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「中華そば、餃子、生ビール」3品で1000円を絶対超えない…値上げラッシュの中で「日高屋」が守り続ける価格への美学

集英社オンライン / 2023年8月2日 10時1分

飲食店の値上げが止まらない。日本経済新聞の調査によると、2022年度に飲食業の9割超の企業が値上げしたものの、食材高騰や人手確保の費用を補えず、52.6%の企業が今年度のさらなる値上げを予定しているという。ここ数年間の中でも昨年から今年にかけての値上げラッシュの加速ぶりには目を見張るものがある。

#2

日高屋で通常のラーメン店の3倍注文されるもの

関東近郊を中心に400軒以上を店舗展開するチェーン「日高屋」は昨年8月に続き、今年3月にも値上げを敢行した。しかし、その値上げ幅が独特で、そこに1つの哲学を感じる。

中華そば 390円(据え置き)
野菜たっぷりタンメン 570円(+20円)
餃子(6個) 270円(+20円)


チャーハン 490円(+10円)
肉野菜炒め定食 780円(+30円)
唐揚げ定食 790円(+30円)
キリン一番搾り(中ジョッキ) 340円(+20円)

店舗内のショーケースには価格付で商品のオブジェが並ぶ

メニューによって10~50円と値上げ幅が異なること、その値上げ幅が元の価格と比例しているわけではないこと、さらには「中華そば」の価格は390円で据え置きだったことがとにかく気になった。「日高屋」を運営する株式会社ハイデイ日高の商品部部長・鈴木昌也さんにこのあたりの話を聞いた。

そもそも「日高屋」の始まりは創業者で現会長・神田正さんが1973年2月にさいたま市大宮区で開店した町中華 「来々軒」。1994年に「ラーメン館」というラーメン専門店をオープンした。

日高屋@新宿中央店

「町中華」と「ラーメン専門店」を展開してきて、神田さんはあることに気付いたという。

「今までやってきた業態のそれぞれのよさを生かして、『ラーメン専門店』と『町中華』の“間”のお店をやろうということになったんです。ラーメンをメインにしながら、炒め物のメニューが少しあるお店です。これが『日高屋』の始まりです」(鈴木さん)

出店は駅前の一等地にこだわり、古くからある「屋台」の代わりになるお店を目指した。お酒を飲む人はおつまみが炒め物だけだと、注文が限られてしまうと考えて、2004年頃からジャンルを問わないおつまみメニューが増えていった。当時はサバの味噌煮やさつまあげ(※現在はともに販売なし)など町中華とも違うおつまみメニューが増え、屋台の代わりになるお店として独自の立ち位置を確立していった。

「『日高屋』は売上高に占めるアルコールメニューの割合が15%になっています。一番多い店舗だと18%です。通常のラーメン店ですと5%程度ですので、その3倍というとても高い数字になっています」(鈴木さん)

「日高屋」の平均客単価は…

おつまみを充実させたことでちょい飲み需要が増え、ここが今後の伸ばしどころだと考えた。そこで目指したのが「飲んで食べられる店」だ。

「日高屋」は老若男女さまざまな客層がさまざまな利用動機で訪れており、、学生や女性のひとり客も食事で訪れる。食べるのが中心の店や飲めるのが中心の店が多くあるなかで、両方のバランスが取れているのが、一つの強みとなっていった。

「ちょい飲み」を掲げる日高屋では低価格なおつまみが人気

「手軽で敷居も低く、入りやすいお店であることが大事です。時間帯によっても客層によっても全員目的が違うので、どんな層でも満足させられるお店作りを心掛けました。
そのためには“小汚いラーメン屋”というイメージから離れる必要がありました。店の前には提灯をつけ、とにかく店が明るく、衛生的であること。やがて暗い夜道でも『日高屋』があると安心と言われるようになり、男性メインだった客層も変わっていきました」(鈴木さん)

食事に来たお客さんでもお通しなしで手軽にビールを一杯飲める。そんな店作りをしたことで、客層はどんどん広がっていったのである。

アルコールメニューの割合をもっと高めることもできたが、あえて15%程度に抑えている。アルコール率が20~30%になると、居酒屋的な利用動機が増えていき、食事をする人の利用が減少傾向になっていく。飲みの客が多すぎると、食事では利用しにくくなるのだ。こういった細かい設定で「日高屋」の客数と売上は守られている。

ビール、ハイボール、ホッピーセット、日本酒、サワー系などアルコールメニューも充実している

「『日高屋』の平均客単価は800円程度です。飲みのお客さんで1200~1300円程度。『日高屋』で2000円使うことはなかなか難しいと思います。しかしこれが現状ではベストなバランスです。
テーブル席ではお酒を飲んでいても、カウンターは食事のお客さんで回転しているのがベストです」(鈴木さん)

「中華そば、餃子、生ビール」3品で1000円を超えない

その中で、中華そばの390円という価格だけは維持し続ける。ここにも強いこだわりがあるようだ。

日高屋が価格改定を死守する「中華そば」

「値上げについては喧々諤々議論がありました。しかし、『390円』という価格自体が『日高屋』の看板になってきました。お客さんからの期待も大きいと感じています。そうした中で、どうしても300円台にしておきたいという強い意志が社内にあるんです」(鈴木さん)

そのこだわりの中で、390円を維持するためにはどうしたらいいか?

「日高屋」はここで自社生産という強みを生かしている。「日高屋」は自社工場で麺、スープの生産と野菜のカットを行っている。工場の徹底効率化を図り、状況に合わせた原材料のロスを削減することに注力した。

さらに出店を増やし、より多くのお客様に利用してもらう。これが「日高屋」の答えだった。今までは乗降客数5万人以上の駅を対象にしてきたが、現在、条件によっては3万5000人に引き下げて出店している。

中華そば、餃子、生ビール。この3品で1000円を超えないというのも強いこだわりだという。現状990円とギリギリで頑張っている。
便利な駅前にあって安くていろんなメニューがある。この強みを生かして、「日高屋」はこれからも突っ走っていく。

#2に続く

取材・文/井手隊長

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