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「ロリータババア」と言われても貫いた青木美沙子のロリータ道。「30歳で結婚、35歳で出産、40歳は落ち着いたファッション…日本の女性が抱えがちな社会的ルールから抜け出したくて」

集英社オンライン / 2023年8月12日 12時1分

ロリータファッションのカリスマ、青木美沙子。世界を舞台に活躍するロリータモデルでありながら正看護師としても働く青木は、40歳を迎えたタイミングで書籍『まっすぐロリータ道』も刊行した。ロリータへの思い、年齢の壁や葛藤を乗り越えてきた自身のキャリアについて聞いた。(前後編の前編)

#2

ファッションに「年相応」なんてありません!

――ロリータへの思いや半生を書籍で発信しようと思った理由は?

ロリータモデルの青木美沙子さん

青木(以下同) 40歳という節目というのがひとつありました。それと最近、世の中では多様性が叫ばれて、一見いろいろな人が受け入れられる世の中になったように見えますけど、実際はそうでもなくて。特に女性に向けられる「何歳ならこうしなきゃいけない」みたいな年齢に関する言葉が多くて、当たりが厳しいと感じています。



だからこそ、そういう「普通」とされる人生じゃなくても素晴らしい人生なんだ、いろいろな生き方があっていいんだっていうことを、私の生き方を通して伝えたかったんです。いろんな服装をしてもいい、年相応のファッションなんてないっていうことも含めて、理解してもらいたくて。

たくさんのメディアで取材していただけて、私のネットのインタビューを読んでもらえることも多いんですけど、やっぱり文字数に限りがあるので。ロリータへの思いとか、これまで歩んできた人生をしっかり書籍で伝えられたのはありがたかったです。

――正看護師としてのお仕事やこれまでの経歴だったり、たくさん伝えたいことがあったと思いますが、文章化するにあたってまとめ方や構成を工夫したことは?

私はわりと、逆境や誹謗中傷にも負けない強い女みたいなイメージを持たれているんですけど、実際はそうじゃないんです。年齢や自分の生き方に悩んで「これでいいのかな」と思うことも多いので、そういう、自分の葛藤の部分はちゃんと伝えようと意識しました。

街に馴染むファスト、自己中に生きるロリータ

――ロリータファッションの最大の魅力はどんなところですか?

一番の魅力はやっぱり、大人になってもお姫さまになれること。今、ファストファッションが溢れていて、街に馴染むお洋服を着るっていうのが若者のファッションの考え方だと思うんです。でも私にとって、ロリータファッションは戦闘服。着飾ることで、自分のコンプレックスや悩みを吹き飛ばせるんです。着ることで自信が持てるのも、ロリータの魅力だと思います。

高校時代の青木さん

――ロリータは、周りに合わせたり、モテるためのファッションじゃなくて、自分のためのファッションだともおっしゃっていますよね。

そうですね。周りに合わせないで自己中に生きるって、わがままな印象があると思うんですけど、私は、自分の人生なんだからわがままに生きていいんじゃないかなって思っています。人の意見に流されたり、SNSを見て人を羨んだりするのではなくて、自分がどう生きたいかに重心を置いて自己中に生きた方がいいと思って、私はロリータを着ています。

――美沙子さんは「自分の人生を生きる」という、当たり前だけど実は難しいことの大切さをいつも発信していますよね。これまでたくさんの葛藤があったと思いますが、胸を張って自分の人生を生きられるようになったのはいつ頃だったんですか?

今でも全然、悩みはありますよ。でも、40歳になったらけっこう気が楽になりました。女性って、30歳になったらそろそろ結婚しなきゃいけないとか、35歳には子どもを産んでいないととか、40歳になったら落ち着いたファッションをしないといけないとか、そういう社会的なルールを心に抱えている人も多いと思うんですね。私は、全部そこから逸脱していますけど(笑)。

女性の30代って、結婚や子育てをしたり仕事をがんばったり、いろんな変化がある年代ですけど、40歳になって、その葛藤から抜け出せたことを感じました。

――やっぱり30代は、迷いが多かったんですね。

めちゃくちゃ多かったですね。34歳の時にテレビ番組で年齢を公表したんですけど、それにもすごく恐怖を感じたし、ロリータを着続けることにも恐怖を感じて……ロリータババアって言われることも多くなりましたし、それとどう戦っていくかという葛藤が、自分の中で大きかったです。

日本人を苦しめる年齢のカテゴライズ

20代の頃の青木さん

――それでも折れずにここまでロリータを貫いた、その原動力になったものはなんだったんですか?

年齢を公表したら共感してくださる方がたくさんいたんです。自分がコンプレックスだと思っていた年齢のことで、共感してもらえたり、人に励ましを与えることが多かったので、隠すことじゃなかったんだなって。そういう反応が原動力になりましたね。

日本や海外での活動でわかったんですけど、ロリータちゃんたちの年齢はわりと高いんですよね。やっぱりみんな、いくつになっても可愛い服を着たいんだなって実感したんです。だから私が先頭に立ってロリータを着ることによって、何歳になっても好きな服を着ていいんだって思ってもらいたいと思っています。


――海外での活動を通じて、日本で、何歳になっても好きなことを貫く難しさを感じられたのかなと思うのですが、周りに合わせなきゃいけないという考え方は日本ではやっぱり強いと感じますか?

強いと思いますね。みんなと同じように生きて、みんなと同じお洋服を着ているほうが、人から注目を浴びなくて済むから楽だっていうほうが多いのかもしれないですね。

中国の方とかはわりと目立つことの好きな方が多いので、中国では今、ロリータファッションがブームです。ロリータは日本発祥の文化ですけど、日本では、ロリータは若くないと着られないと思われていたり、コスプレと混同して、ファッションだと認識されていなかったりもするので、それが悲しくて。

それに、日本人はすごく年齢を気にしますよね。年齢でカテゴライズされてしまうことが多いから、そういう考え方が減れば、好きなファッションを楽しめたり、人生を豊かにできる人が増えるんじゃないかと思っています。

#2へつづく

取材・文/川辺美希 撮影/杉山慶五

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