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この世は地獄…出会いアプリでマッチョアピールして好みの女性をジム勧誘する男vs写真盛りすぎてマッチしてもリアルで会えない女

集英社オンライン / 2023年7月20日 11時1分

マッチングアブリ界をさまよい続け、婚活より自己肯定感の補完にハマって抜け出せなくなってしまった男女を『マッチング・アプリ症候群 婚活沼に棲む人々』(朝日新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

バキバキの腹筋にいいね!がつきまくる

44歳のシンさんのプロフィール写真を見た時、思わず目を疑った。腹筋している時の腹筋割れした腹部や筋肉の浮き出た二の腕をクローズアップしているのだが、完全にプロ仕様の鍛え方だ。

趣味にボクシング、と出ていたのでなるほどと納得したが、マッチング・アプリのプロフ写真に筋肉写真をアピールしているところは、かなりのナルシストな気がする。そして顔写真もやや童顔で顔立ちの整ったイケメン。これは筋肉好き、韓流細マッチョ好きの女性から「いいね!」が大量につくだろうと予測した通り、150以上の「いいね!」がついていた。そして私との相性は「98パーセント」という驚異のシンクロ率。アプリ入会以来初だ。



メッセージ付きの「いいね!」では最高に効く自重筋トレを教えてくれたし、性格もフレンドリーでいい人そうだったので、とりあえず「いいね!」を送ってマッチングしてみた。

LINEトークでも話が合いカフェで会って2時間おしゃべりをすると、意外なほど共通の趣味があって楽しかった。シンさんは元お笑い芸人で体を鍛えるためにフィットネスジムに通っていたが、今はそこでトレーナーとして働いているという。筋肉をつけたい人、ダイエットしたい人、体のラインを再デザインしたい人などに最適のプログラムや食事メニューを組んで、1人ずつ指導する仕事だ。

仕事がフィットネスならマッスル自慢も仕方ない。だが、「もしかしてそれって好みのお客さんと遊び放題っていうこと?」という疑惑もふつふつと湧き上がってくる。

2ヶ月経つといくつかの疑問点が出てきた

ジムのトレーナーがそこそこイケメンならすごくモテそうだし、気に入ったお客さんが来たらいくらでも誘うチャンスがありそうだ。イケメンかつ筋肉に自信があるスポーツインストラクター系の男性は、割とカジュアルな遊び人が多い気がする(あくまで個人的偏見)。

迷いがありつつも何度か会ううちに、シンさんはやさぐれていた過去についていろいろ話してくれた。

高校を出てから上京して1人で生きていくために黒服やバーテンダー、ホストと水商売をなんでもやった。甘めの童顔なので年上の女性に可愛がられることが多く、家に居候させてもらったり生活費を出してもらったりしていた。お笑い芸人になったのもそういう年上サポーターの支援のおかげだったという。

「でも年齢的な限界を感じて……。トレーナーの資格を取ってこの仕事を始めたら予想以上に面白くなった。そろそろ落ち着ける相手が欲しくなったが、職場ではお客さんを誘うのは絶対禁止だし、いろいろ面倒なので恋愛は一切なし。出会いの場がアプリしかない」

最初はそれを信じていたのだが、2ヶ月経つといくつかの疑問点が出てきた。

マッチしたのに退会していない…これは完全にアウトだ!

まずシンさんの家は埼玉でかなり遠い。なので頻繁に会えないのは仕方ないとしても、週末は朝から晩まで副業で会えないという。そして週末は連絡がほとんど取れない。もしかしたら他の女性と同棲しているor既婚者or二股かけている? 疑惑はどんどん膨れ上がっていくが、検証の方法がない。

このまま続けて大丈夫なのか、と悩んでいる時に、ふとプロフィールの腹筋割れ写真を思い出してもう一度、アプリを確認してみた。退会していたら信じられるかもしれないと思ったのだ。が……退会していない!

それどころかなんと、マッスル写真が増えている。今度は背中のバキバキな僧帽筋と脊柱起立筋が、思い切りクローズアップされていた。そして「いいね!」が一気に200にアップしている。

私とマッチングしても退会しないどころか、逆にマッスルをアピってマッチングを増やしている! これは完全にアウトだ。

黙ってフェイドアウトするのも腹が立つので、別れを告げる前に筋肉写真のことを追及してみた。

あの筋肉写真は、集客用の宣伝だった

「退会しないし、逆に筋肉写真をアップして『いいね!』を増やすってどういうこと?」

すると「月末で課金が切れるので、その時に退会する。筋肉の写真は試しにアップしてみたくなっただけで他意はない。あんなに『いいね!』がたくさん来るとは思わなかった」という苦しい言い訳が返ってきた。

それからも同じようなトラブルを繰り返し、3ヶ月で致命的な決定打が。

居酒屋で飲んだ時、あまりに頻繁にLINEが来るのでトイレに行った時にこっそり携帯をガサ入れしてみると……。ジムの会員と思しき5、6人の女性から頻繁にLINEが入っていて、「昨日、登録したから、今日遊びに行くね」とか「今日、トレーニングのあと空いてる?」とか……。

つまりシンさんはアプリで知り合い、関係を持った女性をジムに入会させ、同時進行で適当に転がしていたのだ。ジムは担当顧客の歩合制だから、そうすれば客も収入も増えるし欲望も満たせて一石二鳥。本当は私もその仲間入りのはずだったのに、深い関係になる前に踏みとどまれてよかった。

あの筋肉写真は、集客用の宣伝だった。

アプリに営業詐欺は必ず一定数はいる

やはり最初に抱いた違和感は正しかったのだ。おおっぴらな投資勧誘とかロマンス詐欺ではなくても、マッチングで集客しようとするシンさんのような営業詐欺は必ず一定数はいる。それに引っかかった自分も情けなさすぎるが、せめてこれを読んで反面教師にしてほしい。

ホストを始め水商売の裏を熟知しているシンさんは、飴と鞭の使い分けに長けている。結婚を前提とした交際を餌にするやり方はまさに、ホストの「釣り」とまったく同じだ。

そしてこういう相手ほど性的な関係に持ち込んで、相手を経済的にからめ捕るのが極めてうまい。性関係に進んでしまうと、アプリ外で起こるすべてのトラブルが降ってくる。

プロフィールや自己紹介に一つでも怪しいと思う要素があったら、絶対に深い関係に進まないことをお勧めする。さらなるマッチング依存の泥沼にハマって、身動きが取れなくなるから。

さらにもう一つ、最近は梅毒など性病が増加しているが、これは出会い系アプリの利用によって感染が拡大したのではないかと言われている。出会い系とマッチング・アプリ、どちらにも登録して獲物を待ち構えているナンパ師も多いので、要注意だ。

婚活の展開が非性的すぎるのも性的に流されるのもどちらも問題を抱えているが、後者はよりリスキーな方向に暴走しがちなのでご注意を。

「今度はどうやって会うのを断ろうか」

半年前、ある大手アプリに登録した会社員のリエさん(39歳)は、メールボックスにマッチングの通知を見つけて憂鬱になった。

相手は昨日、自分が足跡をつけた同世代の会社員だ。176センチ、細身で顔もリエさん好みのシュッとした細面だし、音楽や本の好みも割に近くて相性が良さそうだ。きっと会ったら自分は気に入るだろう。それなのに……。

「今度はどうやって会うのを断ろうか」

いつものようにそう考えている自分がいた。去年、リエさんがプロフィールにアップしたのは、人生最大に盛れた別人級の「奇跡の1枚」だったのだ。今年を逃したらもう婚活も難しいかもしれないと、写真の撮影にはかなりの時間とお金をかけた。

まずは美容クリニックで目元や口元にボトックスを入れて5、6歳若返る。それからヘアサロンでセミロングの髪色を暗めの清楚系に戻し、メイクは2時間以上かけた。肌のくすみや目の下のクマをコンシーラーでカバーし、奥二重をテープとマスカラ、アイラインで元の目の大きさの2倍はあるバッチリ二重にして、そのうえ、体型補正下着で胸を1.5倍にしたという。ライティングを万全にしたスタジオでプロに撮ってもらった写真は、もはやリエさんとは別人級に盛れていた。

盛れすぎた奇跡の写真をメイン写真にしてしまったので…

「その盛れすぎた奇跡の写真をメイン写真にしてしまったので、『いいね!』はすぐ200近くついた。みんなにきれいすぎて一目惚れした、こんな美人さんと一度でも会ってみたい、と言われれば言われるほど荷が重くなって。会うたびに2時間フルメイクしたとしても写真と現実は整形級に違う」

もう少しいつもの顔に近いものにしておけばよかったと後悔したが、今さら、写真を替
えるわけにもいかない。

リエさんには容姿コンプレックスがある。

子供の頃、周りに「お姉ちゃんはママそっくりで美人。リエは誰似?」「顔の系統が全然違う」と言われ続けて傷つき、成長しても容姿コンプレックスが抜けなかった。

「だから恋愛でうまくいかなかったり、採用試験に落ちるたびにやっぱり顔のせいかも、と思ってしまう。美人の姉や友人が周りにチヤホヤされて、職場でも男性上司に優遇されているのを見ると、どうせ自分なんかと卑下する感情が出てきてしまうし。そのたびに自分は価値がないと思って落ち込んでしまう」

盛りすぎ写真の裏に辛い過去

中学の頃、近視で目を細くしないとよく見えず、きつく見えたために「怖い」と言われたのもショックだった。すぐにコンタクトを入れて二重テープで少しでも大きく見えるように努力した。

「付き合っている彼が泊まりに来るとスッピンを見られたくなくて、メイクをしたまま寝てた。顔ばかり気にしてるから話も盛り上がらないし、退屈な女だと思われてるかもってますますコンプレックスが重なって。本当はあちこち整形をしたいけど、何百万円も貯金が貯められない」

アプリのプロフィール写真に渾身の写真をアップしたのも、そのコンプレックスを跳ね返すためだ。が、「自分なんか」と卑下する感情が強いためチヤホヤされると次の瞬間、谷底に突き落とされるのではないかと逆に不安になってくるという。

今までにマッチングした8人とは、メッセージのやりとりやLINEだけ。話が弾んで会いたいという人には、「今、別にお付き合いを考えている人がいる」と噓をついた。何のためにアプリに入会したのか自分でもわからなくなった。

「会った後で断られたらショックが大きくて立ち直れない。またコンプレックスが深くなりそうで」

だが今回、マッチングした相手は今までの人とは少し違っていた。

資金を貯めて整形手術を受けるか迷っている

他の人はみんな写真のリエさんを褒めてくれたが、彼はリエさんの入っているコミュニティがいくつも重なっていること、その中に自分も好きなミュージシャンのコミュがあったのがうれしかったと書いてくれた。それに彼の自己紹介には「一緒にいて楽な人がいい」「自分の前で自然体でいてくれる人が理想」と書いてある。

自分の現実の顔を見たら失望するかもしれないが、このまま誰とも会わずに退会するのも虚しすぎる。思い切って会ってみようかと考えている。

「まだ彼とこの先どうなるかわからないが、リラックスして自分を出せる関係になれたら。でも心のどこかで自分を好きになってくれる人なんか絶対いない、いたら気持ち悪いと思ってしまう」

リエさんは今、アイコン写真を奇跡の一枚からいつもの自分に近いものに替えるか、資金を貯めて整形手術を受けるか迷っている。

『マッチング・アプリ症候群 婚活沼に棲む人々』 (朝日新書)

速水 由紀子

2023年6月18日

979円

280ページ

ISBN:

978-4022952226

結婚相手を見つけ、2人で退会するのがマッチングアプリのゴール。しかし本書では、このアブリ世界に彷徨い続け、婚活より自己肯定感の補完にハマり抜け出せなくなってしまった男女を扱う。アプリで次々に訪れる流動的な人間関係の刺激は、中毒性が強い。相手をどんどん乗り換え続けることで生きる糧を得ている人々、離婚や失恋でトラウマを抱え、婚活と名乗りつつセフレ的な付き合いしかできなくなった人々、等身大な自分を見失って500の「いいね!」をコレクションし、自己肯定感の上昇のみを求める人々。マッチングアプリの婚活沼に依存するディープな住人たちを、「マッチング症候群」と名付ける。 * 恋愛をメンタルを不安定にするリスク要因と捉える20代にとっては、言い争いや修羅場、負の感情の存在しないアプリは心地よい理想の場。 * 年代が上がるにつれて利用期間が長くなり抜けにくくなる→40代50代は婚活ではなく、孤独な老後の友人達を増やすだけ * 特に数々の恋愛で目が肥え妥協できなくなっているアラフォー女性たちにとっては、イケメンな富裕層経営者やハイスペックなモテ男とマッチングし、会って食事できることほど自己肯定感を上げてくれることはない。その本命になるのはほぼ絶望的だが、高級店でディナーを奢ってもらい言葉上手に口説かれて舞い上がれる。「自分はまだまだイケてる」と信じられる…etc.

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