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《老後資金に潜む落とし穴》認知症→資産凍結で親の介護費用が払えなくなることも。困る前に知っておきたい「家族信託」の仕組み

集英社オンライン / 2023年8月9日 10時1分

高齢の親を持つ世代にとって、やがて必要になる親の介護費用は重大な課題だ。親が自分の老後資金を準備しているケースもあるが、もしも認知症になってしまった場合、銀行口座が凍結されて引き出せなくなってしまうこともある。こうした課題に向き合うために知っておきたいのが、「家族信託」という制度だ。

認知症になると預金が下ろせなくなる?

あなたは、親の介護費用を払えるだろうか。

高齢者の中には、「老後の備え」として資産を蓄えている人もいる。介護が必要になったときには、自分の蓄えで賄おうと考えている人も多いはずだ。ところが、本人が認知症になってしまった場合、せっかく貯めていた老後資金が引き出せなくなる事態が起こり得る。



認知症になってしまうと、銀行や証券口座が凍結されてしまうことがある。判断能力が低下した高齢者が騙されて、不正にお金を引き出されるのを防ぐためだ。

しかし、一度口座が凍結されてしまえば、高齢者本人も家族も、お金を引き出せなくなってしまう。せっかく蓄えがあるのにそれを使うことができず、親の介護費用を子どもたちが工面しなければならなくなる。

不動産も同様だ。認知症により「意思決定能力がない」と判断されれば、不動産を売却できなくなる。たとえば、親が老人ホームや介護施設に入居することになっても、空き家になってしまった家を売ることができないというわけだ。

認知症の金銭的リスク。高齢者本人だけでなく、介護する子ども世代にも深刻な影響を与える

こうした状況の受け皿として存在しているのが「成年後見制度」だ。

認知症や加齢などにより意思決定能力に不安がある場合、本人や家族が家庭裁判所に申立てることによって「法定後見人」が指名され、この後見人が資産の管理を行う。

ただし、この成年後見制度は、現実にはさまざまな課題を抱えている。

後見人として指名されるのは、本人とはまったく関係ない弁護士や司法書士になることが多い。そして、この後見人に対して、子どもが親の資産を使いたいと申し出ても受け入れてもらえないことがあるのだ。

たとえば、親のために住居の一部をリフォームしたいと思っても、それがなかなか認めてもらえない。これでは口座が凍結されているのと変わらない。

また、後見人に対しては報酬が発生する。管理する資産額に応じて費用は変わるが、1カ月あたり2〜6万円が相場だ。たとえば、月5万円の負担が10年間続くとすると、5万円×12カ月×10年=600万円の費用が発生してしまう。子どもたちは親のお金を使えないのに、後見人への報酬ばかりがかかって、資産が減っていくというわけだ。

こうした不自由な成年後見制度に代わる制度として「家族信託」がある。

介護費用の課題に備える「家族信託」という制度

家族信託とは、高齢者が、自らの資産の管理を家族に託せる制度だ。2006年の信託法改正によって広く扱われるものになった。

家族信託で託す財産は、全部でなくてもいい。「銀行預金の半分は家族に管理を任せ、残り半分は本人が自由に使うために残しておく」といったことが可能だ。不動産や証券など、銀行預金以外の資産についても柔軟に決められる。

家族信託は、本人と指定した家族の間で信託契約が結ばれたタイミングから有効になり、以後は、家族が信託された財産を管理することになる。なお、あくまで「管理の委託」にすぎないため、この時点で贈与税や相続税が発生することはない。

この制度を使えば、成年後見制度のように見ず知らずの他人に財産管理を任せなくて済む。お金の使い道を自分たちで決められるし、膨大な後見人費用を支払うこともない。非常に合理的だ。

しかし、この制度を利用するには、これまで一つのハードルが存在していた。財産の調査や信託内容の整理にかかる費用が高額になりやすい点だ。「内容を柔軟に設計できる」という家族信託の自由度の高さゆえに、内容の調査・整理に時間がかかってしまう。それがコストに跳ね返ってくる。提供する士業事務所や企業によって金額は異なるが、初期費用が100万円以上かかるケースが多い。

結果として、家族信託は一部の裕福な人だけが利用する制度となり、一般の人には縁遠いものになっていた。

しかし、その状況に風穴を開けようとするサービスが登場した。その名も「ファミトラ」。このサービスは、「家族信託を、あたりまえに。」というビジョンを掲げ、これまでとは一線を画す手頃な費用で家族信託を提供している。

家族信託の概要。信託財産とは、信託契約に基づき、管理や処分を行う財産であり、居住用不動産、預貯金、有価証券等がさまざまな財産が該当する(写真提供:ファミトラ)

ITの力で家族信託のハードルを下げる

ファミトラは、ITの力を使うことで、家族信託を低コストで提供することに成功している。

同社では独自開発したシステムを使い、信託内容の整理・提案を行う。ファミトラの担当者が、委託者の資産状況や家族構成、家族の希望などをシステムに入力していくことで、それぞれの家族に合った提案書が即座に作成される仕組みだ。このシステムにより内容整理にかかる時間を短縮でき、人的コストの削減につながった。

同社のマーケティング本部・広報部の山崎純氏に詳しい話を聞いた。

「今までは、弁護士や司法書士が、自分の経験を生かして家族信託に必要な情報のヒアリングを本人やご家族に行っていました。しかし、ファミトラではそれをシステム化したことで、必要な情報を漏れなくヒアリングできます。しかも、このシステムは家族信託に精通した専門家の知見を結集しているので、それぞれの家族に合ったオーダーメイドの提案ができるのです」

ファミトラの基本的な費用は、専用の銀行口座の開設費用や、公正証書化の費用、契約書作成費用など別途実費でかかる費用はあるものの、初期費用が5万円から、月額でかかる継続費用が980円からとなっている。従来の家族信託と比べると、はるかに低価格だ。

また、月額料金は委託者の年齢に応じて変わるが、たとえば80歳でも3180円。成年後見制度では毎月2〜6万円のコストがかかるので、それと比べると費用はずいぶん少なくて済む。

「私たちは、お金を預かる金融機関ではありません。あくまで信託契約を結べるようにコーディネートする立場です。契約の内容が複雑な場合は弊社の作業も増えてくるため費用は余分にかかりますが、基本的に、本人とそのご家族が、尊厳の保たれた幸せな老後を過ごして欲しいというのが願いです。(山崎氏)

価格が下がったことにより、これまで家族信託に踏み出せなかった人も利用しやすくなった。

「これまで家族信託を検討するのは、資産1億円以上の人など、富裕層に限られていました。しかし、ファミトラの価格体系なら、資産額2000万円くらいの世帯でも検討できるのではないでしょうか」と、山崎氏は展望を語る。実際、多くの人にとってはかなり身近な費用感なのではないだろうか。

ファミトラの基本費用(写真提供:ファミトラ)

親に家族信託を検討してもらうコツ

高齢の親を持つ子どもにとって、親の介護費用は喫緊の課題だ。親の意思決定能力がしっかりしているうちに対策を考えたいが、問題は、どのように話を持ちかけるかだ。

お金の話は、なにかとこじれやすい。「財産を狙っているのか」と思われてしまうと、誤解を解くのもひと苦労だ。また、「そろそろ認知症になってしまうかもしれない」と切り出すことで、親の尊厳を傷つけてしまうかもしれない。余計な誤解を避けるには、どのようにアプローチすればいいのか。

「多くの高齢者は『家族に迷惑をかけたくない』という意識を持っています。あらかじめ準備をしておかないと家族に負担がかかるということを、まずは知ってもらうことから始めるとよいのではないでしょうか」(山崎氏)

また、いつから準備を始めておくかも重要だ。親が元気なうちはまだ大丈夫、という考えもあるが、認知症になってからでは家族信託を利用できない可能性がある(認知症の程度にもよるが、委託者に十分な意思決定能力がないと判断された場合には利用できないケースがある)。

「それまで元気だったお父さんが、新型コロナウイルス感染症で2週間隔離になって、帰ってきたら孫の顔もわからなかった……。そんな話も実際にありました。認知症は急激に進行してしまうこともあるので、タイミングの見極めは非常に困難です。ただ、帰省したときに余計なものをたくさん買い込んでいたとか、認知症の予兆のようなものを感じたときには、検討を始めてみるといいのではないでしょうか」(山崎氏)

早い段階で親と話し合いができれば、信託の内容をしっかりと詰めていけるだろう。すでに述べたとおり、家族信託は信託する資産の割合などを柔軟に設計できるので、丁寧に対話を続けていけば、お互いに納得できる形が見つかるはずだ。

家族信託に興味がある方は、まずはファミトラのホームページにアクセスし、利用者のインタビュー記事を読むことから始めてみるといいだろう。具体的な流れなどがイメージできるはずだ。

ファミトラのホームページには、利用者のインタビュー記事が多数掲載されている。ぜひチェックしてみよう(https://l.famitra.jp/rd/shueishaonline230801)(写真提供:ファミトラ)

取材・文/小平淳一

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