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【朝ドラ・らんまん】キンモクセイやハルジオンも牧野富太郎(槙野万太郎)氏の命名だと知ってた? “らんまん”な笑顔で名付けられた「美しい」花の名と「残念」な花の名

集英社オンライン / 2023年7月30日 9時1分

放送中のNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公・槙野万太郎のモデルである植物学者の牧野富太郎氏。その生涯で1500種類以上の植物に名前をつけたと言われているが、中には「いったいどうして、こんな名前をつけられてしまったの…」と同情したくなる、残念な植物もある。集英社オンラインが選んだ植物たちを、命名したときのエピソードと共に紹介する。 写真/高知県立牧野植物園提供

キンモクセイの学名に牧野氏の名前

幕末の土佐で、裕福な商家の長男として誕生した牧野富太郎。幼い頃より草花に心惹かれた富太郎少年は、たったひとりで土佐の植物を研究し、22歳のときに上京。東京大学理学部植物学教室に出入りを許され、本格的な植物研究に没頭する。



明治22年(1889年)に新種「ヤマトグサ」に日本で初めて学名をつけて発表して以来、94歳でこの世を去るまで1500種類以上の植物に名前をつけたと言われている。

牧野富太郎氏 神木隆太郎演じる槙野万太郎のモデルとなった人物だ 写真/高知県立牧野植物園提供

たとえば、金木犀(キンモクセイ)」の学名は「Osmanthus fragrans var. aurantiacus Makino」。名付け親である牧野氏の名前が入ったこの植物は、秋の訪れを告げる香りとして愛されている。

ユーミンやYOASOBIの曲名にもなっている春紫苑(ハルジオン・ハルジョオン)は、北アメリカ原産の外来種。道ばたで咲くこのかわいい花に「春に咲く紫苑(キクの仲間)」という和名を付けたのも、牧野氏なのだ。

牧野氏本人と、最愛の妻の名前がつけられた植物もある。

和名・マキノゴケ、学名・Makinoa crispataと、どちらにも「マキノ」と入っているコケに名前をつけたのは、牧野氏と終生交流のあった植物学者・三宅驥一氏。

秋田県で採集されたこの苔は当初、別の名がつけられたが、牧野氏が千葉県・清澄山で採集して三宅氏が調べたところ、別のカテゴリーに属することを突き止めた。そこで、三宅氏は牧野氏へのリスペクトを込めて「マキノゴケ」と名付けたそうだ。

マキノゴケ科 マキノゴケ属 東南アジアを中心に分布し、日本では全国の暗く湿った地面や岩、倒木などに生える苔。オスの株とメスの株に分かれていて、どちらも縁の部分が少し波打っている。 写真/広島大学大学院統合生命科学研究科 嶋村正樹


朝ドラ「らんまん」では、「寿恵子」として浜辺美波が演じている妻・壽衛さんは、13人の子どもを育てながら、夫の研究を支え続けた。しかし、念願だった一軒家を建てた直後に病に倒れ、54歳という若さでこの世を去る。

壽衛さんが病床にあるとき、牧野氏は仙台で新種のササを発見し、壽衛さん亡き後スエコザサと命名。『世の中のあらん限りやスエコ笹』という句を墓碑に刻んだ。

牧野氏は壽衛さんのお墓に植えようと庭で育てたが、そのスエコザサは今も、牧野家の庭、現在の練馬区立牧野記念庭園で美しい葉を広げている。

イネ科 アズマザサ属
本州の宮城県以北に見られる常緑の笹。高さ40cm程度。葉は長さ10cm程度の被針形。

最愛の妻、壽衛さん 高知県立牧野植物園提供

ところが、である。

このような美しい名前や、せつない名前を植物につけた牧野氏にも、「いくらなんでもこの名前はないんじゃない!?」と植物が抗議しそう草花もあるのだ。

ここからは、そんな残念な名前の植物を紹介しよう。

見覚えのある植物についた、残念すぎる名前

大きな犬の○○!? オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)

オオバコ科 クワガタソウ属
花期は2月〜4月。草丈は15cm〜30cmで地面を這うように広がり、陽が当たっている間だけ花を咲かせる1日花。

春の訪れを告げるように、可憐な青い花を咲かせるこの花は、誰でも一度は目にしたことがあるはず。ところが、名前を知ってビックリ。

なんと、大きな犬のフグリ…陰嚢…つまり睾丸だというのである。どうして牧野氏は、かわいい花に似合わない名前をつけてしまったのだろうか?

実はイヌノフグリという植物は、江戸時代後期に出版された植物の本に載っている、在来種。果実の形がオス犬の陰嚢に似ていることから、そう呼ばれていたという。

しかしあるとき牧野氏は、イヌノフグリより大きな花を咲かせるものを発見。調べてみたところ、ヨーロッパ原産のVeronica persica Poir.であることが判明し、和名を「オオイヌノフグリ」とした。

『新牧野日本植物図鑑』には「蒴果ハいぬのふぐりニ似テ大ナリ」とあり、どうやら花だけでなく、フグリのほうもビッグなようだ。

ちなみにイヌノフグリの仲間には、タチイヌノフグリやコゴメイヌノフグリなどもあるが、いずれも牧野氏の命名ではないとのことである。

掃き溜めに鶴…ではなく、ハキダメギク(掃溜菊)

キク科 コゴメギク属
初夏から秋にかけて、道端などに生える菊。高さは10〜40㎝ほどで、直径が5㎜ほどで、真ん中の部分は黄色、花びらが白い小さな花は、よく見るとかわいらしい。明治以降に日本に入ってきた外来種。

ヘクソカズラ(命名は牧野氏ではない)と共に、残念な名前の代表といわれるのが、このハキダメギク。

なにしろ、ハキダメとはゴミ捨て場のことなのである。牧野氏が東京世田谷区経堂のゴミ捨て場で見つけたのでこの名がついた…というのはけっこう有名なエピソードなのだが、調べてみると牧野氏がこのとき見つけたのはコゴメギクという種類かもしれないのだという。

この2つは本当によく似ていて、強いて言えばコゴメギクのほうが花びらが小さく、地味かなというくらい。いずれにしても、ゴミ捨て場の菊という名前をつけられてしまった菊の花は「残念…」と思っているに違いない。


まるで悪いポケモンみたいな、ワルナスビ(悪茄)

ナス科 ナス属
欧州原産の多年草。高さ30〜50センチほどで、茎、葉、花のガクにトゲを持つ。初夏に白、または淡紫のジャガイモに似た花を咲かせたあと実がなるが、食用にはならない。

悪いなすびと名付けられたこの植物は、その名の通り、畑の悪者。牧野氏が下総(千葉県)を訪れたときに牧場で見つけ、珍しいと思って持ち帰り、自宅の畑に植えた。すると、あっという間に大繁殖し、隣の農家の畑にも入り込むほどになったという。

茎や葉にはトゲがあり、実を食べることもできないため取り去ろうとしても、ほんの少し残った根から芽が出てしまい、キリがない。この顛末は牧野氏の著書『植物一日一題』に詳しく書いてあり、どれほど困り果てたのかが偲ばれる。

ワルナスビはアメリカでも「Apple of Sodm(ソドムのリンゴ)」などと呼ばれて嫌われているそうだ。

ネガティブイメージの生き物の名前をもらってしまった植物たち

咬まれたら大変!? ムカデラン(百足蘭)

ラン科 ムカデラン属
関東以西の太平洋側・四国・九州の、日当たりの良い岩の上や木の幹に着生する常緑のラン。初夏に小さな淡い紅色の花を咲かせる。

ムカデといえば気持ちの悪い見た目と、咬まれたら激しい痛みと腫れに襲われることから、忌み嫌われる生き物。

一方、ランは胡蝶蘭に代表されるゴージャスで美しい花で、愛好家も多い。この2つの名が合体したムカデランとは…?

明治20年、牧野氏は高知県吾川郡吾川村(現・仁淀川町)の仁淀川沿いの岸壁で、謎の植物を発見。茎の両側に短い多肉状の葉がたくさん生えている様子がムカデに似ていることから名付けたのだというが、小さな花はランそのもの。もう少しかわいらしい名前をつけてあげてほしかった。


水中にただよう尻尾、ムジナモ(貉藻)

モウセンゴケ科 ムジナモ属
水性の食虫植物で、根は無く池や沼に浮いている。二枚貝のような葉を閉じてミジンコやボウフラなどを食べる。世界的にも稀少な植物で、現在生息地は50カ所程度といわれている。


ムジナとは、タヌキやアナグマの総称で、日本の民話などでは悪者として登場することが多い。

そんな残念な名前をつけられた藻は、明治23年に牧野氏が東京・江戸川の用水路で「異様な物」が水の中を漂っているのを発見。調べたところ、ヨーロッパやインド、オーストラリアの限られた場所で確認された希少種であることが判明した。

牧野氏は、「まことに奇態な姿を呈している水草」といい、「獣尾の姿をして水中に浮かんで居り、かつこれえが食虫植物であるので、かたがたこんな和名を下したのであった」と随筆の中で語っている。

このムジナモは滅多に花をつけず、咲いたとして開花しているのは1〜2時間ほど。しかも、その花はわずか5㎜と小さく、幻の花と言われている。

『日本植物志図篇』第1巻第12集より 高知県立牧野植物園所蔵

ここまで、牧野氏が命名した残念な名前の植物を紹介してきたが、「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎氏が〝らんまん〟な笑顔で成し遂げた研究は、今も色あせることはない。

牧野富太郎氏 らんまんの笑顔がよく似合う 写真/高知県立牧野植物園提供

★高知県立牧野植物園と北隆館のサイト内で、牧野富太郎生誕150周年共同事業として作成した『牧野日本植物図鑑 インターネット版』が閲覧可能。

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