夫の風俗通いをOKにしたけど離婚に…夫婦の夜の生活で発覚する発達障害の問題「性欲はあるけど、抱かれた時のにおいとか感覚がどうしてもダメなんです」
集英社オンライン / 2023年8月27日 18時1分
「うちの夫(妻)は発達障害で、ぜんぜん私のことをわかってくれないし、家のことをやろうともしない。一緒にいてもつらいだけなので、別れることにした」……日本の夫婦の3組に1組が直面しているという離婚。その理由に、発達障害が挙げられることが増えている。
夫婦関係の発達障害にみられる5つの特徴
発達障害には、相手の気持ちが読めない、特定のことに固執する、注意が散漫になるなどといった特性がある。それが夫婦の相互理解を難しくすることもある。よく見られるのは次のようなことだ。
・思い込みが激しく、それ以外の意見をいっさい聞こうとしない。
・1つのことにのめりこみすぎて、家庭を顧みようとしない。
・空気を読まず、自分の思いや欲望だけを押しつけてくる。
・頼みごとをしても数分後には忘れて違うことをしている。
・家事や片付けができずに家がゴミ屋敷になる。
こうしたことが夫婦関係に亀裂を生み、場合によっては離婚につながるのだ。今回、集英社オンラインに寄せられた当事者の証言によれば、発達障害が及ぼす影響は夫婦間の性生活にも色濃く表れているという。実際の事例を紹介したい。
1日おきに1時間きっかり性行為
●A子さん(30代女性)
20代前半で、A子さんはSNSで知り合った男性と交際3か月で結婚した。11歳年上の夫は、後に発達障害であることが判明するが、出会ったころは「ちょっと変わった人」くらいの印象しかなかったらしい。
結婚後に一緒に暮らしはじめると、A子さんはだんだん夫の融通の利かなさが目に付くようになった。片付けや物の置き場所に異常なくらい固執し、髪の毛が落ちているだけでパニックになった。食事への執着も尋常ではなく、朝昼は自分で毎回同じものを作って食べ、夕飯は細かく献立を決めてA子さんに調理させた。
A子さんは若かったこともあってがんばって要求に応えたが、夜の営みはまた別だった。夫は必ず1日おきに23時~24時までいつもまったく同じ順序で性行為をしようとした。しかも決まって60分ちょうど。たとえ、A子さんの体調が悪くても、いっさいお構いなしで、断られれば激昂する。それは子どもが生まれ、育児で大変な時期も変わらなかった。
彼女は言う。
「赤ん坊が夜泣きしていても、私が風邪をひいていいても、強引に体を求めてくるんです。行為もすごく一方的で、なんかロボットがやっているみたいな感じでした。愛情が感じられないんです。
私は肌を重ねることが本当につらくなって、何度か『無理してまでやらなくていいじゃん』と言ったんですが、その度に猛烈に怒りはじめて2時間も3時間も説教されるんです。それでケンカになるくらいならと、心を無にして受け入れることにしたんです」
そんな夫婦関係が揺らぐのは、30代前半だった。A子さんは子宮の病気が判明して手術を受けることになった。だが、夫は術後で体調不良がつづくA子さんにすら、無理やり性行為を求めてきた。
もう耐えられない。A子さんは直に夫に話しても理解されないので、これまでのことを義理の両親に相談した。義理の両親からは離婚を決める前に、一度夫を病院へ連れて行こうと提案された。義理の両親も彼の言動にずっと違和感を覚えていたらしい。
「夏休みの一日くらい家族サービスしてよ」
病院へ行ったところ、医師からはこう言われた。
「発達障害です。この特性は治るものではありません。周りも本人もそれをきちんと理解し、どうすれば仲良くやっていけるかを相談して決めていってください」
話し合ったところ、夫はルーティンの1つとして1日おきに性行為をするものだと考え、それを頑なに守っていたらしい。そこでA子さんは、そんなふうに考える必要はないから、性行為はしばらく控えようと提案した。
ある日、A子さんはこう言った。
「ねえ、夏休みの一日くらい家族サービスしてよ」
夫は答えた。
「嫌だ。自分の時間がなくなるから」
それを聞いたとき、A子さんは、夫の視界には自分たちは存在してないのだと確信した。これまでは義務として行っていた性行為によってかろうじてつながっていたが、それがなくなったことで、夫は自分の世界だけに没入し、家族への関心を失ったのだ。
――もう無理だ。
A子さんは再び義理の両親に会って、離婚を考えていると話した。義理の両親はもう少し話し合ってみてはどうかと提案した。だが、A子さんには夫を変えられる自信はなく、離婚することにした。
「前夫は真面目だし、仕事ができる人なので、可能なら一緒にいられたらと思っていました。でも、発達障害って話し合って解決するのがすごく難しいものだと思うんです。もし話し合って家族サービスをしてくれるようになったところで、彼にとってはそれも義務の一つとしてやっているだけで、本当の意味で私や子どものことを思って動いてくれるわけじゃない。そんな関係がずっとつづくことがつらくて離婚を決めたのです」
「性欲はあるけど、抱かれた時のにおいとか感覚がどうしてもダメで…」
断っておくが、発達障害があったからといって、すべての人がこの夫と同じようなことをするわけではない。発達障害に加えて、本人のさまざまな特性や生まれ育った環境などが複雑に絡み合い、こういう状況が生まれるということだ。
ただ、A子さんにしてみれば、これまでの結婚生活のさまざまな状況から、話し合って解決できる問題ではないという結論に至ったのだろう。それが離婚の決定的な動機となった。
A子さん夫婦とは逆に、発達障害ゆえに性行為を極度に苦手とし、遠ざけようとする人もいる。次はその例を紹介したい。
B美さんは高校生のころに発達障害だと診断され、薬の服用をはじめたという。その後20代半ばで結婚を前提としたマッチングアプリで出会った3歳年上の男性と結婚した。
B美さんは20代前半の時に2回だけ性行為をして別れた彼氏がおり、その次に付き合ったのがこの夫だったらしい。結婚を前提としたマッチングアプリで出会ったため、実質3週間で結婚に至ったそうだ。
同じマンションに暮らしはじめて彼女が気づいたのは、自分には性行為が合っていないということだった。彼女には発達障害の症状の一つである感覚過敏があり、男性の体のにおいだとか、体毛が触れるザラザラとした感触が耐えられないほど不快に感じるのだ。それは夫だろうと例外ではなかった。
「性欲がないわけではないのですが、それ以上に抱かれた時のにおいとか感覚がどうしてもダメなんです。もうちょっと頭がおかしくなっちゃうくらい嫌なんです。結婚当初は数週間に1度は我慢して受け入れていたんですが、しばらくしてどうしようもなくなって拒むようになりました」(B美さん)
さほど性体験がない状態で結婚したがゆえに、結婚後に自覚することになったのだろう。
風俗OKで子どもは人工授精か養子で…
夫のほうからすれば寝耳に水だ。結婚した後になって感覚過敏だから夫婦の営みができないと言われても納得できることではないだろう。
夫婦の間で何度か話し合いがもたれた。B美さんの主張は、風俗へ行くことは許すから性行為は外でしてくれというものであり、子どもがほしいなら人工授精か養子ではどうかというものだった。だが、夫はそれを受け入れられず、結婚から2年後に離婚することになった。
冒頭で述べたように、発達障害の概念が広がることによって、夫婦がそれを離婚の理由に挙げることが増えた。
もちろん、発達障害であるとわかったことによって、理解をより深められるようになることもあるだろうが、A子さんのように「治らない」と考えて絶望したり、B美さんの夫のように限界を感じたりするケースも少なくない。特に「性」の分野では、すれ違いが大きくなる傾向がある。
発達障害への理解とはよく言われることではあるが、そこには性の問題も含まれていることも考えなくてはならないだろう。
取材・文/石井光太
★取材協力者募集
シリーズ「発達障害アンダーグラウンド」では、発達障害の人々が抱えている生きづらさが社会の中で悪用されている実態を描いています。発達障害は、時として売春、虐待、詐欺、依存症などさまざまな社会問題につながることがあります。もしそうしたことを体験された人、あるいは加害者という立場にいた方がいれば、著者が取材し、記事にしたいと考えています。プライバシーや個人情報を厳守することはお約束しますので、取材に協力したいと思う場合は下記までご連絡下さい。
メールアドレス:shueisha.online@gmail.com
Twitter:@shueisha_online
外部リンク
- 篠山紀信も撮影した伝説のレディース総長すえこ。「見かけたらボコボコにしてました。髪を黒く染めて真面目になるか、どうしても不良やりたかったらうちのチームに入るか」
- 「いつかは関東をまとめたい」13歳の下っ端からたった2年で総長になり、後に社会現象を巻き起こした伝説のレディースの野望―暴走族雑誌『ティーンズロード』初代編集長の証言
- 日本語AI生成に明るい未来はあるのか…ひらがな、カタカナ、漢字が入り混じる「言語構造の不利さ」が圧倒的な壁に
- 息子の大学レポートも代筆する「超過保護親」…30歳引きこもり男性が覚せい剤で逮捕されて発した衝撃の言葉とは
- 社会人の学びなおしで勝ちたいなら“勉強を外注”せよ。人に仕事を任せられない会社は成長しないのと同じ発想がもたらす根拠とは
この記事に関連するニュース
-
おしどり夫婦のふりをしています… 夫婦が「周りに言えない秘密」4つ
ananweb / 2024年7月21日 20時15分
-
友人に「モラハラ洗脳じゃない?」と指摘され…「私は無価値」「夫の付属品」と感じていた36歳女性の“夫に否定され続ける”日々
オトナンサー / 2024年7月20日 9時10分
-
家庭崩壊の引き金になります… 家庭を壊す「要注意人物」の特徴
ananweb / 2024年7月11日 20時15分
-
高畑充希“婚外恋愛と風俗どっちが許せる?”を明かす。大河ドラマから「セックスレス夫婦ドラマ」まで話題
女子SPA! / 2024年6月30日 8時45分
-
医師に聞く!「更年期セックスレス」の解決策&対処法
ハルメク365 / 2024年6月28日 22時50分
ランキング
-
1「うちの病院、ヤバすぎる」美容クリニック従業員がSNSで暴露…なぜ「内部告発」を止めることはできなかったのか?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月27日 7時15分
-
2街にあふれる「アルファード」 なぜ「先代」も“高い”? すでに“型落ち”でも「現行型」に迫る「高リセール」維持する理由とは
くるまのニュース / 2024年7月26日 10時10分
-
3致命傷になる部位ってどこ? バイク事故で守るべきポイントとは
バイクのニュース / 2024年7月27日 10時10分
-
4日本のにんにくは中国産が9割。「国産にんにく」と「中国産にんにく」の違いとは? 3つの産地で比較
オールアバウト / 2024年7月26日 21時5分
-
5老眼も眼精疲労もこれで防衛できる…眼科医直伝どんなに忙しい人でも毎日続けられる"両目の自己回復習慣"
プレジデントオンライン / 2024年7月27日 10時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください