親へのイラつきや不信感は、あなたのせいじゃない。有無を言わせず子どもを自分の都合に巻きこむ“精神的に未熟”な4タイプの親
集英社オンライン / 2023年7月23日 12時1分
本来であれば誰よりも信頼できる“親”という存在だが、近年は親との関係に苦しんでいる人が増えている。なぜこのような親子関係が生まれてしまうのか『親といるとなぜか苦しい 「親という呪い」から自由になる方法』(東洋経済新報社)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
ご機嫌取りに子どもを利用する
精神的に未熟な親にもさまざまなタイプがあるが、子どもに孤独や不安な思いをさせるのはいずれも同じだ。愛情を与える方法は基本的に1つだが、子どもが愛情を求める気持ちを台なしにする方法はたくさんある。
精神的に未熟な親は、その未熟さのタイプに応じて4つにわけられる。どのタイプも、形はちがえど子どもの気持ちに鈍感で、不安をもたらす。
すべてのタイプの根底には精神的な未熟さがある。いずれも傾向として、自分のことしか考えず、やたらと自己評価が高く、精神的に頼りにできない。
また、わがままで無神経、親密になるための能力がとぼしい、といった特徴がある。一様に不適応な対処戦略で現実に対処するのではなく、現実をゆがめる(ヴァイラント、2000年)。
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そしてどのタイプも、自分が機嫌よくいられるために子どもを利用し、しばしば親子の役割を逆転させ、有無を言わせず子どもを大人の問題に巻きこむ。
加えて、他者の感情に共鳴する力がとぼしい。相手の心の境界線を平気でずかずか越えていくか、まったくかかわろうとしないという、両極端な問題も抱えている。
ほとんどのタイプが苛立ちに対する耐性が低く、自分の望みをかなえたければ、言葉でのコミュニケーションよりも精神的な駆け引きをしたり、相手を脅したりする。どのタイプも、子どもを独立した個人とみなすことを拒み、あくまでも自分の欲求にもとづいて自分にしばりつけておく。そしてすべてのタイプで、子どもは最終的に「自己喪失」(ボーエン、1978年)を感じるようになる。
各タイプについてみていく前に、かつての研究――多様な子育てのタイプが乳児の愛着行動の質におよぼす影響――についてかんたんにおさらいしておこう。
何が乳幼児の愛着に影響するか
メアリー・エインスワース、シルヴィア・ベル、ドネルダ・ステイトンは幼児愛着の研究をおこなった(1971、1974年)。長年にわたりくり返された研究だ。この研究には、母親の特性――乳児の愛着行動が安定型か不安定型かの特性を観察し、明確にする、というものも含まれた。1974年に発表された論文で、乳児に対する母親の行動を4つの特徴から評価した。
敏感性⇔鈍感性、受容⇔拒否、協調⇔干渉、近づきやすさ⇔無視、だ。そして、母親の「敏感性尺度」が「大事な変数」であることをみいだした。
「敏感性の高い母親は、例外なく受容、協調、近づきやすさの尺度も高く、ほかの尺度のいずれか1つでも低い母親は、敏感性もまた低い」ということだった。
母親が敏感であればあるほど、乳児もより安定した愛着行動を示すことが実験において明らかになったとしている。
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論文では、安定型の愛着行動を示した乳児の母親、敏感性の高い母親を次のように説明している。
「敏感性の高い母親は一般に乳児に心を開いており、乳児が発するごくかすかなコミュニケーションやサイン、願望、気分の変化にも気がつく。さらに、乳児の感覚を正確に理解し、共感を示す。したがって、すべてにおいてふさわしいやりとりを、適切なタイミングで乳児とおこなうことができる」
だが不安定な愛着行動を示す母親の行動はちがう。次に紹介するのはエインスワースらが言う敏感性の低い母親像だ。
敏感性の低い母親は乳児の行動の多くに気づかない。乳児を無視するか、かすかでわかりづらいコミュニケーションを認識できないのだ。行動に気づいても、その意味が理解できずゆがめて考えることも多い。
多少は理解できていても、共感はむずかしい。そのため適切なコミュニケーションがとれない。対応ができてもその種類や質が不適切なことが多い。つまりちぐはぐで中身がないのだ(エインスワース、ベル、ステイトン、1974年)。
要するに、母親の敏感性と共感力のレベルが、母子関係における乳児の愛着行動の質に多大な影響をおよぼしているのだ。
いつまでも「幼稚なままの親」4つのタイプ
前述の研究結果を踏まえて、ここからはわたしが分類した4つのタイプについてみていこう。いずれのタイプにも顕著なのが、子どもに不安感をもたらす可能性だ。子どもの精神的な安定がどうむしばまれていくかはそれぞれ異なるが、共感がとぼしく、精神的なサポートができず、敏感性が低いのは同じだ。
またどのタイプにも、程度の差こそあれ利己主義が存在することも忘れないでほしい。ひどいときには、親が精神的に病んでいたり、心身の虐待をしている場合もある。
1|「感情的な親」
感情のままに行動し、過干渉かと思えば急に突き放したりする。不安定で、突拍子もないことをしがちだ。不安に圧倒されると、他者を利用して自分を落ち着かせる。些細なことで大騒ぎし、相手を、自分を助けてくれるか見捨てるかのいずれかとしてみる。
2|「がむしゃらな親」
異様に目的志向が強く、やたらと忙しい。他者を含め、あらゆるものを完璧にしようとせずにはいられない。しっかりと時間をとって、子どもの心にきちんと寄り添うことはしないのに、子どもの人生のこととなると、コントロールしたり口出ししたりする。
3|「受け身の親」
放任主義で、不安をかき立てられるようなことには一切かかわらない。有害性は低いが、独自の弊害をおよぼす。支配的な相手には一も二もなく従い、虐待やネグレクトもみてみぬふりをする。問題を避けたり黙認したりすることで切り抜けているのだ。
4|「拒む親」
そもそもなぜ家庭を持ったのかと思うような行動をする。精神的な親密さをよしとせず、子どもにわずらわされるのを露骨にいやがる。他者の欲求への耐性はほぼ皆無。彼らにとっての交流とは、命令し、怒鳴りつけ、距離を置くことだ。多少おだやかなタイプであれば、家族ごっこはするかもしれないが、あくまでも表面的だ。もっぱら自分の殻にこもって好きなことをしたがる。
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そして、これら4つのタイプが混ざっている親もいる。通常ほとんどの親がどれか1つのタイプにおさまるが、ある種のストレスにさらされると、ちがうタイプにみられる行動をする親もいる。
そして、いずれのタイプにも共通する特徴があるのもおわかりだろうか。
彼らはみな、子どもが安心感を抱ける関係を維持できないのだ。もちろん、タイプごとに欠けている点はちがう。
『親といるとなぜか苦しい 「親という呪い」から自由になる方法』(東洋経済新報社)
リンジー・C・ギブソン (著)、 岡田尊司 (監修)、 岩田佳代子 (翻訳)
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2023年5月24日
1,650円
288ページ
978-4492224106
\ 全世界で大共感の声50万部突破 /
「親のために努力し続けて、しんどい――そんな自分に気づき、涙が止まりません」
「共感できることがありすぎて、すべてのページにマーカーを引きたい」
「未熟な親のもとで育ち、自分を大切にする方法を知らなかった私のために書かれた本」
「これほど人生が変わる本はなかった!」
見た目は大人だが、精神年齢は子どものままの親が子どもを苦しめる。
愛したいのに愛せない親を持つ人が「心の重荷」を降ろす方法
◆家庭環境は平凡です。だけど親が嫌いです
◆「本当にやりたいこと」が見つからない…
◆私は家族の落ちこぼれ?人生がむなしいです
◆恋愛が苦手。どうしていいかわかりません
こうした「生きづらさ」を抱える人は、
「自分がヘンなのではないか」と悩むことが多いでしょう。
でも、その原因が子ども時代にあるとしたら…?
あなたに呪いをかけ、いつまでもあなたを苦しめる
「見た目は大人、中身は子どもの親」の4タイプとは。
◆感情的な親……機嫌を損ねないかと周囲はビクビク
◆熱心すぎる親……子どもの気持ちを無視した「完璧主義」
◆受け身な親……見て見ぬふりで役に立たない
◆拒む親……冷たく無関心。なぜ子どもを持ったのか謎
「まわりの人たちは家族の愛やつながりを明るく語るのに、なぜ自分は孤独を感じるのか。
家族と仲よくしようとするだけで、傷ついたり無力感にさいなまれたりするのはなぜだろう。
親から受けたつらい思いや混乱から、どうやって子どもは立ちなおっていけばいいのだろうか。
本書ではその解決のヒントを提示する」
――著者 リンジー・C・ギブソン
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