦船群は、統制海域(艦隊の集合場所としてあらかじめ指定された海域)で侵攻地域別に艦隊を組み、台湾各地の目標海岸に向かった。各基地や飛行場では、空挺兵旅団や空中突撃旅団、輸送部隊が発進態勢に入った。
厦門対岸の東引島、馬祖島、金門島に巡航ミサイルによる攻撃など激しい砲撃を加え、中国海軍陸戦隊、陸軍特殊部隊が上陸し3島を短時間で制圧した。
台湾海峡の澎湖諸島にも巡航ミサイルによる攻撃、航空攻撃を行い、防衛部隊に大損害を与えた。
中国国防部は「現在の台湾の混乱は台湾自ら収拾することが不可能で、台湾市民を守るために必要最小限の特別軍事作戦を行う」と発表した。
「台湾の混乱収拾のための行動は内政問題であり、他国の干渉を断固拒否する」
続けて中国外交部が発表した声明は、台湾問題をあくまで「内政問題」とする主張を変えないことを表していた。
【Xデーマイナス2日~1日②】
( 台湾 )
台湾政府は、中国が武力侵攻を開始したとして国際社会に支援を要請する悲鳴にも似た声明を発表し、米軍の直接介入を強く求めた。頼総統は全市民に「中国の侵略に対して、軍は最後まで戦う。市民はパニックにならずに防空壕などに退避してもらいたい」と呼びかけた。
( アメリカ )
台湾の呼びかけを受け、アメリカが動いた。
アメリカ政府は「台湾への武力侵攻は国際社会の平和と安定を脅かすもので、断じて許されない」と声明を発表した。日本政府に対し、東シナ海で活動する米海軍艦船への給油などの後方支援を要請した。
インド太平洋軍司令部は、隷下の4軍に対し、「中国軍の攻撃を受けた場合には、ただちに反撃せよ」と命令した。
( 東京 )
日本政府は安全保障会議を開催し、情勢分析及び事態対処の方向性を審議した。この結果、米軍の後方支援に関して重要影響事態の認定を行い、自衛隊にその任務にあたらせることにした。
防衛省では緊急の防衛会議が開催され、防衛政策局長による事態認定の説明が行われた。
「重要影響事態に認定したが、すぐに存立危機事態、武力攻撃事態になるとの予想だな」と和田防衛大臣が確認した。
「そうです。中国側から見れば、米艦のそばにいる海自艦は共同で作戦行動を行っている敵艦です。万が一、米軍が攻撃されれば存立危機事態へ、同時に海自が攻撃されると武力攻撃事態です」
「中国側には、我が国の法体系は理解できないよ」と防衛副大臣が言った。
「日米の作戦調整は大丈夫か」
統合幕僚長が補足した。
「中央指揮所内に、統合副司令官とインド太平洋軍副司令官を長にした日米共同運用調整所を設置し、すでに作戦調整を開始しています」
『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』 (講談社+α新書)
山下裕貴
2023年4月19日
990円
216ページ
978-4065319598
「問題は、侵攻のあるなしではない。それがいつになるかだ」
中国の台湾侵攻について、各国の軍事・外交専門家はそう話す。
中国の指導者・習近平はなにをきっかけに侵攻を決断するのか。
その際、まず、どのような準備に着手するのか。
アメリカ・台湾はその徴候を察知できるのか――。
元陸上自衛隊最高幹部が、台湾侵攻を完全にシミュレーションした!
陸上自衛隊の第三師団長、陸上幕僚副長、方面総監を務めた元陸将・山下裕貴氏は、沖縄勤務時代には与那国島への部隊配置も担当した。中国人民解放軍、米インド太平洋軍、そしてもちろん自衛隊の戦力を知り尽くす。戦地となる台湾周辺の地形も分析し、政府首脳も参加する机上演習(ウォーゲーム)のコーディネーターも務める、日本最高の専門家で、本書はいわば、「紙上ウォーゲーム」である。
中国と台湾を隔てる台湾海峡は、もっとも短いところで140キロもある。潮の流れが速く、冬場には強風が吹き、濃い霧が発生して、夏場には多くの台風が通過する、自然の要害である。
ロシアによるウクライナ侵略では、地続きの隣国にもかかわらず、弾薬や食料などの輸送(兵站)でロシア軍は非常な困難に直面し、苦戦のもっとも大きな原因となった。
中国は台湾に向け、数十万の大軍を波高い海峡を越えて送り込むことになる。上陸に成功しても、その後の武器・弾薬・燃料・食料・医薬品の輸送は困難をきわめる。
「台湾関係法」に基づき、「有事の場合は介入する」と明言しているアメリカも、中国の障害となる。アメリカ軍が動けば、集団的自衛権が発動され、同盟国の日本・自衛隊も支援に回る。
つまり、自衛隊ははじめて本格的な戦闘を経験することになる。
日米が参戦すれば、中国は台湾、アメリカ、日本の3ヵ国を敵に回し、交戦することを強いられる。
それでも、習近平総書記率いる中国は、「必勝」の戦略を練り上げ、侵攻に踏み切るだろう。
そうなったとき台湾はどこまで抵抗できるのか。
アメリカの来援は間に合うのか。
台湾からわずか110キロの位置にある与那国島は、台湾有事になれば必ず巻き込まれる。与那国島が、戦場になる可能性は高い――。
手に汗握る攻防、迫真の台湾上陸戦分析!
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