いとう 加藤さんは、MSF日本の会長時代に僕の本(『「国境なき医師団」をもっと見に行く』)で取材させてもらったので、ある程度お人柄は知っていたんですが、『生命(いのち)の旅、シエラレオネ』を読んで、あらためて感動したんです。誤解を恐れずに言うと、「弱いリーダー」であるというのは、凄いことだなと思って。リーダーはずっと強くなくちゃいけなかった。弱い姿を見せるなんて許されない、という感じが今もあるんだけど、加藤さんは全くそういう方ではない。言ってみれば、人前で涙を流せる人です。
加藤 本を読んだ人からは、泣きすぎだというご批判もあるんですが……。
いとう 僕はとてもいいことだと思います。自分が救えなかった命に対して涙を流すことができる。そういうリーダーだから、人が付いていくんだろうと。もちろんお医者さんは、鈍感にならないとやっていけないところもあると思うんです。でも加藤さんは、いい意味で、慣れないんですよね。救えなかったことに、毎回、涙を流し、打ちひしがれている。