なぜか売れない中堅ピン芸人・TAIGA「ミラクルひかるのイスを蹴り上げ、大ゲンカ」「営業先での200人乱闘事件」…売れたくて必死だったショーパブ時代
集英社オンライン / 2023年8月18日 17時1分
R-1ぐらんぷり2014で決勝に行ったこともある芸人・TAIGAさん。脱サラしてショーパブで店員として働きながら、ステージにも立っていた修行時代には数々の事件があった。47歳、中堅ピン芸人TAIGAの自伝『お前、誰だよ! - TAIGA晩成 史上初!売れてない芸人自伝』(ワニブックス)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
ショーパブ芸人が新ネタをやらない3つの理由
ショーパブの舞台に出るようになって2、3年。ようやくステージに立つことにも慣れてきた。俺は新ネタを試す場として魅力を感じる一方で、ショーパブというものに疑問を感じ始めていた。
初めてショーパブを見た時の感動は今でも覚えている。世間に知られていないだけで、面白いステージを見せてくれる芸人が、たくさんいることに俺は驚いた。
だが、いざ自分が演者側になってみると、ほとんどのショーパブに出てる芸人が、同じネタを繰り返しているだけの生ぬるい世界だと思うようになっていた。
たとえば、ステージでやる演目も、毎回ほぼ同じ。一言一句同じことを日々繰り返すだけの芸人もいた。そんな芸人がメジャーになれるわけがないだろう。
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なぜショーパブで芸人が同じネタを繰り返すのか。それには3つの理由がある。
ひとつめは初見のお客さんが多いこと。新宿という場所がら、観光客も多い。地方からきたはとバスツアーのお客さんは、東京の名所のひとつとして、ショーパブに足を運ぶ。一見さんのお客さんなので、いつもと同じネタだったとしても、ほぼ間違いなくウケてくれるのだ。
ふたつめは、お客さんが酒に酔っていてハードルが下がっていることだ。久しぶりに見に来たお客さんでも、時間があいてしまえば前回の内容なんてあまり覚えていない。おまけに酒に酔っているから、毎度楽しそうに笑ってくれる。
3つめは、これはモノマネ業界独特の慣習なのだが、モノマネ芸人は売れてなくても営業が定期的に入ってくるからだ。ショーパブのステージと月に何本かの営業があれば、バイトをしなくても生活ができる。だから、ストイックに新ネタを作らなくとも、同じことの繰り返しで食っていけたのだ。
ミラクルひかるとの大ゲンカ
だが、売れてテレビに出るためには、オリジナリティーのあるネタを発明しなければいけない。俺に一体何ができるだろう。
まずは、店長に掛け合って、「俺たちだけの日を作ってもらえないか」と直訴した。当時の若手を評価してくれていた店長は快諾してくれ、こうして、月に一度の「若手デー」が始まった。
当時のメンバーはみな若く、尖っていた。ケンカもよくした。
何度目かの打ち合わせの時のことだ。「こんな構成でどうだろう」と提案をしたところ、宇多田ヒカルのモノマネで知られるミラクルひかるが「だったら、こんなのはどうですか?」とさらに提案してきてくれた。
ただ、いかにも客に媚びた演出に思えたので、「そういうのはやめないか」と返すと、負けん気の強いミラクルは頭に血が上ったようで突っかかってきた。議論は徐々にヒートアップし、次第に腹が立ってきた俺は、ミラクルが座っていたイスを蹴り上げた。
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「テメーが男だったらぶん殴ってるからな!」
他のメンバーは見事に固まってしまっていた。「まあまあ」と言いながら誰かが止めてくれたが、ミラクルはふてくされて、こちらを見ようともしない。どっちが正しい、間違ってるとか、そんなことではなかった。ただ、みんな売れたくて必死に頑張っていた。そんな熱い気持ちで集ったメンバーだから、もちろんすぐに仲直りした。諍いから10数年後、俺の結婚式でミラクルが宇多田ヒカルを歌ってくれたのは、良い思い出だ。
営業でメシを食えるようになるまで
芸人の大切な仕事のひとつに「営業」がある。どんな芸人でも、営業を月に数本こなせば、食っていくことができる。だから、若い頃は喉から手が出るほど、営業の仕事が欲しかった。
営業というとモノやサービスを売り込みに行く営業マンを想像するかもしれないが、芸人の営業とは、イベントに呼んでもらうことを指す。お祭り、学園祭、企業の貸し切りパーティー、ショッピングセンターの催事、飲み屋の周年イベントなどなど。これらに出演して盛り上げるのが芸人の営業だ。
一概には言えないが、売れてない芸人でも営業のギャラは一回10万ほど。新人だと3~5万くらいだろうか。そこから事務所や業者が半分くらい持っていくが、新人でも最低1万5000円はもらえる計算だ。
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営業の持ち時間は、だいたい10分~30分だから、稼働時間でギャラを割ったらすごい時給になる。考えてほしい。新人が30分で3万稼げる仕事なんてあるだろうか。売れてる人だと一本20万もらえるし、聞くところによると、一本200万~数千万なんて大物もいるらしい。
ギャランティーだけでいうと、営業はテレビに出るよりもぜんぜん稼げる。だからテレビにたくさん出て顔を売って、営業でしこたま稼ぐというのが、今も続く芸人の成功パターンだ。俺たちは営業に呼ばれたら、基本的にどこでも飛んでいく。
その日の営業は関西だった。ホテルのパーティールームを貸し切ったパーティーに呼ばれて、俺を含め3人の芸人がステージに立つことになっていた。
トップバッターは俺だった。いつも通り高めのテンションでネタを始めようとしたのだが、どうにも空気が重い。その理由はすぐにわかった。客席には、少々ガラの悪そうな人たちがニコリともせずズラリと並んでいる。これは難しそうな現場だとすぐに気づき、しゃべりマネなどのネタに切り替える……がウケない。静まりかえった空気の中、MCなどで巻き返そうとするが、そのMCもウケない。八方塞がりである。
すると、前のほうに座っていた特にガラの悪そうな男が「おいこら、笑えへんぞ!」とヤジってきた。今だったら「面白かったら売れてますよ!」などと気の利いた返しができるが、その時は対処する余裕もまだなかったので、聞こえないフリでスルーしようとした。
その男は、かなり酔っ払っているようだった。すると、その隣にいた男も「ぜんぜん似てへんやん」と絡んできた。スルーしようにも、「シーン」「つまらんなー」「早く笑わせろや」とヤジはヒートアップするばかりだ。
総勢200人の大乱闘
俺はムカつきながらも心を落ち着かせ、「いつも通りやるだけだ」と自分に言い聞かせてなんとかネタを続けた。だが、先ほどよりもさらに空気が悪くなっているのだから、誰も笑ってくれない。早く自分の出番が終わるように祈った。
その時、事態が動いた。しつこく俺に絡んでくる奴らが座るテーブルに、これまたイカつい顔をした4人の男たちがやってきた。俺はヤジの加勢に来たのだと思い、さらなる事態の悪化を恐れたが、何かが違った。
「さっきから何をケチつけとんねんボケ!」
どうやらその4人は主催者側の人間で、先ほどから俺にいちゃもんをつけるふたり組に腹を立てていたらしい。
客をもてなそうと主催者が呼んだ芸人を「面白くない」とヤジるのは、主催者側からしたら自分たちの顔に泥を塗られているのと一緒なのだ。
「おら!」「なんやこら!」大声で揉め始めたテーブルを見ないようにしてネタを続けたが、周りの客もそちらのテーブルに目が行って、俺のステージなど誰も見ていない。あれよあれよという間にステージの前のテーブルには、ミツバチのように男たちが集まり、さらに増えていく。
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やがて、乱闘が始まった。最初は止めようとしていた者も、やはり血がうずくのか、気がついたら乱闘に参加している。そして。200名ほどの貸し切りパーティーの参加者は、ごっそりと外へ出ていってしまった。
一気に静まり返った会場で、俺はエルヴィス・プレスリーの『監獄ロック』を歌いながら、文字通り「囚人たちの乱闘」になってしまったなと思った。
こんな事態になってしまったが、こちらも仕事だ。持ち時間をやり切るしかない。次の先輩芸人に「なんかすいません」と伝えると「営業はいろんな現場があるから大丈夫だよ」と言ってくれた。こんなことがよくあるのかと思ったのを覚えている。
先輩たちは、さすがベテランらしく鉄板ネタを引っさげて、残された円卓のテーブルにいた主催者の社長さんを笑わせにいった。しばらくすると、客席にみんなが戻ってきた。揉めごとがどう収まったかわからないが、最前列でヤジっていたふたりの姿はなかった。
文/TAIGA サムネイル画像/吉場正和
『お前、誰だよ! - TAIGA晩成 史上初!売れてない芸人自伝』(ワニブックス)
TAIGA
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2023/7/25
1,650円
224ページ
978-4847073366
中堅ピン芸人・TAIGA、47歳。
R-1決勝進出、オードリーの番組出演、アメトーーク!出演……チャンスはいくつかあったはずだが、ブレイクには至らず、仕事の空き時間にはウーバーイーツの配達がまだまだやめられない。
そんなTAIGAが“売れていない”にもかかわらず書き始め、ワニブックスニュースクランチで足掛け2年間連載していた自伝がついに書籍化! 若き日のオードリー、ぺこぱ、カズレーザーたちとの下積みエピソードには共感と感涙必至だ。
書籍化ではオードリー・若林正恭&春日俊彰とのスペシャル鼎談がついに実現! 若き日のなんでもない思い出を笑顔で語り合いながら、TAIGAの魅力を掘り下げる。
さらには、カズレーザー、納言・薄幸、バイク川崎バイク、ヒコロヒー、ぺこぱ、モグライダーといった人気芸人がTAIGAのために書いた手紙も特別収録! TAIGAの魅力が、さまざまな角度から立体的に!
多くの人気芸人からの信頼を得るTAIGAのリアルが詰まったドキュメンタリーエッセイ完成!
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