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水難事故が起こりやすい河川はどんなところ? 昼食後の14時~15時が要注意タイム…レジャー前に知っておきたい夏の水難事故の傾向とは?

集英社オンライン / 2023年7月21日 10時1分

夏休みにキャンプやバーベキュー、釣りなど水辺でのレジャーを計画している人もいるだろう。とくに河川や湖は都市部から近い場所もあり、身近な存在だが、毎年のように水難事故が発生している。どんなことに気をつけたらいいのか、公益財団法人河川財団 子どもの水辺サポートセンター 主任研究員の菅原一成さんにうかがった。

子どもの水難死亡事故の約6割が河川や湖沼池

「十分な装備と事前の気象情報、活動の場所の特徴をチェックすれば、河川は自然と触れ合えて、誰もが楽しく遊べる場所です。子どもたちやご家族で楽しく過ごしていただくためにも河川についての知識や水難事故の傾向など知っていただきたいです」と公益財団法人河川財団 子どもの水辺サポートセンター 主任研究員の菅原一成さん。



警察庁の発表によると2022年の1年間の水難事故発生件数は1346件。死者、行方不明者は727人にのぼる。そのうち、河川、湖沼(こしょう)池に限ると284人となり、39.1%を占める。

また、2003年から2022年までの子ども(中学生以下)の場所別の死者・行方不明者数は約6割が河川と湖沼池で亡くなっていて、海で亡くなった子どもの数の2倍以上に。
川はそれだけ子どもにとって身近な場所であるとともに、不慮の事故に遭いやすい場所でもあるといえる。

「警察庁の資料は、海や水の事故を統計的に公表されています。河川財団では、さらに河川等での水難事故の傾向を特化して把握するために、報道された河川での水難事故データを収集、整理し分析しています。
2003年から2022年における、河川財団が報道記事をベースに収集したデータの約8割は河川です。その他にダム・湖沼、用水路等も収集しています。河川等水難者総数約5306人の約6割が死亡・行方不明になっていて、一般的には軽微な事故は報道されにくい傾向にありますが、ひとたび水難事故が発生するといかに命の危険のリスクが高いかを物語っています」(菅原さん)

また、月別に水難事故の発生件数を調査(2003年~2022年)すると、7~8月の2カ月間の限られた期間に、年間事故件数の約50%が集中して発生している。夏期に事故が多発するのは、夏休みやレジャーなどで河川利用の機会が増えるからで、これからとくに注意しないといけない時期になる。

次いで、5月はGW 等でカヌーなどの川下りの事故、6月と9月はアユ釣りや悪天候による増水などに起因した事故が多く見受けられる。

「水難事故の時間帯についても調査すると、過半数が午後の時間帯に発生しています。なかでも14時~15時をピークとして、13時~17時の4時間に事故が集中しています。理由として暑さや疲労、昼食後の眠気、飲酒などが考えられます」(菅原さん)

琵琶湖、長良川、多摩川で水難事故が多発している

では、いったい日本全国においてはどの河川や湖沼で水難事故が多く発生しているのだろうか?
河川財団の調査(2003年~2022年)によると1位は琵琶湖で123件、2位は長良川で106件、3位は多摩川で65件だった。

傾向として大都市圏のあるいは地方の中核都市からのアクセスがよく、川遊びや釣りなどのレクリエーションやレジャーの場としてよく利用されているエリアで事故が起こっている。

「利用者数の絶対数が多いことや遠方から利用者による事故が見受けられます。
また、場所の特徴として、夏場のレジャーで川遊び、バーベキュー、キャンプによく利用される中流域の大きな河原のある場所や上流域のキャンプ場付近が『水難事故多発地点』の大半を占めています。事故発生時の利用行動としては、グループで川遊びに訪れて、遊泳や飛び込み遊びをしているうちに事故につながるケースが多いものと思われます」(菅原さん)

また、河川には河川を横断する形で設置された取水堰、頭首工や落差口、橋脚などの構造物があり、付近には複雑な流れや急な深みが潜んでいる場合があるので、飛び込みや転落による事故が多発している。こういった場所には近寄ることがないようにすることが大切だ。


「日本全国でどの場所で水難事故が発生しているか、河川財団では調査し『全国の水難事故マップ』(https://www.kasen.or.jp/mizube/tabid118.html)を作成して公表しています。過去に事故がない場所は安全、というわけではありませんが、レジャー計画を立てる前に、活動予定の場所の確認に活用ください」(菅原さん)

河川などにおける中学生以下の「子ども」の水難者数は全体の1/4

報道記事等から河川財団が収集したデータでは、河川での水難事故の年齢は、年齢幅が広い「大人」が約4割を占めるが、中学生以下の子どもは全体の24%になり、小さな子どもの事故の発生率の高さをあらわしている。

「報道等から収集したデータをもとに、幼児・小学生・中学生の川遊びに見受けられる事故パターンを整理しましたが、被災者の年齢が幼児から小学生くらいだと、河岸から転落しておぼれてしまうケースが多く見られます。

幼児や小学校低学年の児童が一人で遊んでいて転落した場合は、初期対応や救助行動ができないケースが多く、転落が死亡事故に直結した事例が多く見受けられます。

中学生になると幼児や小学生の事故で見受けられる転落による事故は少なくなり、かわりに川遊びや遊泳中の事故が増加します。危険箇所や増水時の川遊びによる事故もしばしば見られます」(菅原さん)

子どもたちだけでの川遊びに危険が伴うことがわかるが、大人同士やグループ行動だからといっても安心ではない。

「2003~2022年の間の調査において『同行者あり(グループで行動)』中の事故を、同行者の構成別にみた場合、最も多いのは『大人のグループ』で、全体の1/3(約38%)を占めています。家族連れなど大人に引率されたグループでも事故が多く発生していることから、グループに大人がいても決して安心ではなく、大人・子ども共に安全管理を行うことが重要です」(菅原さん)

また、水難救助行動中の約15%で助けようとした人が被災するといった二次災害が発生している。

「救助行動中に二次災害が発生した場合の特徴的な点は、子どもが含まれるグループでの事故が多くみられることです。すなわち、『家族連れ』」・『中学生以下の子どもだけのグループ』・『大人に引率された子どものグループ』で最初の水難事故が起きた場合、同行者がおぼれた子どもを助けようとして飛び込むなどし、二次災害に至るケースが多くみられます。その場合の二次災害の被災程度の多くは死亡・行方不明となっています」(菅原さん)

このような悲しい事故が起きないように、川の特性を知り、事前の準備をしっかりする必要がある。

安全な川遊びのための対策#2では、なぜ浅瀬でも溺れてしまうのか、二次災害がなぜ起こるのか、川遊びのために装備しておきたいグッズなどを紹介する。


※記事内のグラフ、表はすべて河川財団「No more水難事故2023」より一部抜粋・転載

取材・文/百田なつき

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