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24時間テレビはどうなる? アフターコロナで4年ぶりに復活した『FNS27時間テレビ』に絶賛の声。なぜ長丁場の主軸を担った番組が『千鳥の鬼レンチャン』だったのか

集英社オンライン / 2023年8月26日 12時1分

新しい生活様式、リモートワーク…。コロナ禍で私たちが経験した行動変容。それは当然テレビの世界にも及び、特にバラエティ番組はその対応に困難を極めた。今年4年ぶりに復活した『FNS27時間テレビ』もそうだ。主軸となったのは『千鳥の鬼レンチャン』スタイル。この番組が選ばれた根拠にもコロナ禍の経験があった? テレビ番組に関する記事を多数執筆するライターの前川ヤスタカが、3年間に及ぶコロナ禍でのバラエティ番組の苦闘とともにその理由を考察する。

アフターコロナで待望の復活『FNS27時間テレビ』

今年の夏は全国各地でお祭りが復活している。

東京でも夜の街を歩けば盆踊りが開催されていたり、花火大会が大いに盛り上がっていたりと、久方ぶりの行動制限のない夏を多くの人が満喫している。



フジテレビの夏祭り『FNS27時間テレビ』も今年4年ぶりに復活した。

多くの人がすでに書いているのでここで詳しく反芻はしないが、『千鳥の鬼レンチャン』を主軸にすえ、バラエティ班総動員で繰り広げた長丁場の生放送は、フジテレビ復活を大いに印象づけるとともに、久々にテレビの楽しさを見せてくれた素晴らしいものであった。

正直なところ、始まる前は、フジテレビだということを理由にどんな内容でも叩く人が多いのだろうなと予想し、私だけでも褒めちぎる記事を書いてやるさと意気込んでいたのだが、実際終わってみると絶賛の声が大多数であった。

しかし思い返してみると、『FNS27時間テレビ』がなかったこの3年間は、テレビ番組、特にバラエティにとって試行錯誤の連続であった。行動制限解除を機に改めて振り返ってみたい。

ロケもスタジオ収録もできなくなったバラエティ番組

2020年に始まった新型コロナウイルスによる不自由な日々。それは芸能界も例外ではなかった。

当初、バラエティ番組は従来通りで何も変わらなかった。しかし芸能界で感染者が複数出始め、出演者からも「バラエティの収録はいまだに密」「怖い」と言った声が上がると、テレビ局も制限を強化。バラエティ番組はロケもスタジオ収録もできなくなり、リモート収録という形を取るようになった。

一時的にはほとんどの番組がリモート収録となり、当時のTVerのサムネイルがほとんどZoom画面ばかりという異常事態になった。

当時その状況を逆手にとって生まれたのが伝説の『有吉の壁』(日本テレビ系)リモート収録「なりきりの壁を越えろ」である。芸人たちが芸能人になり切って、自宅からのリモート中継をするという体の回。

とにかく明るい安村が原田龍二として温泉中継を始め、安村のリアル自宅部屋にもかかわらず、大量の水をかぶり、ぶちまけるという凄まじいボケを披露。出番が終わった後に哀愁漂う様子で水をかき出している安村の様子も有吉がいじり倒した。

多くの芸能人が慣れないリモート収録に戸惑い、音声の微妙なタイムラグや、アイコンタクト・阿吽の呼吸の通じなさに四苦八苦する中、リモートでもお笑いはできるということを力技で示したのは素晴らしかった。

前代未聞! 無観客の中、行われたお笑いの賞レース

無観客のシチュエーションも多くのバラエティにとって向かい風であった。

スポーツや音楽ライブの無観客も厳しい条件だったが、バラエティにとっても無観客はなかなかきつい状況である。時に観客いじりも駆使する『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)などは、無観客期間中はセットも組まれずソファのみで、そこにマツコ・村上の二人がポツンと座り語る寂しい状況であった(それはそれで味があったが)。

そんな中、2020年の『R-1ぐらんぷり2020』(フジテレビ系)は無観客開催となった。

バラエティなら無観客の番組もあるが、客の反応も一つの要素になるお笑い賞レースで無観客は前代未聞。そもそも成立するのかすら心配されたが、渾身のスタッフ笑いもあり、無事に野田クリスタルの優勝で幕を閉じた。

コンビ芸に影響を与えたディスタンスの確保

また、ディスタンスの確保というのも一苦労であった。接触系の収録ができないため、多くの企画が不可能になった。

途中からお笑いのコンビは家族同様なので接触可という解釈にされたが、当初は漫才もディスタンスをとったりアクリル板を挟んだりという必要があった。

トム・ブラウンの定番ツッコミ「ダメー」も封じられてしまい、ディスタンスがとれるように長い手の形の棒で「ダメー」とやってみたり、手袋をみちおの頭にピシャッと投げて「ダメー」とやってみたりと苦労していたのを覚えている。

一例として出すのが適切かはわからないが『ゴッドタン』(テレビ東京系)の名物企画、男性芸人と女性芸能人(主にセクシーな女優さん)がイチャイチャしながら漫才をする「イチャまんグランプリ」もできなくなり、復活したのはほんのつい最近であった。

ディスタンス確保のため、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)のスタジオは7人がギュウギュウに座ってVTRを見ていたのが4人となり、『オールスター感謝祭』(TBS系)はスターの人数を大幅に減らさざるを得なくなった。

出演者のディスタンスが気にならない画面分割へシフト

出演者が減ったのと同時に、その距離も遠くなったため、カメラの画角に全体が収まらないという事態が発生。そこで生まれたのが、画面分割の手法である。

『ポツンと一軒家』(ABCテレビ・テレビ朝日系)あたりがわかりやすい例だが、所さんはじめ(本当は微妙に離れた場所にいる)スタジオコメンテーターが縦4分割された画面に1人ずつ表示されたりするようになった。

距離のある出演者たちがあたかも近くで話しているかのように見せるこの手法は、当初は苦肉の策だったが、今では見る側もすっかり慣れ、別にディスタンスをそんなにとっていない番組でも使われている(尚、この手法は不祥事を理由に一部の出演者登場場面をカットする手法としても近年使用されている)。

考えてみれば、漫画では、コマ割りで同時に何かをやっている複数人の姿を描くことはよくある。やむを得ずやったことが、意外と効果的な手法ということで定着した一例といってもいいだろう。

千鳥の強さが際立つVTR+スタジオコメントの新構成

また、スタジオに限られた人数しかいられないとなった結果、雛壇に芸能人たくさん系の番組は苦戦を強いられ、代わりにVTRを見る系の番組が増えた。

世界の衝撃映像的な安易なものももちろん増えたのだが、コロナ禍前から大ブームを巻き起こしていた千鳥の『相席食堂』(ABCテレビ)的なスタジオのツッコミとVTRをセットで楽しむスタイルの番組も増加した。

VTRを見る系の番組というのは、VTRパートとスタジオパートが明確に分かれているものが多かったし、今も主流ではある。その場合、VTR中もスタジオは映るがそれはワイプの中で表情が映るのみだ。しかし『相席食堂』の場合はスタジオのツッコミありきの作りで、VTR中に千鳥のコメントがバンバン入るし、VTRを中断してスタジオに引き戻す。

『あらびき団』(TBS系)の流れもくむ『千鳥のクセスゴ!』(フジテレビ系)も事前収録されたネタに千鳥がバンバンコメントしていくスタイルである。

VTRの面白さ、スタジオの面白さを分けて考えるのではなく、VTR+スタジオで相乗効果を出す。そういう番組が増えてきていて、千鳥の凄さが際立ってきた感がある。

コロナ禍のバラエティの苦労・変遷を経て復活した今回の『FNS27時間テレビ』。

生放送ではあったが、主軸が事前収録VTRに千鳥・かまいたちが突っ込むスタイルの『千鳥の鬼レンチャン』となったのは、ある意味で必然だったのかもしれない。

何はともあれ、テレビバラエティの世界にも祭りが戻ってきた。
久々に大勢と共に笑いあえる夏を楽しみ尽くしたいと思う。

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太

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