スマホを使いすぎて、腕が悲鳴!? まるで四十肩のような症状…若い世代でも肩が上がりにくくなってしまうのはなぜ？

最近、中高年だけでなく、若い世代でも肩が上がりにくいという不調を訴える場合がある。その原因の一つに挙げられるのが、スマホの使いすぎによる腕の筋肉の“硬さ”。なぜ腕の筋肉が硬くなるのか、予防・改善するためのほぐし方について、GENRYU綜合整体 院長の安部元隆先生に解説いただいた。

スマホの使い過ぎで上腕三頭筋が硬くなる

私のクリニックに、若い人でも突然肩が上がらなくなったという四十肩・五十肩のような症状を訴える患者さんが駆け込んでくることがあります。
四十肩や五十肩の原因は未だに解明されていませんが、加齢などによって肩の骨から肩甲骨にある小円筋や、肩甲骨から上腕骨まである大円筋が硬くなっている場合が多いです。

しかしながら、最近患者さんを治療していると、腕の後ろ側の筋肉、上腕三頭筋が硬くなって、若い人でも肩が上がりにくい、手がしびれるという症状が出ています。

運動不足といった、生活習慣によるさまざまな原因はありますが、その一つとして、長時間のスマホの使用が考えられます。

今やスマホなしの生活は考えられませんが、長時間ゲームをしたり、動画を見たりしているとき、腕は常にスマホを支えている状態です。

スマホを支えるために特にがんばっている筋肉が腕の裏側にある上腕三頭筋です。
肩の後ろに後下方関節包という肩関節を包む線維性の袋の部分があり、そこは上腕三頭筋長頭と繋がっています。

腕でスマホを支えている姿勢はこの上腕三頭筋が常に緊張状態になっていて縮んでいるのです。
当然、繋がっている後下方関節包も縮んだ状態のままです。

筋肉は伸び縮みすることで動くため、肩を上げようとして上腕三頭筋を伸ばそうとしても筋肉が固まってしまい、伸びづらくなってしまっています。

さらに上腕三頭筋と繋がっている後下方関節包も引っ張られるようになり、腕が上げにくい、肩甲骨を後ろに引っ張りにくいと感じるようになってしまいます。

上腕三頭筋は普段あまり使われていないので、硬くなっていても気づきにくい筋肉です。
そのため、その硬さに気づかずに、肩を上げようとしてしまいます。すると、上腕三頭筋が動きづらい分、肩の上部にある三角筋やインナーマッスルの棘下筋（きょくかきん）などを余計にがんばって使わないといけなくなり、それが四十肩や五十肩のようになる原因になってしまう場合があります。

スマホの使いすぎで、知らず知らずに上腕三頭筋が硬くなり、腕や肩の不調を招いてしまっている…。
そういったことがスマホを長時間使う若い世代に見られるのです。

また、四十肩や五十肩以外でも、上腕三頭筋が硬くなることで、首の痛み、猫背、巻き肩の原因になってしまうこともあります。

ほぐすことで二の腕のたるみ解消にも

とはいえ、スマホは今や生活に欠かせないものなので、使う時間をいきなり短縮するのは難しいですよね。
なので、できれば長時間使う場合はスマホスタンドなどを使い、腕に負担がかからないようにしましょう。

また、四十肩や五十肩の予防のためにも、日頃から上腕三頭筋をほぐすことが大切です。
スマホを使いすぎたなと感じたら、しっかりほぐしましょう。

ほぐす箇所は、二の腕の裏側の真ん中ぐらいの肘の上部、上腕三頭筋内側部と外側部の筋肉の分かれ目、上腕三頭筋長頭そのもの、の3つです。

ほぐしやすいように机やテーブルに肘をついて、姿勢を安定させるとやりやすいです。

まず、肘の上部からです。肘の付け根の硬い骨から指４本分の肘の上部に、人差し指、中指、薬指を添えて横方向と、縦方向に動かして10秒ほどほぐします。

次に肘の上部から指3本分の上腕三頭筋内側部と外側部の筋肉の分かれ目をほぐします。
上腕三頭筋が硬い人はここを指で押すと痛いはずです。
ここを同様に横方向と、縦方向に動かして10秒ほどほぐしましょう。

最後に肩甲骨側に指1本分ずらして、上腕三頭筋長頭を横方向と、縦方向に動かして10秒ほぐしてください。

これを続けると上腕三頭筋が柔らかくなって肩の動きがスムーズになり、二の腕もすっきりしてきます。

1日1回、体が温まったお風呂上がりが効果的です。
スマホを長時間使う人は仕事や作業の合間などに2～3回ほぐすとよいでしょう。

上腕三頭筋がほぐれてしっかり使えるようになることで、二の腕のたるみ解消にも繋がります。

上腕三頭筋は腕の前側の上腕二頭筋に比べて、普段の生活ではあまり使われにくい筋肉です。

そこにスマホを使いすぎることで、腕の裏側がさらに硬くなると、二の腕もたるみがちに。
二の腕が気になる人もぜひ上腕三頭筋をしっかりほぐしてみてください。

スマホを見すぎたり、なんとなく手のしびれを感じたりしたら、二の腕を意識的にほぐして、肩周りをすっきりさせましょう。


取材・文／百田なつき