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「マーク・ザッカーバーグは19歳で成長が止まっている」「経営陣はゴマスリ集団」スキャンダルの内部告発者が語るFacebookが抜け出せない根深い企業体質

集英社オンライン / 2023年8月16日 18時1分

月間利用者数30億人、2022年の売上1,166億ドルを誇るFacebookは、世界最大のソーシャル・ネットワークだ。2021年に内部告発をした元社員フランシス・ホーゲンが、その恐ろしいスキャンダルの内幕と背景を証言する。

Facebookを取り巻くさまざまなスキャンダル

2018年、「ケンブリッジ・アナリティカ」をめぐるスキャンダルについて米下院の公聴会で証言したマーク・ザッカーバーグ
AP/アフロ

Facebookの共同創設者で現CEOのマーク・ザッカーバーグが、かつて「毎朝起きて携帯をオンにすると、ガーン! 問題発生のパンチが飛んでくる」と語ったように、Facebookの頭上では、多数の問題がブンブン飛び交っている。



まず、長い間問題視されているのは、利用者の個人データの管理の甘さだ。

2018年、選挙コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ」がFacebook利用者8700万人の個人データを不正に利用したスキャンダルが発生。Facebookから得た個人情報を利用した同社が、EU離脱を問うイギリスの国民投票に関与し、2016年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプの当選を裏で後押ししていたことが明らかになったのだ。

このスキャンダルにより、プライバシー管理の甘さが大批判されたFacebookの評判や株は急降下した。

これを機に利用者グループがプライバシー侵害の団体訴訟を起こし、2022年12月に7億2千5百万ドルをMeta (Facebookの会社名)が支払うことで和解。

※「ケンブリッジ・アナリティカ」のスキャンダルについては、Netflixのドキュメンタリー『グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル』(2019)に詳しい。

そして2021年に再び大きな話題になったのが、Facebookの「civic integrity (公民道徳、誤情報拡散防止)」部門のプロダクト・マネージャーとして勤務していた情報分析科学者、フランシス・ホーゲンによる内部告発だ。

Facebookは利用者がログインしてからログアウトするまでの時間の長さを重要視するアルゴリズムを使っている。ログイン時間が長いほど広告に接する時間も長く、広告収入が増えるからだ。

ログイン時間を長引かせるポイントは、ユーザーの感情を刺激し「もっともっと」と関連ポストを追い続けるようにすること。そのために、人の不幸を喜ぶ負の要素や怒りや悲しみを刺激するポストをシステムがみつけ出し、表示するように操作しているという。

Facebookに最大の危機をもたらした告発

さらに新型コロナウイルスやワクチンに関するデマ、エチオピアやミャンマーの民族浄化、インドでの宗教間の紛争など、有害なコンテンツの拡散を助長していたことを指摘。インスタグラムが10代の若者に悪影響を与えることを認識していたにもかかわらず、対策を講じなかったことも問題視した。

そして違反コンテンツの審査をする際、政治家や著名人、インフルエンサーなどを優遇し、免除していたとされている。

Facebookが掲げる大義名分=「利用者は政治、文化、ジャーナリズムのエリートたちと対等に話すことができ、利用の制約はすべのユーザーに同じに適応される」とは程遠く、選ばれた人たちを優遇し、公共の安全よりも利益を優先しているとし、約2万ページにおよぶ内部文書を発表。

9月にはウォール・ストリート・ジャーナルがシリーズ記事を発表した。

告発者のフランシス・ホーゲンが発表した著書

2023年5月にホーゲンの著書『The Power of One:How I Found the Strength to Tell the Truth and Why I Blew the Whistle on Facebook』(ひとりの力:いかにして私が真実を告発する力をみつけたか Facebookの内部告発を決意した理由)が出版され、筆者はインタビューする機会を得た。

ホーゲンは言う。

「私がFacebookにリクルートされた2019年頃は、ケンブリッジ・アナリティカのスキャンダルにより、『えっ、Facebookに行くの? やめたほうがいい』と言われる時流の中にいました。しかし私は、Facebookとマーク・ザッカーバーグの可能性を信じていましたし、その将来に期待さえしていたんです。『Facebookのために何かできるのではないか』という気持ちもあって入社しました。

しかし入社して2〜3週間で、この会社が抱えている問題が“ただごと”ではないとわかりました。2年間仲間と問題を追求し、その解決法を提案し、なんとかするべきではないかと繰り返し指摘しました。ところが上からなんの反応もなく、問題をわかっていながら対処しない。意識的に無視する態度に困惑し、落胆しました」

ひとりでは何も変えられないと感じた彼女は、Facebookが利用者の安全より自分たちの利益を優先していることを世間の目に晒すことで、彼らを変えるしかないと内部告発を決意したという。

経営陣はザッカーバーグのゴマスリ集団?

ホーゲンはGoogleやPinterestでアルゴリズムの開発をした経歴を持つ

ホーゲンのFacebook批判は続く。

「Facebookは会社のシステムそのものがマーク・ザッカーバーグに幸せ感と満足感を与えるように作動しているんです。彼は周りを『マーク・ザッカーバーグは誤解されている天才だ』と持ち上げてくれる人で固めています。彼のやることをすばらしいと褒め、承認し、サポートし、これでいいんだと安心感を与える人間ばかりが側近なのです」

「彼らは何千万ドルという、考えられないような高額の報酬をもらっている人たちです。今の経営陣は外部の状況に何の反応もしません。おかしなことを言うようですが、ゴマスリ集団からマークを解放する“フリー・マーク運動”を起こしたいくらいです」

彼女はザッカーバーグを、「19歳(Facebookを創立した年齢)で成長が止まっている人」だと表現する。

「ずっと成功者としてもてはやされてきましたから、問題が起こったときには解決しなければならないこと、それがどんなに居心地の悪いことだとしても、やらなければならないということを学ばずに生きてきたんです。

成長するチャンスを与えられなかった人、という感じでしょうか。マークひとりがすべてをコントールしていることが、最大の盲点だと思います。状況をわかっていても、改善するための助言をしてくれる人がいないのは致命的です。

私が何年か働いていたGoogleも、共同創設者のラリー・ページとセルゲイ・ブリンのふたりが100%のコントロールを持っています。しかし、少なくとも彼らはふたりです。彼らの間で交渉し、話し合いを重ね、お互いの同意がなければ物事は進みません。彼らは切磋琢磨をしています」

ホーゲンは現在37歳。若々しく溌剌としていて、当然のことながら自分がしていることへの絶大な自信を持っている。しかし、世界一のメディア・プラットフォームを敵に回すことは、底の見えない谷に飛び込むようなものだったはずだ。

「Facebookという巨大企業に抹殺されてしまってもおかしくない状況に自ら飛び込んで行くのは、相当の覚悟がいりました。私は表に出ずアノニマス(無名)でいたかったんです。でも私をサポートしてくれている人たち、特に弁護士チームから、『あなたが表に出れば出るほど、Facebookは何もできなくなる。彼らにチャンスを与えるな』と言われました。そこから、表立ってインタビューを受けることにしました」

危険を感じたことは「今のところはない」と言う。彼女はカリフォルニア州のホイッスルブロアー(告発者)保護法令で守られている。

「私は今プエルトリコに住んでいます。彼らがわざわざここまで来るのには、時間がかかりますからね(笑)」


取材・文/中島由紀子

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