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横浜流星「険しい道の方が絶対楽しい」というストイックさと、「翌日の服を着て寝るほど朝が苦手」という不器用さとのギャップ。「自分のペースが崩れると頭が真っ白になることも」

集英社オンライン / 2023年8月24日 11時1分

沢木耕太郎の原作を映画化した『春に散る』で、ボクシングに情熱を燃やす黒木翔吾を演じた横浜流星。「他人とは思えない」と語る役柄について、彼自身の生き方について話を聞いた。

格闘家になる夢が映画で叶った

──『春に散る』は本格的で迫力あるボクシングシーンも注目されています。横浜さんは極真空手の経験者だそうですが、この映画への出演の決め手は?

最初に脚本を読んだとき、翔吾の“今を生きる”というポリシーに共感したんです。不公平な判定でボクシングから離れ、情熱を失っていた彼が、同じ元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)のパンチをくらって「これだ!」と気づく。そして仁一にボクシングを教えてほしいと懇願し、断られても「今しかねえんだ」と食い下がるあの熱い気持ち……。翔吾の気持ちや行動には共感する部分が多く、縁を感じました。



あとはボクシングに挑戦できることも魅力でした。僕は役者にならなかったら格闘家を目指していたと思うので、翔吾役で夢が叶うと思ったんです。でもリスペクトがあるからこそ、生半可な気持ちではできないし、かなりの覚悟が必要な役だとも思いました。

©2023映画『春に散る』製作委員会

──格闘技にそれほど魅了される理由は?

“儚さ”です。数分で勝敗が決まってしまうし、格闘家の現役人生は短いので。そんな中、格闘家のみなさんは一瞬を掴み取ろうと覚悟を決めて挑戦し続けている。そんな“儚さ”にとても惹かれますし、下手をしたら死んでしまうかもしれない勝負でも突き進む、その心のあり方も男としては燃えるんです。格闘技は芝居にも似ています。

──というと?

対戦するときに相手を煽るのも駆け引きのひとつ。「そっちがそう来るなら、こっちはこれだ!」というような、心理戦も格闘技には含まれています。お互いに技を出し合って、スキルのすべてを使って必死になって闘います。

芝居も、準備を整えて自分ができる力のすべてを投入して、芝居で相手とぶつかり合う。その姿にお客さんも心が動かされる……。そういうところが似ていると感じています。

ボクシングのプロテストを受けた理由

©2023映画『春に散る』製作委員会

──映画のハイライトは、やはりボクシングシーンです。あそこまで本格的に仕上げるのは大変ではなかったですか?

大変でしたが、やるからにはプロのボクサーに見せても恥ずかしくないシーンにしたかったので、かなりこだわりました。ボクシング指導と監修を担当してくださった松浦慎一郎さんに「今までにないボクシングシーンにしたいんです」とお願いをして、徹底的にトレーニングをしました。

昨年の4月から半年間練習を積みましたが、最初は動きに空手の癖が出てしまって。そこを松浦さんの指導のもと、修正しながら力を上げていきました。

──トレーニング期間は、私生活にも変化があったのでしょうか?

まず食生活が変わりました。格闘家の友人に「どんな食事をしているの?」と聞いてアドバイスをもらって、玄米、ゆで卵、鶏の胸肉、ブロッコリーを食べるようにしました。好きなものを好きなだけ食べてしまうと体が変化するので、我慢しました。

劇中に計量シーンはないのですが、試合のシーンの前日はフェザー級のリミット体重57.15kgに合わせて調整しました。選手の気持ちになるために、ボクサーと同じ状況に自分を追い込んで試合に臨みました。

──横浜さんは撮影後、ボクシングのプロテストに挑戦。見事合格したというニュースには驚きました!

ボクサーとして認められたいという自分の気持ちはもちろん、映画への責任感もあってプロテストを受けました。芝居はフィクションですが、その中に“本物”を入れ込みたかったんです。僕がプロテストに合格することで、この映画のボクシングが本物であることの証明になります。6月12日にプロテストに合格し、C級ライセンスを取得できたので、ホッとしています。

──横浜さんはドラマ『DCU』(2022/TBS)でダイバー役を演じたときは、スキューバーダイビングのライセンスを取得しています。役作りも含め、何事も突き詰めていくタイプなのでしょうか?

やるからには突き詰めたいという気持ちは強いです。ボクシングもダイバーも演出やカメラアングルで本物のように見せることは可能だと思います。でも自分は演じる役の気持ちになりきりたい。少しでもリアルに近づけたいので挑戦しました。それが自分の芸能活動や人生につながると思うので。

──まさに役を生きようとしているんですね。

ボクシングのプロテストでも、対戦相手は「この世界で飯を食っていくんだ」という覚悟で挑んでくるし、本気で僕を倒そうと全力でぶつかってきました。その大きな力を受け止めたことは自分にとってすごい経験でしたし、何より後楽園ホールのリングに立てたこと、あのときの雰囲気、あのとき感じた思いは、絶対に消えない。今後に生きると思っています。

──ハードな険しい道を選ぶタイプなのですか?

そのほうが絶対に楽しい。やはり人生は一度きりですし、今後何が起こるかわからないから後悔したくないんです。そう思ったら、やっぱり険しい道を選んで突き進んでいきたいです。

私生活では思いきり不器用です

──お話を聞いていると、常に完璧を目指していらっしゃって、「隙がない!」と思ったのですが、苦手なことはあるんですか?

ありますよ。まず僕は球技が苦手です。だから球技の映画に選手役で出演することになったら、練習期間を1〜2年もらわないとできないかもしれないです。とにかく不器用なんです。そのことを感じさせないために、準備期間を怠らないだけ。普通にやったら、それこそポンコツレベルです(笑)。ひとつのことに集中しがちなので、財布や携帯など忘れ物をすることも多いんです。

──意外です!

そのときやるべきことしかできないので、撮影現場でものめり込んでしまうことが多くて。そうなると周りは話しかけにくいらしく、映画『ヴィレッジ』のときは、藤井道人監督に「流星は入り込んじゃうと話かけられなくなるから、今回はそういうのやめてね。ちゃんとコミュニケーションをとって一緒に作り上げていきたいから」と言われました。

ふたつのことを並行してできないんです。器用になりたいなと思いつつ、これが自分だから、しょうがないか、とも思っています(笑)。

──私生活で影響は?

高校時代の友達と仲がいいのですが、彼らには“頑固”と思われているんじゃないかな。例えば「遊びに行こう」と誘われて約束をしたのに、誘ってきた友達が「彼女に呼ばれたから行けなくなった」と言ってきたら、もうダメですね。「お前が誘ったんじゃん。それおかしいでしょ!」みたいになりがちです(笑)。

──約束は守ろうよ、と。

友達の誕生日を午前0時に祝おうと集まる約束をしていたのに、1分遅れてきてヘラヘラしていた友達に「なんで?」と詰めたこともありました(笑)。今思えば、たったの1分遅れただけなのに。ちょっと硬すぎるのかなと思いますが、仲のいい友人たちは、そんな僕に慣れているので「はいはい」と受け止めてくれます。

──そういえば横浜さんは朝が苦手と聞いたことがあります。

いつも寝るときは翌日の服を着て寝ています(笑)。出発5分前に起きて、顔を洗って歯を磨いて即出かけられるように。本当に朝が苦手なので、そこまでしないとダメなんです。

ルーティーンはないけど、自分のペースが崩れると頭が真っ白になることもあります。いつもと違うことが気になってしまうんです。私生活でもかなり不器用だと思います。

──最後に、格闘技への情熱を注いで演じ切った映画『春に散る』を見た感想をお願いします。

試写を見たあと、「133分の長尺を感じさせない映画に仕上がったね」と佐藤浩市さんと話しました。ボクシングのシーンも見応えがあり、満足できるものになっていたのでうれしかったです。

リアリティを追求したので激しい打ち合いや流血シーンもありますが、仁一と翔吾の人生を懸けたリベンジが描かれ、ドラマ性も高い作品なので、きっと気に入っていただけると思います。ぜひ見ていただきたいです。



取材・文/斎藤香 撮影/石田壮一 ヘアメイク/永瀬多壱(Vanites) スタイリスト/伊藤省吾(sitor)

横浜流星 よこはま・りゅうせい

1996年9月16日生まれ。神奈川県出身。2011年俳優デビュー。2019年ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS)の好演が話題に。第100回ドラマアカデミー賞助演男優賞、第43回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。2021年には『線は、僕を描く』『アキラとあきら』『流浪の月』『嘘喰い』などの演技で第14回TAMA映画賞最優秀新進男優賞、第47回報知映画賞助演男優賞、第46回日本アカデミー賞優秀俳優賞を受賞。近作は『ヴィレッジ』(2023)。最新作は主演映画『MINI』「MIRROR FILMS Season5」(2024年公開予定)。2025年は大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)〜』(NHK)に主演。蔦屋重三郎を演じる。

『春に散る』(2023)上映時間:2時間13分/日本


元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)は40年ぶりにアメリカから帰国。居酒屋でトラブルに巻き込まれ、チンピラと勘違いしてある青年を殴ってしまう。殴られた黒木翔吾(横浜流星)は仁一のパンチを浴びて、元ボクサーの血が騒ぐ。「もう一度ボクシングをしたい。教えてくれ」と懇願された仁一は、翔吾とかつての仲間(片岡鶴太郎、哀川翔)と共に、一度は諦めたボクシングの世界に人生を懸ける決意をする。

8月25日(金)より全国ロードショー
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/harunichiru/
©️2023映画『春に散る』製作委員会

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