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フランスがサメ映画を作るとここまでオシャレで文芸的に!? 名作「ジョーズ」にオマージュを捧げたスタイリッシュすぎる「シャーク・ド・フランス」

集英社オンライン / 2023年8月12日 13時1分

大作からパロディまで、夏の風物詩としてすっかり定着した感のあるサメ映画。フランス映画史上初めて製作された、この夏必見のサメ映画の魅力に迫る。

まさかのフランス製サメ映画

© BAXTER FILMS - LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA - 2022

夏だ! 海だ! サメ映画だ!

元をたどればアメリカで、ここ数年は中国で、そして当然、日本でも大盛り上がりを見せているサメ映画に、またも新たな作品が現れた。“フランス映画史上初のサメ映画”という触れ込みで来日した、その名もズバリ『シャーク・ド・フランス』だ(2022年/原題:『L'année du requin』/英題:『Year of the Shark』)。



かのスティーヴン・スピルバーグ監督作『ジョーズ』(1975)が確立したフォーマットに沿いつつも、フレンチ・コメディらしいシニカルな視点と、コロナ禍やSNS社会などの現代的な小ネタが光る本作。いわゆるパニック映画らしいド派手さやカタルシスとは無縁だが、その独特の空気感が心地よく、正直なところ非常におもしろい1本だ。

© BAXTER FILMS - LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA - 2022

というわけで当記事では、まさかのフランス製サメ映画、『シャーク・ド・フランス』を紹介していこう。

南フランスの小さな村、ラ・ポワント。誰もがのんびりと日々を過ごしているこの地の海で、ある日凄惨な殺人事件が発生。早期退職を間近に控えていた、海上憲兵隊のベテラン上級曹長マジャ・ボルドナーヴは、本来ならばラ・ポワントには出現しないはずの人食いザメが、この事件の真犯人であると判断。早速住民の抗議を押し切ってビーチを閉鎖すると、自らサメ退治に乗り出す。

『ジョーズ』がベースのコメディ・ドラマ

© BAXTER FILMS - LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA - 2022

見事推測は的中し、人食いザメを捕らえたマジャはたちまち地元の英雄に。そのまま悠々と引退──するはずだったが、事態は思わぬ方向へ。時代が時代ということで殺処分は避け、遠く離れた海に放流した人食いザメが、あっという間にわざわざラ・ポワントまで戻ってきた上、開放中のビーチで犠牲者を再び出してしまったのだ。

それまでの英雄扱いから一転、「サメを殺さなかった」ということで槍玉に挙げられたマジャ。彼女は地元住民からは人殺し呼ばわりされ、ネットリンチや犠牲者遺族による報復など、壮絶な仕打ちを受けることに。
心身ともに深い傷を負ってしまったマジャだったが、しかし彼女は今再び、ラ・ポワントに現れた人食いザメに最後の戦いを挑まんとする──。

© BAXTER FILMS - LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA - 2022

監督・脚本はリュドヴィック・ブケルマとゾラン・ブケルマの兄弟。そして主演は『ヴィーガンズ・ハム』(2021)のマリナ・フォイス。同作では“日々ヴィーガンの惨殺にいそしむカニバリズム肉屋のぶっとびサイコ女房”というエキセントリックな役柄を務めた彼女だが、対するこの『シャーク・ド・フランス』では“正義感あふれるカタブツ女性上級曹長”という、ある意味真逆すぎるキャラクターを演じている。

© BAXTER FILMS - LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA - 2022

繰り返しになるが、本作は『ジョーズ』がベースのコメディ・ドラマ映画である。田舎町を舞台にした設定、お約束通り冒頭で人食いザメの被害に遭う犠牲者、憲兵隊の上級曹長というヒロインの役職(『ジョーズ』の主人公は警察署長)、視聴や地元の有力者を巻き込んでの大騒動と、類似点は多数見受けられる。

劇中で描かれるサメはコロナの象徴

© BAXTER FILMS - LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA - 2022

サメが直接的に画面に映ることこそ少ないが、話の根幹には終始しっかりサメという存在が関わっている、その作りも『ジョーズ』的だと言えるだろう。
その上で、パリに対する地方民のひがみっぷりや、“やっつけてもいい悪者”を求めてヒロインへの非難をエスカレートさせていく一般大衆への風刺、あくまでもとある田舎町で起こったことと、ある1年の出来事として、どこか淡々とした語り口で進行する本編など、本作独自のエッセンスも盛り込まれている。

監督いわく本作のサメはコロナの象徴とのことであり、それを踏まえて鑑賞すると、よりおもしろみも増すだろう。

© BAXTER FILMS - LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA - 2022

もちろん風刺だコロナだ云々を抜きにしても、単純に話がしっかりしており楽しめる。
作品の方向性の都合上、昨今の出オチ的な、ぶっとんだサメ映画のような外連味は少なく、強烈なフックには欠けるかもしれない。

が、かわりにといってはなんだが、中身は確かであり、小粒なりの文芸的な魅力とオシャレさ、そしてほかのサメ映画にはなかなか見られないタイプのユーモアがある。ド派手さとは無縁のドラマ映画とは言ったものの、案外テンポはよく、ニヤリとする小ネタも散りばめられているため、さして中だるみを感じないままスイスイ鑑賞できるのも好印象だ。

個人的には高く評価しており、おもしろいサメ映画であることは間違いない。


文/知的風ハット

『シャーク・ド・フランス』(2022)L'année du requin 上映時間:1時間27分/フランス


フランス南西部にあるリゾート地ラ・ポワント。ある日、この小さな美しい村で正体不明の怪物に襲われた男性が発見される。観光客で賑わうビーチは大パニックとなり、閉鎖されることに。早期退職を予定していた海上警察官の一員マジャ(マリナ・フォイス)はこれがサメの仕業であると推測。最後の任務としてサメ退治に挑む。その後、勇敢な彼女はサメの捕獲に成功し、地元の人からも祝福され引退。しかし、新たに遺体の一部が発見され、海岸地帯は再び警戒態勢に! マジャは地元の人たちから非難を浴び、立場が一転。そして彼女は再びサメ退治に向かう。


公式サイト:http://unpfilm.com/sharkfrance/
8月11日(金・祝)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
© BAXTER FILMS - LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA - 2022

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