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「これまでで最も熱をつくりだせたのは那須川天心vs武尊」 RIZINをつくった男が語る“数字が獲れる”マッチメイクの極意

集英社オンライン / 2023年8月3日 16時1分

日本の一大格闘技イベントとなった「RIZIN」「THE MATCH」はなぜ数字が獲れるのか? “格闘技に全霊を捧げる男” 榊原信行が、勝てるエンタメビジネス論を綴った初の著書『負ける勇気を持って勝ちに行け! 雷神の言霊』刊行にあたり、その想いを激白した。

就活で“最終落ち”した東海テレビに乗り込む

――この本の中で、榊原さんの人となりをもっとも表しているのは、大学4年の就職活動中、東海テレビの最終面接で落ちたときのエピソードだと感じました。結果に納得できず、東海テレビにアポなしで乗り込んだそうですね。



榊原(以下同) 大学時代は自分が何者なのかもわかってなくて、ただ、チャラチャラしてたので、何となくテレビ局でイベントとかやりたいなって思っていたんです。当時、テレビ局の面接ってものすごく時間がかかったんですよね。8月に始まって、最終は10月とか11月ぐらい。

それで第一志望の東海テレビが引っかかっていたから、他に内定をもらったところもあったけど全部、断っていて。最終面接の手応えもあったんです。だから、落ちたと聞いてすぐに東海テレビに乗り込んで「入社試験を受けた榊原信行という者ですが、人事部の担当者に会わせてください」と直談判した。

榊原 信行(さかきばら のぶゆき)
1963年11月18日、愛知県生まれ。大学卒業後、東海テレビ事業株式会社に入社。退社後、1997年に「PRIDE.1」を開催し、2007年の売却まで唯一無二の地位を築く。2015年より「RIZIN
」始動。2022年開催の「THEMATCH 2022」では、那須川天心×武尊戦を実現させ、総売り上げ50億円超を記録

そうしたら、その場で担当者に取り次いでくれたんですよ。会議室みたいなところに案内されて、課長クラスの人が対応してくれて。その人に思いの丈をぶつけたら、盛り上がってね。「君は営業向きだな」とか言われて。

それで東海テレビ事業という会社を紹介してくれたんです。東海テレビの100%子会社で、イベントの企画などを手掛けている会社でした。そこの面接を受けさせてもらって、最終的に採用してもらいました。

――よく門前払いされませんでしたよね。

あきらめの悪い男なんですよ。人からもよく言われるし、自分でも思いますけど。ここで落とされて、俺はどうしたらいいんだ? というのもあったしね。

――この本は、人間は何のために生きるかの一つの答えが示されている本だと思いました。榊原さんが導き出した答えは、生きている以上、常にヒリヒリしていたいというか、ワクワクしていたいということなわけですよね。

私もサラリーマンになって1、2年は、諸先輩方の言うことを聞きながら、サラリーマン道をまい進しました。でもね、多くの先輩たちは日々、いかにさぼって、いかに楽に生きるかしか考えていなかった。漫画喫茶に連れていかれて、お茶を飲んで、夕方になると「そろそろ帰るか」とか。出世欲もないし、責任もとりたくない。そういう先輩たちの生き方を見ていて「クソだな」と思えてきて。

そこから、もがき出したんです。やりたいことと仕事をニアリーイコールにするために悪戦苦闘が始まった。いろんな興行を仕掛けては成功したり、失敗したりもした。そんな中でK-1と出会い、入社8年目の1994年ごろから格闘技の興行に関わるようになっていって。

プロモーターとしてもっとも幸せを感じる瞬間

――その後、1997年に始まったPRIDEでは「ヒクソン・グレイシーvs髙田延彦」や「ホイス・グレイシーvs桜庭和志」といった数々の伝説的なマッチメイクを成功させます。マッチメイクをする上で、喜びのピークというのはどのあたりにあるものなのですか。やはり、対戦が決まった瞬間ですか。

今回の「超RIZIN.2」(7月30日開催)では、朝倉海選手が本番直前に故障で欠場することになってしまったように、私たちは試合当日、2人がリングに上がって、ゴングが鳴るまで気は抜けないんです。あと、そのマッチメイクの期待値が大きければ大きいほど、凡戦だったときの失望も大きい。

なので、試合が始まって、内容も期待以上のものとなり、会場のお客さんが熱狂している様子を実感できたときがプロモーターとしてもっとも幸せを感じる瞬間ですね。

――これまでその幸せがいちばん大きかったのは、どの試合のときでしたか。

いちばん興奮した瞬間か……。何だろうな。いちばんやらかしたと思ったのはPRIDE.1かな。髙田(延彦)さんとヒクソンの試合。髙田さんが勝つというのが最高のシナリオだったんですけど、結果はまったくの逆。観客の中には泣いている人もいたけど、本当に葬式みたいだった。あんなに苦労したのにこんな結末が待っているなんて…と。あのとき、つくづく「俺は持ってないな」と思いましたね。穴があったら入りたかった。

――桁違いの失望感を味わえるというのも、この仕事の裏の醍醐味なのかもしれませんね。

苦労した分のリターンが十分にあったという意味では、直近の「THE MATCH 2022(那須川天心vs武尊)」かな。PRIDE時代から通してもいちばんの熱を作り出せた試合だと言ってもいいかもしれない。

フジテレビからの一方的な契約解除

――本の中では、何度も「あきらめるな」と呼びかけ、何かを選択するときは「どうすれば多くの人たちの感動や興奮を呼び起こすことができるか」を考えるのが指針だと書かれていました。一方、志半ばで断念しなければならないときもあると思いますが、撤退の基準のようなものはあるものですか。

これ、というのはないですね。撤退するときは、いろんな要素が絡み合っているから。確かに攻めていくだけでは、ものごとが前進しないときはあります。2007年、PRIDEをUFCに売却したときがそうでしたね。フジテレビに契約を一方的に解除され、理不尽な形で社会的な信用も失った。

でも、自分を信じてついてきてくれた社員や選手たちの未来を考えたとき、自分が退いて、PRIDEの存続を図るしかないと思った。あのときは、自分の体に矢が何本も刺さって、もうこれ以上突き進んでもどうにもならないなと思った。だから、基準というより動物的な感覚だよね。このまま行ったら生命を失うだけだぞ、という。

――世の中では「お金がすべてではない」という言い方もありますが、それは実際に大金を得たとき、そう思えた人にしか言えないセリフだと思うんです。でも、榊原さんはそれを実際に経験していますよね。

PRIDEを売却したとき、めちゃくちゃお金はありました(笑)。一生、暮らしていけるぐらいの。ただね、まったく幸せじゃなかった。服も車も買えるし、飲みにも行ける。でも、そんなことじゃワクワクできないんですよ。

PRIDE時代、みんなでラスベガスへ乗り込んで、アメリカ人が熱狂しているのを目の当たりにしたときに溢れ出たアドレナリンとかね。苦しみ、もがいて、そこから抜け出したときの喜びがたまらないんですよ。何かにチャンレンジしていない人生、何かに夢中になれていない人生なんて、お金がいくらあっても退屈で仕方ないんです。

(後編に続く)

取材・文/中村計 撮影/村上庄吾

「負ける勇気を持って勝ちに行け! 雷神の言霊」

榊原 信行

2023年7月27日

1,760円

208ページ

ISBN:

978-4046060600

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