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【35歳・処女のリアル】恋愛経験もあるキュートで聡明な才女が、30歳を過ぎても処女でいることを選択した理由

集英社オンライン / 2023年8月18日 19時1分

30歳を過ぎて性経験がない女性……彼女たちはなぜ処女でいることをを選択したのか。「男性よりも、恋よりも、研究が大事」という35歳の女性を、ノンフィクション作家の家田荘子がインタビューした。『大人処女ーー彼女たちの選択には理由がある』(祥伝社新書)より一部抜粋・再構成してお届けする。

#2

シンガポールの教育事情

男性経験が「ある」「ない」を意識しやすいのは、「みんなと同じ」だと安心できる人の多い日本だからだろうか。海外の人は、男性経験の「ある」「ない」をどう捉えているのか? シンガポール人のシェリーさん(仮名、35歳)がインタビューに応じてくれた。

シェリーさんは2年前に来日し、日本の優秀かつ有名な私立大学で研究員をしている。研究テーマは「日本のジェンダー」についてである。日本に来る前はオーストラリアの国立大学で人類学を専攻し、5年間、ジェンダーの研究をしていた。



シェリーさんの生まれはシンガポール。父親は会社員で、母親は主婦。現在、70歳近い2人は高卒で苦労したため、シェリーさんが小さい時から厳しく、また教育の機会を与えてきた。

シンガポール

「シンガポールは学歴社会。ちゃんとした大学を卒業しないと、就職してもお給料が低いんです。小学校は中学受験のため、中学校は高校受験のために。高校は大学受験のため皆、猛勉強してるんです。優秀な三つの国立大学のひとつを卒業すれば将来が約束されているって皆、そう思って頑張ってるんです」

シェリーさんは、流暢な日本語で話す。シンガポールにいた頃、ドラマや音楽で、一時的に「日本ブーム」が来て、シェリーさんも日本に興味を持ち、日本を好きになった。それで、シンガポールにある日本語学校へ3年ほど通って日本語を習ったという。その名前は「あいうえお科」。言ったシェリーさんも、聞いた私も、名前が面白くて同時に笑ってしまった。

シェリーさんが言うように、シンガポールの教育水準の高さは、世界的にも注目されている。シンガポールには、総合、工学、工科デザインの国立大学3校があり、私立が3校、他に政府出資の経営大学と、2009年設立の身近な門戸を開いた国立大学がある。なかでも、シェリーさんが卒業したシンガポール国立大学は、2022年世界大学ランキングで21位、アジアで3位を獲得している(「Times Higher Education」)。

「ずーっと勉強です」

シェリーさんは聡明でキュートな女性だ。ロングヘアの肩から下をピンクに染めている。2ヵ月前、シンガポールに帰った時、美容師の従姉妹に「実験で」染めてもらったそうだ。目がパッチリとして鼻筋が通っているので、華やかなヘアスタイルもよく似合う。カラーリングをしていても、髪の毛はすこしも傷んでおらず、美しかった。

「幼稚園の時から、お母さんに『勉強しなさい』って言われて、家庭教師に教えられていました。イヤだったけど、しょうがないよね。勉強しないと、いい大学へ行かれないから」

シェリーさんは幼稚園の頃、「隣のお姉さん」に英語と数学を教えられていた。シンガポールでは、母国語である英語を小学校へ行く前に習い始めるのが一般的という。シェリーさんが小学校に入ると、プロの家庭教師が週に3回、家に来た。

国立大学への道は大変な難関で、小学校卒業時に行われる初等学校卒業試験(PSLE)が、その後の進路に大いに影響する。PSLEの結果によって、エクスプレス、ノーマルアカデミック、ノーマルテクニカルコースの三つに分けられる。

写真はイメージです

中等教育(中学、高校)では、エクスプレスとノーマルアカデミックのコースのみが大学準備コースへ行くことができる。エクスプレスコースのみ、卒業時にGCEIB(大学入学資格)を取得し、さらに1年の就学ののち、試験を受験できるそうだ。ちなみにノーマルアカデミックコースの人は、職業訓練学校へ入学したり就職することになる。

「成績によって、上位何%かがトップの学校に行けて、残りのうちの何%かが、その下のレベルの学校……という具合に差が出るんです。中学3年生の時も、高校に行ける人、行けない人……と振り落とされていって、大学も同じ。大学に入っても日本みたいに遊んじゃうと卒業できなくなるので、ずーっと勉強です。ちゃんと卒業しないと、いい仕事に就けない。仕事がないと結婚もできない。給料の高い仕事に就かないと、生活はけっこう厳しくなるんです。シンガポールは物価が高いから」

ということは、いい生活ができるのはほんの一握りの選ばれた大学卒業者だけであって、多くの人たちはそうでない生活を強いられることになるのではないか。

シンガポールの大学生は超勤勉

「みんな修理の仕事とか力仕事で大変なのに、給料も低いんです」

シェリーさんの家庭は、後者の「多くの人たち」ということになる。だから家計を犠牲にしても、家庭教師をつけ、英才教育をシェリーさんに受けさせたということなのか。

「才女が生まれたってこと?」
と尋ねると、
「うん」

シェリーさんはすぐに答えて笑った。どうやら、謙遜や遠慮といった行為は必要ないらしい。

「大学時代も、とにかくいろいろ忙しくて。授業のある日は学校へ行って、家に帰ったら次の日の授業の準備しなきゃいけない。いっぱい読むものがあって、次の日、学校へ行って、また帰って準備の繰り返し。無事卒業しても、海外で就職する人も多いんです。私みたいに、やりたい仕事がたまたま海外にあるという……」

シンガポールの大学生は宿題が多く、勉強をする学生で図書館はいつも満席。シェリーさんのように、勉強、食事、睡眠を繰り返すだけの忙しい大学生がほとんどのようだ。

写真はイメージです

シェリーさんのこれまでの人生も、勉強に忙しいばっかりだった。オーストラリアの大学でも研究と勉強がひたすら続く。シェリーさんは大学から奨学金を毎月20万円くらいもらって、研究生をしていた。この金額は、オーストラリアではけっして高くはない。研究生の先は講師になるか、研究者になるかである。いずれも、あまり豊かなお金には縁がなさそうだ。

シェリーさんは歯並び以外、かなりの美形と言えるが、金銭的余裕がないのか、興味がないのか、とても質素な服装をしている。七分袖のシンプルな紺色のワンピースにノーブランドの布製バッグを持っていて、前姿は美しいが、顔がわからないうしろ姿からは誘いがかかりにくいタイプだ。なんと奨学金のなかから、仕事をリタイアした親に仕送りもしているという。

「オーストラリアの大学院では授業はあまりなくて、とにかく研究ばっかり。ずーっとパソコンの前に座って、修士論文だったり宿題だったり、先生へのレポート提出だったり……。締め切り締め切り締め切りの繰り返し」

修士論文は、A4サイズの紙に英語で280ページ程度書かなくてはいけない。そればかりか、出版社へ送る原稿や学会で発表する論文などを書くために、毎日、研究やインタビューを重ねる。研究生でい続けるということは、こういうことなのだそうだ。

「パソコンを長時間使えば目がとっても疲れますから、研究以外の時間は寝てました。1日10時間とか……」

シェリーさんは、ちょっと照れくさそうに笑った。研究研究でとても忙しい毎日ということは、これで私にも十分に理解できた。

同じ大学の研究生からハグ。そしてキスをされて…

ひと息ついたところで、私は早速、本題に入ることにした。そう、シェリーさんの恋愛についてである。研究ばかりしているとはいえ、清潔で好感を持たれやすい容姿をしているシェリーさんをオーストラリアの男子大学生たちが放っておくわけがない。アプローチは、きっとあったはずだ。私がそれを言うと、

「全然全然、全然。誰も来ない」

シェリーさんは3回「全然」と繰り返して、軽く笑い飛ばした。本当に、これまで何にもなかったのだろうか。たとえばキスは? と尋ねると、

「ちゃんとしたのもあります。オーストラリアで、5年くらい前」

写真はイメージです

おもしろい日本語が返ってきた。ここからの話になると、急にシェリーさんの口数が減って、話す言葉の長さも短くなった。勉強のことは聞かなくてもよどみなく話していたのに、恋愛のことになると、急に一問一答に変わっていた。

その男性は同じ大学の研究生で、これまでも「友達の範囲内」として皆と一緒に話をしたり、彼の家に遊びに行ったりもした。その日も、いつものように友達として、その彼の家へ遊びに行った。日本では男性の家へ行ったら、何かあっても「OK」と解釈されやすいが、どうやら感覚が違うらしい。

その日、突然、彼がシェリーさんをハグし、キスをしてきた。そのキスは、次の段階に進む気配の感じられるキスだった。

2へつづく

文/家田荘子

『大人処女ーー彼女たちの選択には理由がある』(祥伝社)

家田荘子

2023年8月1日

1,056円

272ページ

ISBN:

978-4-396-11685-9

9者9様のドラマ
不倫、少女売春、風俗、高齢者の性など光の当たっていない世界を取材してきた著者は、池袋の淫靡な雰囲気が漂うバーで、男性経験のない清楚な女性従業員・梓さん(仮名、28歳)に出逢う。5年後、19歳年上のイラン人男性と結婚した彼女と再会し話を聞くと、結婚前も結婚後も夫と肉体関係はないと言う(夫以外ともない)。30歳を過ぎて性経験がない女性、大人処女。彼女たちは、なぜそれを選択したのか。著者は、梓さんを含む9人に寄り添うように取材、すこしずつ聞き出していく。そこには、9者9様のドラマがあった。さまざまな価値観と生き方を伝えるノンフィクション。

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