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政府が5年で1兆円の支援表明をした“リスキリング(学びなおし)” 。“自力で”にこだわりムダな勉強をする社会人「世の中は必要のない勉強であふれている」

集英社オンライン / 2023年8月28日 9時1分

「終身雇用の崩壊」や「人生百年時代の到来」などが予測される日本でも、「リスキリング(学びなおし)」という言葉が広まりつつある。「社会人こそ勉強をすべき」という時代だからこそ、時間がない中でもどれだけ戦略的に勉強できるのかが重要になってくるが、具体的にはどうすればいいのか。『勉強の戦略――9割の「努力」をやめ、真に必要な一点に集中する』(朝日新聞出版)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

#2

「やらないこと」が、最高の効率化。世の中は「必要がない勉強」であふれている

効率的に勉強するための一番のポイントは、「なるべく勉強しないこと」です。なんでもかんでも自力で勉強するというのは、正直に言うと意味がありません。



それよりも、勉強の総量を減らしつつ、本当に必要な勉強だけに、時間を投入すべきです。
そもそも勉強とは、シンプルに言えば「何かを身につけること」です。

だから、勉強の戦略とは、「最短距離で何かを身につけるための戦略」だと思ってください。

大人が、仕事や人生をよりよくするための勉強に取り組むときには、極力ムダを省くべきです。時間が限られているなら、「目標達成のために役に立たない勉強」をしても、あまり意味がありませんよね。

もちろん、趣味の勉強なら話は別ですから、大いにムダを楽しんでください。

実は趣味のような一見ムダに思えることに大いに時間を使うことこそが、最終的なゴールとしてふさわしい場合もあると考えていますが、それはまた別でお話しします。

大切なことは「正しく他人に任せる」こと

ここでは「役に立てる」という目標を持って勉強することに絞って、話を続けます。

この場合の勉強で身につけたものは、目標に到達するために使えるものでなくてはいけません。逆に言うと、その部分だけにフォーカスすれば、実は勉強というのは、そんなに途方もないほどの量をこなす必要はないのです。

これも、身近な例で考えてみると、少しわかりやすくなるでしょう。

たとえば、自宅でトイレの電球が切れてしまったときに必要な知識は「電球を交換する方法」だけです。

当たり前ですが、電球そのものの作り方や、電気の基礎から学ぶ必要はありません。

確かに勉強をしなければ、自分の知識やスキルは増えません。しかし、世の中には知らなくてもいいことが、実は多くあります。

全世界の人が、電球そのものの作り方を知っている必要はありません。

このように、自分でやらなくても「他の誰かがやってくれる」ことが、この世にはたくさんあります。

ここで改めて知っておくべきことは「自分でできるようになる」よりも、実は大切なことは「正しく他人に任せる」ことだということです。

勉強こそ「外注」する必要性がある

勉強も「他人に任せる」ことで、必要な労力を減らしておく必要があります。

勉強の総量を減らすための判断基準は、まず「本当に自分でやるべきことなのか?」を見極めることにあります。先ほども言いましたが、なんでもかんでも自分でやっていたら、目標を達成するのに、とても時間がかかってしまいます。

社会人には、そんな時間はありません。

あなたがダイエットをするときに「5キロのランニング」と「ヘルシーな料理」の両方が必要だったとしましょう。

でも、ランニングをしながら、同時に料理を作ることはもちろん不可能です。

一方で、人に任せることができれば、ランニングと料理を同時進行できます。この場合だと「誰かに代わりに走ってもらう」ことに意味がないので、「料理を誰かに作ってもらう」ようにすべきです。

もちろん、料理が得意な誰かに作ってもらってもいいし、コンビニやレストランでヘルシーな料理を買うのも「任せる」方法の一つです。

この考えは、会社の経営に似ています。

社員に仕事を任せず、社長が自らずっと手を動かしている会社は、なかなか大きくなりません。一方で、成功する経営者は、自分でやらなくてもいいタスクを、適切に社員や委託先の人に任せている。その時間で、自分がすべきことにあてる時間を確保しています。

つまり、うまく「外注」をしているのです。

私は受講生の方々を見ていて、勉強こそ「外注」する必要性がある、と日々感じています。
では、勉強と人生の効率を最大化できる「外注化」について、説明しましょう。

勉強に限って「他人に頼ってはダメだ」なんて、よく考えたらおかしな話

外注化とは、「苦手なことや手が回らないことを、他者に任せること」と、ここでは定義しておきましょう。

一方で、「人に頼るなんてズルい」「自分でやることにこそ意味があるんだ」という考えをお持ちの方が一定数いることは、私も理解しています。

でも、「なんでも他人に頼らず、一人でやらないといけない」というのは、思い込みです。だって、そもそも私たちは、普段から他人に助けられて生きています。

電車や電気、ガスを使えるのは、誰かが裏で支えてくれるおかげです。自分の力で電車を運転したり、発電したりすることはできませんよね。できたとしても、電車を作ったり、原油を掘削したりすることはできません。

普段からみんなで力を貸し借りしながら生きているにもかかわらず、勉強に限って「他人に頼ってはダメだ」なんて、よく考えたらおかしな話です。

しかも現代では、大変ありがたいことに、外注できる先は「人」以外も可能になっています。たとえば、苦手な掃除をルンバに頼んだり、面倒くさい洗濯をドラム式洗濯機に頼んだり、人工知能をもちいたプログラムにさまざまな作業をやってもらうことは、まさしく立派な「外注」の一例です。

東大などの難関校に受かるような人は“一般的な勉強法”に忠実

勉強の場合、まず外注化するべきことは「勉強法」それ自体です。

勉強法は新たに自分で考えた方法よりも、すでに確立されている方法が効果的な場合が多いのです。

事実、東大などの難関校に受かるような人は、たいてい一般的な勉強法に忠実です。

できる人だからと言って、何か特殊な勉強法をやっているわけではない。勉強法については、長年の蓄積によって、だいたいの最適解が見つかっています。

それなのに多くの人は、自力で「勉強法」の答えを導き出そうとしてしまう。でも、それはいわゆる「車輪の再発明」にすぎないのです。

一方で「がんばって量をこなせば、質も上がっていく」「だから、まずはとにかく量をこなすべきだ」という考えの人もいます。

でも、そもそも自分でがんばって量をこなさなくても、すでに質のいい方法論が、世の中にはたくさん出回っています。

いくらかっこつけて「量をこなせば質が上がる」などと言ってみても、すでに前世代の人が量をこなしてくれたおかげで、もう十分に質は上がっています。あなたひとりがいくら量を増やしても誤差にもなりません。

少し極端ですが、簿記の資格試験の勉強のために、自己流で財務諸表を読もうとしても無理です。その状態で、ただ量をこなしても時間を浪費するだけです。

それよりも、書籍を読んでみたり、試験の過去問を見たりする方が圧倒的に有益です。

「自力で」とこだわるのは、人類のこれまでの営みに対する礼を欠いたこと

すでに先人が時間と労力を惜しみなくつぎ込んで導き出した方法があるにもかかわらず、自力で解法を思いつくまでがんばるのは、あまりにもムダが多いのです。

たとえば、「英語の学習の世界」にも方法論はあります。

英語には「第二言語習得研究」という学問分野があります。その分野では、「人はどのようなしくみで外国語を身につけていくのか?」ということを、世界中の優秀な学者が、熱心に労力を投入して、研究しています。

この知見を活用すれば、英語を身につけるのに現段階で最も効率的だと思われている方法がわかります。

ここまで言えば、他の人の成果に頼らずに、すべて自力で勉強することに意味がある、という方はもうほとんどいないのではないでしょうか。

もしそれでも「自力で」とこだわるのは、人類のこれまでの営みに対する礼を欠いたことのように、私には思えます。

どんなことでも、まずは一般的な方法から学んでみましょう。一般的な方法とは、淘汰されずに残った「王道」の勉強法です。

たとえば、TOEIC学習にも、「王道」とされる書籍や問題集があります。

こうしたものが市場で淘汰されずに残っているのは、それが多くの人から認められ、実際に使った人に効果があったからです。

もしかすると「そんなのはただ要領よくやっているだけだ」「オリジナリティがあることに意味があるんだ」と思う人もいるかもしれません。

確かに、「王道」に沿って、それを追従しているだけでは不十分なこともあります。しかし、先人たちが作り上げた「王道」をまずは受け取り、自分でいろいろ試していく中で、受け入れるべき部分や、自分にはフィットしなくて採用しにくい部分に、初めて気づくはずです。

最初は誰かのマネをする。だんだん自然にできるようになってきてから、自分なりのアレンジを加える。それが最も質が高く、ラクな方法です。

もともとの「王道」のエッセンスが血肉になった上で、微調整する。ラクをしたいならまずマネをすることから始めるべきです。

勉強せずに取った100 点と、死に物狂いで取った100 点には価値の差はない

英語の業界でも、「ぼくが考えたさいきょうの勉強法」のようなものが多すぎます。

とくに、SNS の普及も相まって、「俺が英語をできるようになった方法」とか「私なりのメソッド」みたいなものが氾濫していて、いろんな人がいろんなところで、持論を展開しまくっています。

挙句の果てには、科学的に非効率とされている勉強法でさえ、「これで成績が伸びた!」とサンプル数の少ない意見を宣伝するような人も出てきています。

そもそも、時間と気合でゴリ押しした勉強をして、成果を上げた人にとっては、どんなに非効率な勉強法でも「ぼくが考えたさいきょうの勉強法」になってしまいます。

そして、「自分はこれで成績が上がった」という体験があるから、一切疑うことないどころか、親切心をもって、他の人にも勧めてしまうのです。

オリジナルの勉強法を導き出すプロセス自体が楽しくて、趣味として勉強をすることが好きな人ならば、それでもかまいません。電車があってもマラソンランナーは走ります。

ただ、ここでは「目標達成に役に立つ」勉強に絞って話をしています。そして、そうした勉強の成果は「英語力」や「年収」として、残酷なまでに、数字で示されることになります。

どんなにがんばっていたとしても、勉強のプロセスは、結果には一切反映されません。

ほぼ勉強せずに取った100 点と、死に物狂いで取った100 点には、価値の差はありません。そう考えると、プロセスは「よりラクな方」がいいはずです。

文/岡 健作

『勉強の戦略――9割の「努力」をやめ、真に必要な一点に集中する』(朝日新聞出版)

岡 健作 (著)

2023/7/21

¥1,760

200ページ

ISBN:

978-4023322905

あなたの勉強は、ムダだらけ──リスキリングなど、社会人にも勉強が求められる時代。時間がない大人には、成果を最大化するノウハウが必要だ。塾講師を経て、社会人向け英語塾や予備校を経営する著者が、2万人を成功に導いた「勝ちパターン」を初公開!

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