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ドローンビジネスの勝ち筋は「ソフトウェア」にあり。急成長ベンチャーの経営者が描くビジョンに迫る

集英社オンライン / 2022年5月18日 7時1分

次世代のテクノロジーとして注目を集めている「ドローン」。規制緩和などの影響もあり、その活用シーンは拡大しつつある。そして、これをビジネスチャンスと捉えて参入する企業も増えている。テラドローン株式会社 代表取締役・徳重徹氏もその1人だ。しかし徳重氏はドローンそのものではなく、ドローンを制御する「ソフトウェア」にビジネスチャンスを見出し、それが評価され、2022年3月には約80億円の資金調達を実現した。なぜドローンビジネスで「ソフトウェア」が高い評価を受けるのか。その背景からドローンビジネスの未来を探る。

ドローンや空飛ぶ車が、自由に飛び交う世界が到来する

もともと軍事技術として誕生したドローンは、民生化され現在ではレースや動画の撮影などでも利用されている。



しかし、これはまだ序章に過ぎない。なぜなら、かつてSFで描かれていたような「ドローンや空飛ぶ車が上空を自由自在に行き交う世界」が現実のものとなろうとしているからだ。

国内では2022年中に国が定めたドローン運用のフェーズである「レベル4」が解禁され、人が生活するエリアの上空でも、ドローンが飛行できるようになる。安全面を考慮して、無人地帯でしか飛行できなかった状況が一変するのだ。

これによりドローンが物流なども担えるようになろうとしている。

ドローンの安全性をどう確保するか

しかし、ここでふと疑問が浮かぶ。

ドローンは、本当に安全に飛行できるのかーー。

自動車であれば、信号機などにより安全性がある程度確保される。しかし、空に信号機はない。もし衝突などの事故が発生した場合、地上にいる人間にも危害が及ぶ可能性がある。一体、どうやって安全性が確保されるのだろうか。

この問題を解決するのがUTM(UAS Traffic Management)だ。

「UTMは対象となる空域のあらゆる航空機の情報と、地上の建物や気象など飛行に関連するあらゆる情報を収集し、コンピューターがドローンを制御して安全な飛行を実現するために必要なシステム(ソフトウェア)です」

徳重氏はUTMをこう説明する。2010年に二輪・三輪EVのテラモーターズを立ち上げた徳重氏は、2016年にテラドローンを創業。産業向けドローンサービスを国内外で提供している。

そして今、テラドローンが手がけるUTMには熱い視線が注がれている。

もともとドローンを活用した測量ビジネスで得た知見などを活かして自社開発したUTMはその実用性が高く評価され、現在、三井物産などと空飛ぶクルマの実証実験を重ねております。

それを象徴するかのように、テラドローンは2022年3月23日に総額80億円の資金調達を発表した。既存投資家であるベンチャーラボインベストメントのほか、三井物産やSBIインベストメント、東急不動産HD、九州電力送配電、西華産業等が新たに出資企業として名を連ねている。

また、今回の大型資金調達では海外交通・都市開発事業支援機構、通称“JOIN”も出資している。

JOINは国土交通省傘下で、海外の交通・都市開発事業への日本企業の参入を支援する目的で生まれた官民ファンドだ。従来は重厚長大なビジネスを中心に投資してきたものの、将来を見据えて成長産業への出資を決断した。

「ドローン革命」の主役はハードではなく”ソフトウェア”

しかし、なぜ官民から80億円もの金額がドローン本体ではなく、UTMを手がけるテラドローンに集まったのだろうか。

その理由について、徳重氏はこう読み解く。

「ドローンはITビジネスと比較されることが多いです。ITビジネスも最初はサーバーやパソコンなどの『ハード』が売り出されましたが、今はSaaSなど『ソフトウェア』の売り上げが大部分を占めるようになっています。ドローンも同じように、やがてソフトウェアビジネスの方が圧倒的に大きくなるでしょう」

「IT革命」ならぬ「ドローン革命」の鍵を握るのは、ソフトウェアにありーー。

徳重氏は、会社設立当初からこれを見抜いていた。当時から需要があった空撮や測量、点検、データ分析などを手がけてビジネスを堅調に拡大させ、まずはドローンの活用方法に関する知見を蓄積して「ビッグビジネスを生むための仕込みを行っていた」という。そして、この知見をソフトウェア開発に反映させ、より実用的なソフトウェアを開発した。

その1つが、空の安全を司るソフトウェア・UTMだったというわけだ。

現在、テラドローンはUTMの自社開発を行うだけでなく、運行管理システムの導入数世界一であるベルギー法人のUnifly(ユニフライ)の筆頭株主にもなり、グローバル展開を見据えて共同で次世代システムの開発にも取り組んでいる。

徳重氏がUTMに注力するのには、もう1つ理由がある。それは心の底にある「日本からメガベンチャーを生み出したい」という想いだ。

徳重氏はかつてシリコンバレーで数々の起業家たちの育成に携わり、メガベンチャーの誕生を目の当たりにして「日本との差を見せつけられた」と悔しさを味わった。その後立ち上げたテラモーターズはインドや東南アジアで高いシェアを獲得し、メディアからも注目を集め、上場にリーチをかけるほどになった。

EVの二輪・三輪を手がけるテラモーターズ。インドや東南アジアで着実にビジネスを伸ばし続けてきた

しかし、単に上場するのは「性に合わなかった」という。

「私が頭の中で描いているのは常に”ビッグビジネス”。目指すところは新産業で世界を獲ることで、そのためにリスクを承知でテラドローンを創業しました」

壮大なビジョンと堅実さを持ち合わせ、競争を勝ち抜く

一方で、オフィスは実績を有する52歳の経営者が構えるものとは思えないほど質素だ。それもそのはず、現在のオフィスはシリコンバレーならぬ「ビットバレー」の渋谷から羽ばたいた、数々のベンチャー企業が創業当初に入居していた部屋だ。

徳重氏は「オフィスだけ大きいのはどうかと思います」と語り、こう続けた。

「僕たちはビジョンは大きいですけど、地道にやる。本当に地道なんですよ」

この徳重氏の発想が、UTMというビッグビジネスの種を引き寄せたのかもしれない。

今後さらなる活用が見込まれるドローンビジネスは、まだまだ黎明期だ。だからこそ、徳重氏は大きな展望を描く。

「ドローンも空飛ぶ車も新しい産業で、いずれEVのように時代が追い付くはず。そのときに世界のトッププレーヤーであることを目指しています。日本の会社でも世界レベルのメガベンチャーになれることを示せば、若い人にチャレンジ精神や世界に対して自信を持ってもらえる。その一役を担いたいですね」

そう語る徳重氏を含め、新産業の覇権を握る“ゲームチェンジャー”の座を狙い、世界規模での競争はまだまだ続く。そして、その争いの激化によって、まだ見ぬ未来の実現に向けたスピードは、さらに加速するだろう。

溢れんばかりの野心と蛮勇を持ち、今も成長途上だと自認する経営者の戦いは、まだ始まったばかりだ。

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